「秘神界の長い午後」レポート

日時:2002年9月8日(日)午後2時開始
場所:新宿ロフトプラスワン
ゲスト:鷲巣義明・友成純一
主催:朝松健・東京創元社

 東京創元社刊「秘神界」の発売を目前に控えた日曜日に行われた朝松久々のロフトプラスワンでのイベントは、前日から続いていた雨もやみ、少し晴れ間も覗くちょうどいい天候のもとで開催された。
 できあがったばかりの「秘神界」先行発売も併せて行われるという前宣伝もあり、読者のみならず、多数の執筆者、他社編集者までが顔を見せてくれるという盛況となった。

 トークの内容は、「秘神界」にプレゼント企画として提供された彩プロ発売予定のスチュワート・ゴードン監督作品「DAGON」のビデオ予告編上映の関連として、Cthulhuテーマの映画の予告編や一部・同じくCthulhu関連の海外TVドラマ・アメリカのプライベート映像作品の一部を流しながら、朝松とゲストのトークで進んだ。
 紹介された映像作品のリストは以下のとおり。

 War God Of The Deep、The Haunted Palace、Dunwitch Horror、Die Monster Die、事件記者コルチャック/ワニトカゲ、ダークビヨンド死霊大戦、探偵ラヴクラフト、ピックマンのモデル、ピーボディ教授最後の講義、パラダイム、マウスオブマッドネス、ヘルハザード(以上プロ作品)

 The Necronomicon、Cthulhu Wore Tennis Shoes、The Oldman & Goblins、DAGON(以上「Lurker in the Lobby」収録のプライベートフィルムより)

 なにしろ全編朝松が独断と趣味に走って選んだ映像作品ばかりなので、トークの内容は、いきおい奇妙というか、変にマニアックというかの、とんでもないモンドな作品の話になっていく。特に朝松がどうやら生涯をかけて研究したいらしい「Cthulhu作品におけるワニトカゲの系譜」に連なるワニトカゲ型モンスターの「これでもか、これでもか」の羅列には、会場は絶賛とも失笑とも嘲笑ともつかぬ不気味な笑いが渦巻く。トドメは「Heavy Metal」等に作品を発表しているコミックアーティストRichard Corbenのプライベートフィルム「DAGON」だった。これには、ホルスタイン模様のどう見ても牛人間にしか見えぬ半魚人が出てくるのだが、彼らが踊る「DAGONを称える不思議な踊り」の映像は、観る者を圧倒し、後から思い返そうとしてもスチュワート・ゴードンよりもそちらの牛人間の不思議なダンスしか印象に残っていないという有様。
 朝松先生、ふだん力説されている「俺は大衆向けのわかりやすい路線を目指す」ってこれのことなんでしょうか。わたし、そこんとこがとっても気になってるんですけど…?
 朝松談「分かり易いべさ」(「私闘学園」書いた人ですね。やっぱり)
 一応ゲストのためにフォローしておきますが、鷲巣さんの鋭く本質に迫る突っ込みや、友成さんの優秀な評論家的側面は十分に発揮されていまして、特に開始時間を間違えて飛行機の予約をして大遅刻した友成さんの登場以降は、かなりシビアな映画世界の話もされていました。ただ、観てる側に強烈な印象として残ってしまったのは、どう考えても「ワニトカゲ」と「牛人間のダンス」!だったのであります。
 朝松談「みんなワニトカゲにおなり」(かのB級動物パニック映画の「アリゲーター」に公開当時7500円はたいて5回もロードショーに行ったのはダテじゃなかったんですね)

 さて、映画とトークが終わった後は、読者の皆様のための最後のフィナーレ、今日のイベントに参加した執筆者全員による合同サイン会です。今回イラスト陣にまざったことが直接のきっかけで未完だった「召喚の蛮名」が単行本化することが決まった現在人気上昇中のイラストレーター槻城ゆうこさんが、仕事の都合で先に帰られたのが残念でしたが、後は、全員強制的にボランティアとしてサイン会をすることに。
 協力してくださった執筆者は敬称略順不同(一応あいうえお順だけど)で以下のとおり。
 朝松健・安土萌・飯野文彦・井上雅彦・田中啓文・友成純一・牧野修・平山夢明・松尾未来・松殿理央・青木純・原田実・久留賢治・星野智・藤原ヨウコウ。
 前日も「かまいたちの夜2」のサイン会をこなしてきた牧野氏と田中氏はいったい両日で何人にサインをしたことになるかというサイン尽くしの日々だったと思われます。御苦労さまでした。
 また、両名とともに来場されていながら高見の見物をなさっていた我孫子武丸氏には、ぜひとも次回には執筆者側にまわっていただきたいものだと愚考しておりました。個人的には「かまいたちの夜2」を持ってこなかったのが、ただただ悔やまれました。わたしがそう思ったくらいだから読者の方たちも同じ気持ちだったことでしょう。
 さて、その後は希望者のみで近所の「大馬鹿地藏」にて二次会。ここでは、大学の卒論で友成純一論を書いたという評論家の笹川吉晴氏が初めて友成氏と邂逅。感涙にむせんでいたのが印象に残る。また、いつも当サイトをロムっているというファンの方が話しかけてくださったり、初めてお会いした常連さんがいたりとじっくりとお話できなかったのが残念だったが、貴重な読者と作家の集いになったと感じた。その後さらに残った人たちによる三次会(どうやらお茶会と飲み会に分かれた模様)へとみなさま盛り上がったようですが、体力の限界に来ていた朝松は松尾に連れられて帰宅いたしました。

 なお、かなりたくさんの方たちが見えていたため、未確認で申し訳ないのですが、「懺悔の間」においでの読者の方たちで、執筆者以外のHNが判明している方は以下のとおりだったと記憶しております(以下敬称略・順不同)。
 ひらどん、三田主水、魔生、アルケミスト、すずしろ、E・K、通りすがりの一読者、たけ坊、ちゅるふ。
 漏れている方がいるかと思いますが、どうぞご容赦ください。

Back