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ずっと前から気にはなってたんだ。つまり、何時頃から「クトゥルー神話」なる呼び名が使われていたのかってことが。
ちょうど「ラヴクラフトの遺産」の解説を頼まれたことだし、この際、調べてみよう。と、そう思った。資料はロバート・ワインバーグの`THE
READER`S GUIDE OF THE`CTHULHU MYTHOS`,仁賀克雄氏の作成した「アーカム・ハウス出版目録」同「オーガスト・ダーレス著書目録」その他。
手順を説明するのがこっちには楽しいのだが、読むほうは退屈だろうから省略。……1939年(昭和14年)に設立した同社が、まず出したのがHPLの「アウトサイダーその他」なのは周知のこと。2冊目に出版したのは、ダーレス自身の短編集゛Someone
in the Dark゛だった。ここには`The Return
of Hastur`と`Sandwin Compact`が収録されているが、他は普通のホラー小説。
3冊目はC.A.スミスの短編集。当然クトゥルー物オンリーじゃない。
さて、1943年(昭和18年)に`Beyond
the
Wall of Sleep`という奇妙なアンソロジーがだされていた。タイトルだけ見ると、「眠りの帷をこえて」で、クトゥルーとは無縁に見える。
いかにも収録作品の、H.P.L.の分を見たら、「ナイアルラトホテップ」「異形の神々」「流浪の王子イラノン」「サルナスを見舞った災厄」「白い帆船」「向こう側」「名状しがたきもの」「妖犬」「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」「幻夢境カダスをもとめて」「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」と。
ドリームランド物にあれこれ詰め込んだ作品集としか思えない。
ところが、ここからが面白い。ゼリア・ビショップ「イグの呪い」ウィリアム・ラムレイ「アロンゾ・タイパーの日記」ヘイゼル・ヒールド「博物館の恐怖」ゼリア・ビショップ「俘囚の塚」(以上ラヴクラフトが添削した作品)
ムーア&メリット&ラヴクラフト&ハワード&ロングの「彼方からの挑戦」。
どうだ。代表的クトゥルー作品集の出来上がりではないか。
ところがこの本はこれで終わらない。
豪華二大付録だ、参ったかコンチクショーとばかりにダーレスは論文を入れてるのだ。
ラヴクラフト「ネクロノミコンの歴史」。そしてF.T.レイニー゛The
Cthulhu Mythology:A Glossary`。(実は付録はもひとつH.P.L.の詩『ユゴス星より』があるんだけど、これは置いといて)
どうやらこのレイニーの論文こそ単行本上で初めて「クトゥルー神話」なる用語が使われた、その先駆けだったようだ。
ただし、雑誌の上ではどうだったのか。この論文のタイトルをつけたのがレイニーだっったのかダーレスだったのかなど、この先の興味はつきない。
ともあれ、普段は気にもとめないような事をしらべるきっかけをくれた東京創元社のM原氏に感謝。ただし、肝心の「ラヴクラフトの遺産」の解説には、ほとんど生かされないのであった。(大学ノート6ページ半ものメモを取ったのにぃ)