日記代わりの随想
2003年上半期
21:38 03/06/30
今日も農耕的に仕事をした。
- たいしたこともしていないのに忙しい。そして、とても眠たい。
- 本日は「本当にあった愉快な話」の発売日。ヤマザキストアへ買いに行く。100万部売れてる雑誌だというのにエロ雑誌にまぎれていた。まあ、下品な内容だから当たり前なのだが。わたしは投稿ネタと、田島みるくのトボケた絵が可愛くて好きなのだ。
- 実は、その前に、ちょっと引っ掛かることがあった。ある仕事のレジュメを日曜の夜にメール送信したのだが、向こうのサーバの問題で戻ってきた。四回やって四回とも駄目だった。それで朝になってから某社に電話した。「おたくの編集長に送信したの、戻ってきちゃうんですが」電話に出た女性の答えは「当人が出社してないので分かりません。××時頃に出てきますので電話してください」。……かつて29歳で二人の部下を持ってきた編集者として一言、この場合、相手は執筆者つまり「センセイ」なので、まず「申し訳ありません。◎◎は立ち寄り(たとえ立ち寄りでなくて、二日酔いで遅くなっていても、そう言うこと)で遅くなります。出社次第、折り返し御連絡申し上げますので宜しくお願いします」くらいの応対が出来なければ、社会人、イッチョマエの編集者とは言えない。ネクタイしてるだけ、スーツ着てるだけの大学生ではないのだから、気をつけるべし。コワイ先生なら怒鳴りつけられるか、机ひっくり返す音を受話器越しに聞かなければならないところだゾ。
- で、暫くして連絡はとれたのだが、どうやら相手がメールを溜めすぎて新しいのが入らなかったらしい。しかも編集長はそれに気づいていらっしゃらない。これがソノラマの編集者なら、「すみませんねえ。ウチの編集長ってばオヤジなもんですからメールがたまりすぎるってことが理解できないんですよ」とか、「今度、ファックスはその日に着くし、メールはため過ぎると入らない、と教育しときます。あははは」くらいのユーモア溢れるフォローがあったのだが。嗚呼、困ったものと言ふべきであらう。(←ジジイか、お前)
- なんだか身辺がガタガタしていて落ち着かない。原稿も進まないのである。梅雨のせいか、締め切りがせまっているせいか、新しい仕事が気にかかるせいか。今週は打ち合わせの惑星直列だ。
- 落ち着いて考える。現在、「幻妖伝」が見事に空中三回転を決めるか、「あちゃー」な出来になるかの瀬戸際にいる。どうやら、そのために、腰が落ち着かないのだ。
- 二女の趣味は人間観察である。スーパーの店員のバイトをしながら色んな客を観察して楽しんでいる。そして、「こんな人がいたよ」とか「あんな可愛い子だった」と話してくれる。むう。メモしといて作品で使おう。
- さて。
- この「日記代わりの随想」は本日で最期となる。いや、別に、どこかのサイトや巨大掲示板に何か書かれたから、「やめりゃいいんだろ、やめりゃ」と短気を起こした訳ではない。
- 明日から「日記」の形式を変えるのである。パチンコ屋でいう新装開店なのだ。(そういえばパチンコなんて、もう15年やっていないな)どんなノニューアルかはお楽しみ。では、ひとまず、さようなら。今までのご愛読に感謝しつつ──。代官道もとい大感動のうちに、
- 「それでは皆さん、ごきげんよう」
0:54 03/06/28
今日も農耕的に仕事をした。
- 歯痛は突然消えた。
- 午前中に歯科に行って、「幻妖伝」の原稿を書いて、昼食を食べて寝た。
- ひどい悪夢に魘された。ガマとかムカデのうようよしている部屋で寝なければならない、というもの。ガマがでかくてリアルで気持ち悪かった。ぼくのイヌ嫌いはすっかり治ったが、カエル嫌いはまったく治らない。
- 午後も仕事をした。70キロを保つために、かつ、68キロまで痩せるために、間食はなし。
- 午後11時まで書きつづけた。大体、あと150枚〜200枚か。でもいつも枚数計算を間違えるからなあ。今回は気をつけよう。なんたって本当にあとがつかえている。
- 6日くらい役小角のことをちょっと調べたら、父は「大角」。母は「白専女」とあった。息子が「小角」だから、父の名は「オオヅヌ」か「オオツノ」だろうと分かるが、母の名の呼び方が分からない。「困ったなあ」などと言ってたら、今日、突然、「幻妖伝」のために取り出した資料に「キツネのことを専女と呼ぶ」との記述。これは「とうめ」と読むのだそうだ。してみると「白専女」は「しろとうめ」か。で、役小角も安倍晴明同様に「キツネ生誕」伝説が隠されていたことに驚く。
- 仕事の調子がいい時は、こんなふうに、偶然が色んなことを教えてくれるのだ。今度の「一休」は売れそうだな。しめしめ。
- 祝・300枚突破。キーボードでこんなに書いたのは生まれて初めてである。いよいよノートパソコンで原稿を書くのに慣れて来たようだ。
- 仕事ばかりしていると足が萎えるので明日・明後日は少し歩くことにしよう。
- では、寝よう。
0:03 03/06/27
今日も農耕的に仕事をした。
- 歯が痛い。
- 火曜の夜遅くからジグジグしてきたのだが、水曜の夕方ついに耐えられなくなって歯科に電話したら「金曜の午前中に」とのこと。やむなく金曜日に予約を入れた。
- で、木曜。一日痛かった。仕方なく頓服を飲んだが、何故か効かない。午前中からずーっと「痛いよー」とうめき続けた。おまけに歯痛のせいか、午前中、抗痙攣剤を二回分も飲んでしまう。
- それでも「幻妖伝」の四章を書き直し、五章を三枚書いた。でもやっぱり痛い。左上の親不知が脈拍に従ってドッキンドッキンと痛みつづけた。頓服最期の一包を飲んでしまう。
- そうこうするうちに左耳と喉と左側頭部まで痛くなる。やむなく祥伝社に電話。金曜の約束を日延べしてもらう。
- 昼食後、毛布を被って眠りつづけた。夢はなし。時々目がさめると痛い。間食もコーヒーも取らずに眠る。
- 夕方になって頓服を買いに行く。そして飲んで寝たら、急に痛みが引いた。どういうことだろう。兎も角、天の助けとばかりにお茶を大量に飲んだ。
- 夕食を控えめにして、体重を量ったら70キロちょうど。よし。この調子で間食をやめて運動をコマメにして68キロまで落とそうと思う。出来るかどうかは分からないが。
- 水曜の夜に突然、ケータイに電話。なんと高橋葉介先生と飯野氏と笹川吉晴氏と高瀬美恵氏が酒場より電話をかけて来たのだった。
明るい酔っ払い。と、思ったら午後4時30分から飲み続けているということで、「明るいうちからの酔っ払い」なのだった。楽しそうでいいや。こっちは参加できないけど。
- 明日金曜は朝イチで歯科。それから「幻妖伝」を書きつづける予定。そろそろネジを巻かなくては締め切りに間に合わない。
23:42 03/06/24
今日も農耕的に仕事をした。
- このところ時間が超スピードで過ぎている。
- 午前中は「真田幻妖伝」の続き。途中、面白い趣向を思いつき、書き足し作業。よしっ。
- と、叫んだところでT京S元社のごんのすけ氏(M原氏改め)より電話が入る。嬉しい知らせ。このところ、複数の友達に次々と超ビッグなサプライズが入ったと聞いて、「おめでとう」を連呼していたが、自分にも「おめでとう」と言いたくなった。(いずれ発表します)
- 昼食前に妻のお母さんから山形のさくらんぼが届く。わたしはさくらんぼとかアメリカンチェリーが大好きなのだ。「ラッキー」と独りごちた。
- 昼食。「バガボンド」を読み直してから、昼寝。パコッと夢も見ずに眠る。
- 午後5時、娘とコーヒーを飲んだ後に、外出。池袋で打ち合わせなのだ。
- 本日は肌寒いのでバスで行くことにした。待たずに信号を渡ったら、バスが殆ど待たずにやって来た。ラッキー。雨の池袋へ。これまた全然信号を待たずに渡って、喫茶店へ。昨日と同じ席に座る。
- 待ち合わせの相手と新企画の話。のち、河岸を変えて「松風」に行く。久しぶりのここは冷房の利き過ぎで身体がガチガチに冷えてしまった。それでも新企画のアイデアがぞろぞろ出た。
- 身体を温めるために河岸を変えた。こんどはロサ会館の四階にある「地中海クラブ」。カッコイイ黒人のバーテンに「氷ヌキのコーラを」と注文。打ち合わせの相手はバーボン。なんかハードボイルドだな。今後、氷ヌキのコーラをわたしの定番にしよう。つまみはチーズ。ピザ。ナッツ。手のかかるモノもあったが、話に夢中になって食い物などどうでも良くなった。実現したら世界が変容するような大企画、アレコレ。(これは三年くらい発表できません)
- すっかり良い気持ちになって店を出たら、三人のサラリーマンがエレベーターの前で、「どうする、20万、あるぜ」「キャッシュで滅多に揃わないよな」「だったら少しくらい、いいか」などと言いながら、クラブに入っていくのを目撃した。「いやあ。不景気な昨今、景気の良い景色を見てしまいましたね」と、わたしが言えば、「本当ですねえ。縁起が良いような気がしますなあ」と相手も感心する。
- 寒気が酷いので、池袋駅から、クルマで帰宅。ウチに着いたら、熱い味噌汁をもらって、ようやく寒気が治まった。そろそろ、わたしも「男の更年期」かもしれない。西条ヒデキが脳梗塞になる時代だ。健康には気をつけよう。大企画を実現させなくてはいけないのだから。
- 考えると、本日は殆ど信号待ちをせず、スイスイと進んだ。ようし、ゲンが良いぞ。絶対、わたしは追い風に乗っている。頑張ろうっと。
0:08 03/06/24
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前10時30分に歯科へ行った。左上親不知の治療。あと一回で終わる、と伝えられてホッとした。行きも帰りも天気がぐずついている。行き帰りともに葬式に行く喪服の人を見かけた。何となくやな感じ。そういえば昨夜は土のついた野菜を食べる夢だった。
- 帰宅後、仕事。「真田幻妖伝」。別の仕事のためのメモ。
- 昼食。札幌の母からアスパラが送られてきた。今夜はアスパラの肉巻きにしてもらおう。母に電話で礼を言う。毎年、今頃になると梅雨のない札幌が恋しくなる。東京は暑い。湿気がつらい。
- 昼食後、昼寝。約2時間、まったく夢も見ずに眠っていた。午後3時5分に目覚める。少し身体とアタマが楽になっていた。
- 午後4時に池袋で待ち合わせ。歩いてブクロへ行く。雨が降っているような、降らないような……。微妙な天気。なんだかエアコンの排水みたいな雨。池袋西口「サルビア」にて打ち合わせ。「サルビア」の隣に「ビッグカメラ」が出来たので分かり易くなった。
- アメリカンコーヒー2杯。一所懸命打ち合わせ。その甲斐あって進展があった。天に感謝。
- 某社の編集者と別れて、歩いて池袋から帰る。途中、金子園に寄ってモカ・マイルドを買う。紙フィルター用に挽いてもらう。金子園のコーヒーを飲むと、他の店のが飲めない。
- さらに途中、近藤書店に寄って古本漁り。収穫なし。八勝堂には寄らず。最近、八勝堂の社長に顔を覚えられた。会うと挨拶されるので、何となく恥ずかしく、寄る回数が減ってしまった。(まあ、ちょっと高いせいもあるのだが)
- 要町に向かううちに空腹を覚えた。目が回ってくる。これで泣き出したら、「アンパンマン」のカバ男君である。
- 誘惑に勝てず、ヤマザキストアにて、アイスクリームとクリームドーナツを買う。ウチに帰って貪り食らう。ストレスが空腹感を感じさせているのか。単に胃腸が丈夫なのか。少し休んで、ちょっぴり仕事。「バガボンド」の最新刊を買う。面白いが、もう少し読みたい。明日も池袋で打ち合わせの予定。
23:12 03/06/20
今日も農耕的に仕事をした。
- 仕事の出来る奴だった。わたしの自慢のコレクションは殆どが、こいつの働きで集まったのだった。
- 静かな奴だった。まだ幼かった長女に捻られても、立つ事を覚えたばかりの二女に殴られても愚痴ひとつこぼさず、働きつづけた。
- 長男は、奴の背骨を二度、壊している。それでも奴は、静かに働いていた。時々聞こえるおかしな音は、その時の後遺症であった。
- 17年、奴はずっと働いてきたのだった。
- 昨日、奴は、遂にこときれた。二女の予約を受け入れ、そして、全てのランプを消し、一切の動作を停止したのだ。さながら平井堅の唄う「お爺さんの時計」のような最期だった。
- 「PANASONIC VHS ビデオカセットレコーダ NV-FS70」。
- S-VHSとデジタルトラッキング調整とジョグダイヤルと逆再生がウリのビデオデッキであった。
- 作家としてちょっぴり余裕が出てきたので買い求めた、当時としては高価なデッキだった。三人の子どもの成長と、ぼくの作家としての成長と。二つを見つめ続けて、ずっと我が家の茶の間にいてくれたビデオデッキであった。
- 17年間ご苦労様でした。謹んでご冥福を祈ります。長い事、有難う。
- それはそれとして。──
- 「真田幻妖伝」は第四章のラスト近くまで、祥伝社のI野次長に渡した。昼頃に、まずメールに添付して送信。午後三時に、その時間まで書いた部分まで紙出しして、手渡し。打ち合わせを約一時間ほど。ようやく一巻と二巻の前半にばらまいた伏線が芽を吹き始める。これが有機的に絡まり、より大きな伝奇の大樹となる仕掛けなのだが、果たして何人が分かってくれるだろうか。
0:19 03/06/17
今日も農耕的に仕事をした。
- 先週末にノートに不具合発見。調べたらウィルス感染していた。やむなくリカバリ。なんやかやで月曜の夜までかかってしまった。
- やはりアメリカのバカサイトの性格判断テストが良くなかったのだろう。「フリーよ。フリー。パパさん、ダイジョブ」とか言ってるうちに得体の知れないプログラムとウィルスをちゅーっと入れられたのだ。チクショー、ラスベガスのポンビキみたいな奴だ。きっとアリゾナ出身で共和党員で、ブッシュを支持しているフアッキンでダムッなヤロウに決まっている。でもって日本と韓国と中国の位置の違いも分からない癖にエラそうに「靴を地面に置け」とか言ってるんだ。こんなことならネクロノームをアメリカで暴れさせるのだった。美国なんてエバッてられるのもあと一年よ。もうすぐ合衆国は西と東に分裂するぞよ。見てらっしゃい。魔術師を怒らせたら怖いんだかんね。プンプン。(←怒りで錯乱している)
- 悔しさは人間を成長させる。日曜に、原稿を大幅訂正。谷間に落下する佐助が時空を越えて、羅山や天海を幻視する、という趣向にしたら、ぐっと締まった。月曜朝イチで、メールで祥伝社に原稿を送信。午後イチでI野次長より「貰いました」との連絡。流石にしっかりした編集者はファクスでも伝言でもメールでも、ちゃんと連絡をしてくれる。貰ったら貰いっぱなしのバカへんしゅーとは大違いである。まあ最近はしっかりした会社としか付き合わないので、そんな奴ともトント遭っていないが。
- 今回の「幻妖伝」は以前より暖めていたアイデアを色々とぶち込んでいる。だから面白い。書いてる当人が、楽しみながら書いている。これ以上のことがあるだろうか。
- 夕方、T京S元社のM原氏に会う。DVDを渡したり、雑談したり、情報交換したり。勿論、仕事の話もいたしましたよ。楽しかった。M原氏と話すと帰ってからフッとアイデアが湧いてくる。
- I野F彦先生に電話。「ウイルスは怖いよ」とさんざん脅かす。
そういえば、最近、H山Y明先生のサイトを発見。日記を読んだら「超怖い話」だった。この人はナマで遭うと黒沢年男がスキンヘッドになったみたいな優しい人なのだが、書くものは「日記」でさえ怖い。純文学しててパンクしててアートしてて……つまりは「詩」なのだ。そのユメさんが飯野氏を「彼は詩人だ」というのだから、飯N文H先生はホンモノの詩人なのだろう。ぼくの知る限り、ホンモノの詩人と呼ぶべきは、その他には、友成名人がいるのだが。名人の場合はアーティストと呼んだほうが正しいような気もする。その他、気質的にアーティストな人は、なんといっても荒巻義雄先生だが。先生は実際に画廊を経営しているので当たり前か。
- 夜、F原Yコウ先生より電話。雑談。「先生の才能とわたしの欲で世界を征服しましょう」「先生、一生ついてきます」と互いに言い合う。たっはっはっ。
- 17日は午前中に歯科へ。それから終日、執筆の予定。あと、来年のために色々と調べモノをしなければならない。
0:30 03/06/07
今日も農耕的に仕事をした。
- 午後4時に光文社カッパノベルスのK林氏にゲラを渡す。チェック作業終了。これで仕事はぼくの手を離れた。あとは完成を待つのみ。6月7日に藤原ヨウコウ先生の素晴らしい表紙と共に「一休破軍行」の発売日を発表いたします。
- 帰ってきてから、ちょっと休んで、午後7時から午後10時まで、「真田幻妖伝」を5枚書く。さあ、全力を「真田」に向けるぞ。
- アメリカのバカ・サイトは大分オモロイのが見つかった。外薗先生に色々とお教えしたら、「お礼に」ともっとバカな歌のある処を教えてくれた。
- 下である。ケータイでは分からないが、下をクリックするとバカな歌が聞ける。まあ一度きりで結構なシロモノだが。
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Keyboard/2348/fumei/Bust.swf
- 今日はなんだか疲れた。もう寝よう。
0:22 03/06/05
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前10時40分よりリハビリ。久しぶりに妻の運転で日大板橋病院へ行った。快適なドライビング。上手くなったねえ。
- リハビリ科で二女の同級生だったA君を見かけた。A君は三年前、中一の時に脳疾患で倒れた。植物人間と化し、一時はあわやと思われたが、お母さんが級友の声や歌声のテープを聞かせたところ、反応を見せた。その後、お兄さんがピアノを弾いて歌ってきかせると、少しずつ意識を取り戻し、今はこちらの言葉に瞬きで反応して自分の意思を示している。おそるべき人間の潜在力。信じられない脳の力。
- わたしも脳外科入院中、こうしたことは数多く目撃した。やはり人間って凄い。そしてコミニュケーションは大事だ、と痛感する。
- リハビリで疲れる。フラフラになる。
- 帰宅。昼食。ゲラのチェック。それから昼寝。ずーっと眠りたかったが突然うるさくなった。長男が尾瀬からお土産持って帰ってきたのだった。まあ良いや。元気なら。
- 外薗先生と電話で話す。世間話。おかしなサイトの話あれこれ。
- 柿の種。コーヒー。尾瀬のケーキなどをパクつきながら仕事。我ながら良く食うものである。
- 奇怪なメールが来る。「あなたの電話回線でアクセスしたアダルトサイトの利用料の負債をウンヌンしましたのでトットリ銀行にこれこれの額を振り込んでください」これだけの文章にすでに6箇所もの矛盾とアヤシイ点を発見する。「まったくよぉ。誰が国内のゲロ写真なんて見るかよ」などと言いつつチョチョッと対処した。
- そんでもって「懺悔の間」に行ったら初めての女性のカキコ。なんか奥ゆかしそう。
- 「わーい」なんて言って、相手のサイトを覗いてみたら、なんとも雰囲気が怪しい。なんとなく街角で黒板を前に演説しそうな雰囲気。……なんだ、これは。ヤマ×シ会か。オ×ム真理教(ア×フと改名)か。
- そうじゃない。キリスト教系のカルトじゃないか。こんなのに、ウチのお得意さんが引っ掛かったら大変なので、即効で処理する。
- どうやら色んなサイトの掲示板を渡り歩いて片端から同じ書き込みを貼り付けているようだ。最近色々なサイトの掲示板で、このテがとても多い。一番多いのは「思わずドッキリあなたもアクセス」みたいなエロサイトの宣伝・つぎは「わたしはこのバイト(もしくはナントカ・ローン)で借金を返しました」・それから、こうした宗教勧誘である。いずれも大好きなサイトの掲示板やリンク集を利用してやがるから、怒りもハンパではない。いつかこいつらがアメリカ安全保障局か、NSIの国際的メール傍受システムNYTMAREに引っ掛かって、常にMIBが張り付くようにしてやったろか。という気になってくる。ネット世界のダニめ。新自前。
- 今日はとっても良いことがあった。良い事があると、必ず一つ、こうしたいやなことがある。世界は絶妙なバランスの上に成り立っているのだ。
- 明日は良い事ばかりありますよ
0:11 03/06/04
今日も農耕的に仕事をした。
- 長男は尾瀬。妙にウチの中がスカスカしている。なんとなく寂しい。やはりウチには五人家族が似合うようだ。
- コーヒーを飲んでから、午前10時30分、歯医者へ行った。順番を待ってる間、黒鉄ヒロシの「結作物語」第一巻を読む。滅茶苦茶に面白い。「子連れ狼」がまだ連載中で、テレビで「木枯らし紋次郎」が放映されていた頃に執筆・発表された作品。この頃は、もう黒鉄ヒロシは「クイズ・ダービー」に出ていたのだろうか。とにかく面白すぎるナンセンスマンガだった。
- 虫歯がもう一本発見された。痛いのはコイツだったのか。それとも親不知の殺した筈の神経がまた再生したのか。わたしの神経や肉体器官は時々再生するのだ。
- 家に戻り、ノートでネット散策。アートとホラー映画とドキュメンタリー関係。ギーガーを記念する美術館がに出来たらしい。内装がエイリアンの宇宙船みたいである。
- 午後からは「一休破軍行」のゲラのチェック。K林君はとても良く作品を読み込んでくれている。感謝。
- 疲れてきたので、池袋へ散歩に行った。100円ショップで七福神を探すも売り切れ。古本の近藤書店へ行き、物色。吉川英治の「新太平記随筆」を見つけたが、単独では売らないと言われた。これ一冊のためにまた「新太平記」全巻買うのは無駄なのでやめた。代わりに和歌森太郎の「日本史の虚像と実像」(角川文庫)を買う。もう一軒まわり、街道関係の写真資料を一冊100円で三冊。お、重い……。野沢菜の漬物と柿の種(お菓子)をスーパーで買い、帰る。
- のち、またゲラのチェック。なにしろ大作。ゲラのチェックに木曜までかかりそうだ。
- 夜、メールチェックしたら謎のウイルスメールが届いた。ノートンの警報で分かったのだ。牧野氏や外薗氏からのメールと一緒に来たので危うく開くところだった。
- 明日はリハビリである。
0:37 03/06/03
今日も農耕的に仕事をした。
- 歯の痛みがぶり返しそうな予感。
- 朝早くから五月蝿い。長男が学校で尾瀬に行くためである。げんなりしつつ午前7時起床。
- 子どもたちを送り出してから、愛するノートを取り出して(ついこないだとはエライ違いだ。まったく態度がコロコロ変わるネ)朝のネット散歩。アメリカではまだフランスに対する感情的なシコリが残っているらしい。
- なんて小さい奴等だ。(マルC『1、2の三四郎』)
- コーヒーを飲みつつ妻と雑談。そういえば昨日は妻と池袋へ椅子を買いに行ってきた。わたしの体は左半身麻痺のせいで重心がおかしいらしい。そのため、腰は痛いし、椅子も座布団もすぐダメになる。座布団は綿が出てくる。椅子は座の部分がねじ切れてスポンジが出てきてしまうのだ。で、今回は、大金をはたいて、総天然木の椅子にした。藤原ヨウコウ先生に10万円のギーガー椅子を勧められたのだが、流石に10万までは出せません。
- 午前中に三枚、書いた。今回の「真田幻妖伝」は伝奇にウェイトを置いている。そのせいか、滅茶苦茶に面白い。書いててワクワクしてくる。殺陣も相当に力を入れた。ただし、現実に剣道をやる人間がどう思うかは「知ったことではない」。なんといっても室町期の剣術・柔術・忍術の区分が未だ曖昧であった頃の流派を継承する者たちの戦いだからである。登場人物も前卷以上に多彩だ。佐助・才蔵・佐久夜・林羅山はもとより、戸沢白雲斎・岩見重太郎・宮本武蔵・春日局……その他、「あっ」と驚く人物も登場するのだ。ああ、先を書くのが楽しみだなあ。
- 午後にさらに七枚。そして意気揚揚とサンデーサンへ。
- ……着いてから、約束より一時間も早かったことに気がついた。
- 午後五時、祥伝社のI野氏と会う。原稿32枚渡す。雑談・打ち合わせ・今後の展開など。
- 帰って、しばらくしたら、椅子が届いた。これで思い切り書けるぞ。
- 本日、ラヴクラフトの研究サイトを調べていたら、1918年頃、ニューヨークにアレイスター・クロウリーが滞在していて、丁度、同地に住んで同人誌活動をしていたソニア・グリーン(元ラヴクラフト夫人)がクロウリーにあっていた、という記述を発見。「ネクロノミコン」の原型となる魔術書の話をクロウリーから聞いた、というのだ。本当であろうか。以前、スプレング・ディ・キャンプの「ラヴクラフト評伝」に、ニューヨーク滞在時にラヴクラフトは、かの超常現象研究家チャールズ・フォートと知己を得た、などとマコトシヤカに書いてあって信じたら、その後、ガセだと分かった。その時のことが思い出されて、容易に本気にはできない。
- 明日はもっと作品を書こう。なんか燃えてきたぞ。
23:35 03/05/30
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝一番に予約を入れて、午前10時45分、歯科に行った。治療を受けたらあの痛みがウソのように消えていた。まったく不思議である。おまけに頓服を処方してもらった。これで、いつ痛み出しても平気である。しかし、自分がこんなに痛みに弱くなっていたとは。
- 「真田幻妖伝」を書き進め、疲れたら、ネット世界をうろつく。
- 今、わたしがはまっているのは、ホラー映画の予告編や名場面を無料で配信してくれるサイトだ。むろん、全部、アメリカのサイトである。
- それからvowみたいな「町のバカ写真」を紹介するサイト。「本当にあった愉快な話」アメリカ版のようなサイトも面白い。特に大学生の悪ふざけ写真は最高に笑える。(酔ってズボンの前を引っ張って見せびらかしたら、その中に友達が思いっきりゲーをした。この一部始終が動画で楽しめる)←今度、飯野先生にコレをやってやろう。ふっふっふ。
- などと鬼畜なことを考えたタタリだろうか。ついうっかり、ゲテグロ写真サイトを覗いてしまった。「これは見るな」「やめろ」「後悔するぞ」なんて自殺の名所のような但し書きがあったので、ついダウンロードしてみたら……。
- 人間(男)の頬をブーツで踏んで固定して、口の横あたりから生きたまま、鋸引きにする。という超おぞまし映像(10秒あるかないか)を見てしまった。粒子の粗いモノクロ映像であった。引かれる男のうめき声もくぐもって、映像はちぎれて、切られた頭がころがってるシーンに変わる。なんでも2年ほど前にロシアから流出したのだというが。
- あまりにおぞましいので、コピーして、平山夢明先生に送ってやった。……すぐに返事がきた。
「みました(-_-;)
えらいものをありがとうございました…膝がぬけました。」
- こっちはこの映像の履歴を削除し、どこの何と言うサイトにあったか忘れてしまった。だから、もしこれが見たいという人は、平山先生にお願いしてほしい。わたしは二度と見たくない。鬼畜系は好きじゃないのだ。
- 妻に話したら、「最近は良く出来た映像が簡単に作れるからね」と言われた。
- 確かに「ウソだろう」という映像はネット世界に一杯出回っている。マンハッタンの街角で信号無視して歩きかけた途端にクルマに跳ね飛ばされ、落ちてきたら、反対から走ってきた別のクルマにはねられる。そんな映像を見たことがある。これなどタイミング以前に、「どうして街角にデジカメを向けていたのか」という疑問が湧いてしまうではないか。さらにプールに向かって飛んだら着地に失敗し、プールの縁に頭から激突して、背中からプールに沈んでいった映像とか、交通事故現場に駆けつけた救急隊が被害者を持ち上げたら、頭蓋骨が割れていて、中から脳味噌が……。という映像にも出くわしたことがある。しかし、こうした映像には必ず見た人間のコメントが付いていて「ホントかネ」「痛かっただらうな」などと殆ど真面目に受け取ってはいないのだ。
- ホラー映画のサイトに行けば、その周りにあるのは「スナッフ映像」のダウンロード・サービスである。勿論すべてインチキ。やらせかCG合成に決まっている。実際に殺人を犯して、その映像を売り物にするよりも、被害者を集めるリスクや死体処理の手間を考えればCG合成のほうがよっぽど安上がりなのである。この辺の事情は映画「8ミリ」(ニコラス・ケイジ主演だったっけ)の頃よりもずっと露骨になっている。インディーズ・プロにはそのテの映画(ビデオ)専門に製作しているプロもある。
- 「人死に」のエンターティンメント化は既に始まっている。なんとも病んだ時代に生きるわたしたちにとって、心ときめくホラーなどは、もはや「ロマン主義」と同じく死語になってしまったのだろうか。……否。事故現場や惨殺死体やスナッフ映像はホラーではない。それは「モンド」である。病んだ美意識であり、倫理の退廃である。かの「病的先進国」アメリカにおいてさえ、「ホラー」とは基本的にモンスターやゴーストやホーンティングの世界だ。死体やスナッフは「エロティック・ホラー」とか「ウィアード・セックス」と分類されて、「ネクロベイヴ」「サベジ・レイプ」「コーマ・ビューティー」「サディズム」といった変態性欲のサイトと同ジャンルに区分されているのである。
- かつて殺人事件があるたびに「おぞましいホラーのせいである」と言われ、出版界自粛の波を受け、苦しい思いや悔しい思いをした人間としては「そろそろモンドとホラーの区別をはっきりつけろよ」と主張したい。
- ホラーとは日本語では「怪奇」。この国で最初にそう定義したのが菊地秀行氏であったことを我々は忘れてはいけない。
23:55 03/05/29
今日も農耕的に仕事をした。
- ノートはACアダプターの故障だったらしい。28日の午前中に無事戻ってきた。とりあえずこれまでのブランクを埋める作業。
- 夕方には古い友人と会食した。こちの刺身と馬刺しがとても美味かった。おおいに会話は盛り上がり、午後9時過ぎ、お開き。
- こっちも酒ヌキで良い気持ちになり、久しぶりに歩いて帰った。
- ……で。
- 午後10時頃、突然、歯が痛くなってきた。目下治療中の左上の親不知である。火曜に歯科医に「痛みませんか」と訊かれ、「ちっとも」と応えたのだが、どうやら専門家の目には痛みそうに見えたのだろう。
- ここは我慢して泣きながら眠った。
- 眠りに落ちる直前、「木曜は歯科は休み」という言葉が頭を横切った。
- 翌木曜日も痛い。何年振りの歯痛であろう。兎に角、痛い。昔は良く歯痛に苦しんだ。大学の時に、一日に二本も抜かれたこともある。抜かれるまでの痛みに比べれば、抜いた時の痛みなど「ケッ」てなものだった。今回も痛い。のた打ち回るほどではないが、ずきずきと痛む。しかも痛みは少しずつ酷くなってくる。
- 実は、ぼくは、セデスをはじめとする市販の痛み止めが飲めないのだ。常用している抗痙攣剤とバッティングするためである。バッティングした場合、脳と体に良からぬ影響を与える。それで常に医師に相談して処方してもらわねばならない。でも痛いのは我慢できない。それで救急箱を探したら、ずっと前に歯を抜いた時に出してもらった「頓服」が出てきた。これは歯科医がバッティングしないよう考えて出してくれた薬であった。
- ついに意を決して「頓服」を呑んだ。
- 案の定、眠くなってきた。午後1時から午後5時まで眠りつづけた。夢もなし。とにかく眠りつづける。
- 目覚めたら、ゆっくりと痛みがよみがえってきた。ついでに左耳の奥と、左側頭部まで痛くなってきた。もう我慢できない。と、薬局に行く。そうして粉の「頓服」を買って飲んだ。
- たちまち痛みは引いていった。お陰で夕食も食べられた。その後、そろそろ五時間目。またぞろ痛くなりつつある。早く寝よう。
18:10 03/05/21
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝一番で富士通に電話。不具合を説明すると「ACアダプターの故障でしょう」と言う。保障期間なので交換は無料。明日(5月22日)に取りに来るとのこと。だけど電話番号とノートのシリアルナンバーを言うと、住所から、ウチで誰と誰がパソを持っているかまでスラスラ出てくるのには改めて驚いた。聞いた話では、タクシーの運転手が「道が分からないので電話を教えてもらえますか」と言ったりするのだそうだ。ナビに電話を教えると、住所はおろか、最短の近道まで指示してくれるらしい。もはや我々にはプライバシーなんて存在しないのだろう。シルバーバーグの「時間線をのぼろう」というSFを思い出すなあ。
- 今日の東京新聞夕刊に「アメリカ幕府説」というのが掲載されていた。早い話が現在のアメリカは昔の幕府と同じ。反対すれば国替えや御取りつぶしを強行する。己れの価値体系に合わないイスラム教を切支丹のごとく迫害する。兎に角、ぬきんでた暴力勢力である。こうした時の国連は幕府に対する朝廷と同じ、ただ傍観するしかない、というものだった。日本の幕府には将軍は15代しか続かないというジンクスがある(自民党単独政権も15代しか続かなかった)のだが。その伝でいくとアメリカ将軍は、あと何代続くのだろう。
- ノートが使えないので、暫定的に、デスクトップで仕事。しかも、ノートが復活するまで横書きとする。
- ……と。意外にも執筆スピードが上がりだした。ひょっとして、ぼくは横書きの、ワープロ執筆に向いていたのか。そういえばアマチュア時代、一時期、ぼくは原稿を横書きしていた。そうすると一日30枚くらい書けたからだ。
- でも、時代小説を横書きじゃ、「らしくない」。ぼくの理想は時代物を書くときは直衣(のうし)に士烏帽子(さむらいえぼし)、背筋を伸ばして文机に書く…というのなんだが。でも、そうすると文章は全て漢文で書かねばならなくなるかなあ。かといって頭を丸めて、墨染めをまとい…ってんじゃ、なんだか悪いことをして反省しているみたいだし。これもアマ時代だが、現代ホラーを書く時、白衣をまとい、マスクをして書いていた。トイレに行く時、母に見られて、「フ×ミ病院の医者かと思った」と言われた。(フ×ミ病院とはどこも悪くない患者の子宮を片っ端からくりぬいてコレクションしていたマッドドクター夫妻の病院である)ぞっとした。夜、その格好で近所に酒を買いに行ったら小学生に「ひとさらいだ」と言われ、幼稚園児に石をぶつけられた。以後、この格好で執筆はしていない。(当たり前だ)
- 今ならさしずめ厚生労働省の人間に間違われ、「役立たず」と市民の皆様から、やっぱり石を投げられるところだろう。
- 二女はテストを休み、病院へ行った。たっぷり寝たら大分良くなったもよう。
- 異常快楽殺人犯の顔と、彼等の犯行現場、被害者の様子などの写真がこと細かに紹介されたサイトを発見する。外薗先生と高橋葉介先生にURLを教えてあげよう。きっと漫画の資料になるに違いない。(漫画家のウチにはどうやって手に入れたか分からない資料がある──島本和彦先生)
- 藤原ヨウコウ先生の「一休破軍行」のカバー絵は大傑作である。藤原先生と光文社の許しが出たら、発売近くに、ご紹介したい。特に今回のテーマ「いくさ」が表1の炎上する世界の「動」と、表4の死に絶えた神々と人の「静」の両方に、見事に描かれているのだ。藤原先生こそ平成の国芳、21世紀の芳年である。どうか「破軍行」の表紙・挿し絵にご期待あれ。
0:03 03/05/21
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝から二女が「お腹が痛い」と訴える。テストから帰ってきたら今度は吐き気も訴える。「あたしはSARSだよ」と言って家族の同情を引こうとしていたが、症状は風邪。それも薄着でひいた風邪である。誰も同情しなかった。
- 昼食後、昼寝を始めたら、二女が隣に眠りにきた。父親の隣は安心できるのか、と思ったら単に自分達の部屋が汚くてうるさいから寝られないという理由であった。
- 結局、午後五時半まで二女と枕を並べて眠っていた。風邪は伝染らないだろうな。ぼくは普通の風邪薬は抗けいれん剤とバッティングするので使えないのだ。
- 夕方、雷が鳴り出した。ノートがやられると厭なので、電源を切り、「真田」の覚書。
- それから、雷がやんだので、またノートを使い始めたら……。見る見るうちにバッテリーが上がっていく。どうやらACアダプターが突如として機能しなくなってしまったのだ。
- 明日朝イチで富士通に電話しよう。
- しかし、二女が具合が悪くなると、複雑な機械が不具合になる。一先日は洗濯機が急にイカれた。昨日、修理に来てもらったら、内蔵されてるマイコンの基盤にキズがついてるかもしれないとのこと。今日はノートの電源の故障。まさか二女のタタリではあるまいな。ちっちゃい頃から手を使わずにパチンコ電動台のハンドルを動かしたり、念力があったり、予知能力があったりしたが。……
- 牧野修氏より「呪禁官」の第二作「ルーキー」を頂く。「マジカル・シティ・ナイト」を中断させられ、かつて複数の版元から「魔術戦士」を断られた人間としては、また「魔術戦士」を完結させるのに10年かかり、その間、熱狂的読者から心無い言葉を浴びせられ続けてきた人間としては──いくら時代が変わったとはいえ──ちと複雑な気分である。参考文献に自分の書いた魔術本とか、自分の企画編集した本があるのを見て、いっそう複雑な気分になる。魔術をテーマにした小説は売れるようになったのだろうか。魔術をテーマにしても作家宛に不気味な読者から手紙や電話が来なくなったのだろうか。カルト宗教の信者に異様にもてはやされることはなくなったのだろうか。……
- ぼくの本棚に、現在、魔術資料はまとめて並んではいない。かつて六段の本棚二つ分あった魔術資料は、一部は散逸し、一部はウチの本棚の、友人たちの作品や翻訳や日本史資料の裏に置かれているのだ。もう一度、ひとつにまとめて並べる必要ができる日は来るのだろうか?
- 「真田」のメモをとり終わる。
- 明日は二女の風邪とノートの不具合が治りますように。
23:38 03/05/14
今日も農耕的に仕事をした。
- ゲラがとりあえず手を離れたので「真田幻妖伝」に集中した。
- 午前7時30分、起床。「めざましテレビ」で突然、例の白装束に司直の手が入ったと緊急ニュース。たかが終末思想のミニ・カルトじゃないか。いくら過去に見逃したカルトがテロに走ったからと言って、ムキになるなよぅ。と呟いた。まさか有事立法とかメディア規制法から大衆の目を逸らすための空騒ぎではなかろうな。どうも最近、政府が陰謀を企んでいるような気がしてならない。治安維持法がウヤムヤのうちに国会を通過しても、みんなはタマちゃんと白装束で騒いでいたりして。
- 金沢の渡辺健一郎氏よりビデオを頂いた。なかに「ボディ・スナッチャー 恐怖の街」があった。デジタルで彩色したカラー版だった。
- 「キングコング」の彩色カラー版が昔の絵葉書風の彩色なのに対して、こちらは昭和38年頃の映画雑誌のカラーグラビア風。良い感じである。こうしたデジタル彩色技術が今日の「ロード・オブ・ザ・リング」に生かされているのだ、と思うと感慨深い。作られた当初は何に使っていいか分からない技術も後代には立派に役に立つ。サリドマイドという睡眠薬は大変な突然変異を昭和30年代に齎したが、現在、ハンセン氏病の特効薬として評価されている…なんてことを思い出した。
- 今日はこれといった面白いサイトを見つけられなかった。
google検索に表示されたホラー・サイトは星の数。きっと何処かに私の求める場所がある。それを信じて虱潰しは続く。
- なんてことやってたら、変なところに引っかかったのだろうか。突然、見も知らない女性からメールが来た。おかしなタイトルだった。即効で処理したのだった。新手の未承諾広告だった。変なところに立ち寄らなくても広告攻撃はやって来るのだった。
- 「真田幻妖伝」は佐久夜姫と春日局が拉致され、佐助たちは信州鳥居峠へ。戸沢白雲斎登場。林羅山は何を企むのか。そして神出鬼没の黄金鬼の正体は。…ってところで115枚。明日、また推敲しながら書き進めるのだ。ノートは実に推敲しつつ書く私には便利なキカイである。ようやく一日12枚くらい進むようになった。も少し書けたらいいんだが、集中力がイマイチである。どう考えても抗けいれん剤の副作用であろう。
- 日中だが、左手の麻痺が時々、スウッと引くことがある。こういう時は痙攣発作が起きやすいのだ。もうちょっと寝るようにしよう。
22:53 03/05/13
今日も農耕的に仕事をした。
- ここ何日か、諸般の事情により、「日記代わりの随筆」を休んでいた。と言っても単純に忙しかっただけであるのだが。
- 5月9日の金曜日は光文社文庫のF野氏と打ち合わせをした。お陰で今年11月に室町物の短編集が出せそうである。また来年の仕事も繋がった。めでたし。めでたし。有難うF野さん。池袋西口「鞍」の自家製鮭燻製は美味かった。
- 5月10日土曜日は、秘神会。久しぶりだと思ったら、実に半年振りだった。参加者総勢17名という大人数の大宴会だった。田中文雄先生が来られなかったのが残念であった。
- 一次会では若くて良い男なもので有馬氏が霜島氏・高瀬氏に絡まれ(?)、朝松は二人に本を奪われ、笹川氏はイーノ化し、飯野氏はビールと日本酒とサワーと焼酎を浴びてとにかく久しぶり大宴会モード炸裂であった。
- 二次会では木原氏の独演会。猪熊さんが震え上がり、安土氏と槻城氏は仲良しになり、高橋氏は気遣い光線を放ち、……最後に飯野氏が立ち上がり、ツイに4
LETTER WORDS を叫んで、締めてくれたのだった。
でも、とっても楽しい宴会であった。
- 5月11日の日曜は、長崎神社の獅子舞。今年は夕方に行ってみたのだが、神社に着いたら丁度終わったところ。トホホ、と思っていたら「あと一回、中学生がやるよ」と通りすがりのお爺さんのコトバ。(つ、ついてる。俺は今年、つきまくる)と思ってしまう私は本当に単純である。
- 結局、中学生4人の半分練習の獅子舞の後、もう一度「びっくりアトラクション」として高校生男子がやって見せてくれた。やはり私はついているようだ。獅子舞はパワフルで素晴らしかった。
- 5月12日月曜日は夕方に「一休破軍行」のゲラ戻し。新しい担当はK林君。当年とって26歳。若ッ!! ホラーも伝奇も時代劇もこれまで自社の本以外は読まず、好きな本は偉人の伝記という素晴らしき「普通人」!!!(編集者がマニアやおたくでは大衆に売れる本は作れない。前提から読者を選んでしまうからだ。だから売れる本を作って貰いたいなら担当は「普通人」に限るのだ)
- おまけに販売部のエリートだったとのこと。
- (馬鹿なことを言ってケーベツされないかな)とおっかなびっくり会ってみれば、なんだ。良く話すし、明るいではないか。良かったあ〜〜。作品がトーンダウンするもグレードアップするも担当編集者の「気」がかなり左右するのだ。今度も当たりだ。私はやっぱりついている。
- 5月13日の火曜日は、探し物。インターネットで「世界ホラー作家協会」の公式サイトを発見。ラムジイ・キャンベルやバーカーやその他英米のホラー作家のサイトは概ね把握できた。
- 「ファンゴリア」のサイトをお気に入りに入れ、ついでに「ホラー・クイーン」のサイトも発見する。そうそう大好きなウド・キュアーの公認サイトもめっけて、アンディ・ウォーホールと一緒に映っているレアな写真も見られた。ゲテモノ映画世界を逍遥する。
- そんな訳で今日は仕事は進まず、でも色っぽいホラー女優のピンナップが一杯観られたから、いいや。
- えとう乱星氏より最新刊「女忍往生剣」をサイン入りで頂いた。学研M文庫書き下ろし。これは『用心棒新免小次郎』シリーズの第二作目。すでに第三作の発売も決定している。M文庫のドル箱シリーズである。えとう氏の作風はまさに「伝奇」。幻想味や怪奇性こそないが、文章に色気がある。読後の爽快感がある。天馬空を行くがごとき奇想がある。器の大きさ・骨の太さがある。思い切りスカッとしたい大人にお勧めしたい。
- そんなこんなで止まっていた「真田幻妖伝」だが、明日から、また復活。ノートを駆使して頑張ろう。
0:04 03/05/07
今日も農耕的に仕事をした。
- 『日記代わりの随想』は昨日の続きである。
- 喜多院を進んでいった時の第一印象は(とにかく広い。奥が深い。行っても行っても、まだ奥がある)というものであった。
- 今回の秘宝展のウリである「家光生誕の間」にいたるまでに、将軍家歴代の宝刀あり、家光の使った厠と浴室(ユニット式)あり、絵巻物あり、と盛り沢山な内容だった。
- さらに庭園が、これまた、広いのなんの。手入れの行き届いた花花あり、枯山水あり、家光が植えたという柳あり。このあたりは、現在書いている「真田幻妖伝」のオープニングの、おおいに参考になった。なんといっても、もともと、この地には古墳があったというのだ。それで江戸時代にも、よく勾玉の類が出土していたというのである。
- 「喜多院」のパンフによれば、奈良時代、仙波あたりに満ちていた海水を仙芳仙人が法力で除き、そこに尊像を安置したのが起こりという。のち、平安の世になって淳和天皇の勅願により、慈覚大師円仁が建立。無量寿寺と名づけられた。が、伝奇的に考えれば、神代の古墳のある場所に寺院を建てる事自体、霊的な意味がありそうだ。ダイアン・フォーチュンのいうところの「神聖なる中心点」というのを思い出してしまうではないか。
- 「この辺は仕事に使えそうだ」などと、きわめてココロネの卑しいことを考えつつ、腰元を苛めた(なんか心ときめくね)という中二階に上ってみた。狭くて天井が低い。おまけに窓には格子がはまっていた。この格子の、まあ、頑丈なこと。掴んで押しても、引いても、びくともしなかった。小さな格子でこれなら、伝馬町の牢屋のデカい格子はさぞや頑丈だったことだろう。またしても変なところで感心してしまった。で、この中二階の階段(ハシゴのようだ)だが、狭い。狭くて急であった。こっちは左足と左手が不自由な身、手すりがなければエスカレーターだってキビシイのだ。いやあ。降りる時は、ちょっと怖かった。警備員の手を借りてやっと降りたのだった。
- 天海の座像も怖かった。今まで座像を見て怖いと思ったことなど一度もないのだが、この座像はマジで怖かった。108歳まで生きていた怪僧だものな。怖さはひとしおではないよ。
- で、天海の座像の側には星辰曼荼羅。これも「真田」シリーズのテーマにぴったり。思いつめると偶然にもフィクションと現実が重なり始める、というぼくのパワーはまだ健在であった。
- ところで喜多院には面白い迷信がある。「山内禁鈴」がそれだ。すなわち、山内で鈴を鳴らすと。大蛇のタタリがあるというのである。これも伝奇的に面白い。今回は使えないが、いずれ使ってやろう。
- 拝観を終えて、靴のロッカーに戻ったら、松尾未来が家の鍵を落とした。仕方ないので土間のスノコをひっぺがした。そしたら、キーと一緒に誰かの落とした100円玉を見つけた。当然拾ったが、なんだか、「これを持ってさっさと帰れ」と天海に言われているような気がした。……多分、気のせいだろう。
- のち、五百羅漢を見学。こちらは壮観であった。感動しながら記念写真をとった。
- さらに「厄除けだんご」を食べ、ホット日本茶を飲んで、川越を後にしたのだった。
- 楽しかったが、階段ハシゴのせいだろうか、太ももがパンパンに張って痛かった。
- 明日は一月ぶりのリハビリである。今日は10枚書いて、「真田幻妖伝」は82枚に達した。明後日までに110枚くらいまで進みたいものである。
0:08 03/05/06
今日も農耕的に仕事をした。
- 五月三日は川越へ取材に行って来た。「真田幻妖伝」にいよいよ春日局が登場するので、彼女や、天海僧正と縁の深い喜多院を一度見ておこうと思ったのだ。
- 考えてみたら川初めてだった。小江戸と呼ばれるこの街にどうして今まで行かなかったかといえば、ズバリ、きっかけが無かったからである。所沢も浦和も熊谷も行って遊んだことがあるのに、川越だけ……。不思議な話だ。
- などと言っているうちに川越に着いた。途中、立っていた「川越街道」の石碑(本当にそう書いていたのかな。自信がないぞ)がとても風情を感じさせた。
- ただ、市内に入ってみれば、ガイドブックに書いてるような、何処も彼処も江戸江戸している訳ではない。ところどころにポツリポツリと古い蔵や屋敷があるというだけのこと。まあ、鎌倉のような押し付けがましさがないから、スウッと街に入っていけた。
- そうは言っても、なんだよ、ここは。川越大師(喜多院)じゃなくて成田山の別院じゃねえか。おまけに「ここの駐車場を使ったら他に行くな」だと。なんて心の狭い寺なんだ。
- で、成田山の出張所から隘路を強行突破して、喜多院の駐車場に入ることが出来た。「やれやれ」なんて言いつつ、急いで腹ごしらえ。山門近くの蕎麦屋に入った。が、満員!!!
- 席に就いてから蕎麦が来るまで30分もかかった。これはきっと蕎麦の苗から作っていたせいに違いない。
- でも、やってきた割子蕎麦がとても美味かったので、すべて許すことにした。苦しゅうないぞ。
- そうして、世界の全てに優しくなって、喜多院へ。
- まず五百羅漢を見ようとしたら、「秘宝展の切符とコミです」と注意された。ならば、と喜多院へ入る。が、玄関でまず靴を脱がねばならなかった。
- 展示物を見学していったのだが、今回、展示されているのが江戸初期中心ということで、全体に品物が大きいのに感心した。当時は将軍のガタイも大きかったのだ。鎧兜や刀剣は勿論だが、わたしとしては、修験者の背負う笈(おい)の大きさを間近で測ることが出来たのが収穫であった。それはちょうどわたしの腰から肩までの高さで、幅はわたしの肩幅より少し広めくらいだった。
- 一方、鎧櫃(よろいびつ)の本物は笈よりはやや高め、幅も奥行きも二周りくらいでかい。こんなモノを背負って、槍を手に、東海道を歩いていったとは、不破数右衛門はかなりのデカサだったのだろうな。戦国・桃山・江戸初期を舞台にした時、キャラはいずれも180センチ以上にした方が良いかもしれない。
- で、次に注目したのが、庭なのだが。この話はまた明日に続く。
- わたしはもう寝ます。疲れたよ。
23:58 03/05/02
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前中から「一休破軍行」のゲラをチェック。面白いのでホッとする。この歳になっても自分の作品が面白いかどうか、ヒヤヒヤしているとは情けない。しかし、どうやっても夜郎自大になれないのだ。おそらくこちらの育ちが良すぎるせいだろう。なんちってヤロウでジダイな皆さん、ごめんなさい。(たっはっはっ)
- 疲れたのでノートで遊ぶ。イタリア・ホラーのサイト、メキシコ・ホラーのサイト、スペイン・ホラーのサイト、挙句にポーランドのホラー・サイトまで飛び回る。
- ところがポーランドのホラー・サイトには、「ナチス占領下、恐怖政治と闘った映像作家たち」というのもあって、(す、すみません。私のココロネが卑しかったですっ)と、思わずノートの画面に謝っていた。いや、確かに「ホラー」は「ホラー」なんですよ。
- それからの連想なのだが、ポランスキーの「ナインス・ゲート」とかいうホラー映画は面白いのだろうか。「ローズマリーの赤ちゃん」も「マクベス」も大好きなので気にかかる。
- 「真田幻妖伝」はあまり進まず。
- 薬の副作用か、集中力が激減している。
- それでも読んだ本は資料だった。槙佐和子「日本の古代医術」。この人の本はとてもPAGAN的で面白い。古事記や日本書紀や源氏物語などといった古典を医術(医学ではない)から読み解いているのだ。
- 明日は「真田」の取材のため、妻と、川越に行き「喜多院秘宝展」を見る予定。春日局ゆかりのお寺で春日局の部屋(寛永年間に江戸より運んできたもの)を見学する予定。江戸初期にタイムスリップ。写真を撮ってきます。公開する予定なので、乞うご期待!!!
23:12 03/04/29
今日も農耕的に仕事をした。
- 本日は妻方の山梨の曾お祖父さんの法事。妻の運転で、子供たちとお婆ちゃんは山梨県は河口湖へ。わたしは留守番。
- 午前7時過ぎに起床したためか、資料を調べているうちに猛烈に眠くなってきた。
- で、仮眠。途中、腹が減って目覚め、蕎麦弁当とカルビ丼の小を買う。食べて、また寝る。
- 途中、息子の友達が遊びに来て目覚め、「いないよ」と返事をした。友達が帰ったら、高橋葉介先生より電話。世間話。電話の後、また寝る。
- 結局、寝ていた一日であったが、収穫はあった。
- ネコ七さんのサイトで紹介されていたアホ映画、題して「えびボクサー」という。詳細は、下である。
http://www.albatros-film.com/movie/ebi.html
それで驚いた。このアホ映画の配給は「あの」アルバトロスではないか。
- どうしてぼくがアルバトロスのことを「あの」付きで言うか、これを見るべし。
http://www.albatros-film.com/
ここは一見、「アメリ」みたいな映画を配給する良心的配給会社に見えるが、実はゲテ物・際物・カイサクを多数配給しており、ぼくは最近、注目しているのだ。
- 良かったら、皆さんも、注目してください。「屍美女軍団」が、もしトロマで映画化されてたら、配給は絶対にアルバトロスだっただろう。ホントよ。
0:02 03/04/28
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前九時半に宅急便の呼び出しで起床。
- やっと届いた"the final destination "に思わずニッコリ。
- 日曜でも早く起きないと時間が勿体無い。そのまま起きた。
- 朝食はパンとカレー。そして紅茶。
- コーヒーじゃなかったせいか、調子がでない。だらだらとノートを前にサイト巡り。で、about
com. をほっつきまわる。
- 下記です。ホラーの情報満載の便利な所ナリ。
http://horrorbooks.about.com/mbody.htm?once=true&
- それから予告編を只見できるところへ飛んで、ゲテ・グロ・バカ映画の予告編を見まくった。
- のち、着いたビデオを見る。面白い。卒業旅行でパリに行く予定だったアレックスは飛行機が空中で爆発する予知夢を見た。機内で騒いで下ろされるアレックスと、同じ班の仲間と先生。ところが、離陸直後、本当に飛行機は爆発した。かくして死ぬはずだったのに生き残ったアレックスたちに「運命」の魔手が伸びる。
- 運命が「偶然」を装って主人公たちに「死」を齎すという設定がすばらしい。そして、「最悪の偶然」の訪れ方のいや〜〜なこと。
- 2000年の作品なのだが、今年にはパート2が出来た。つまり、アメリカではそこそこヒットした作品なのだろう。
- ちなみに予告編は、下である。
http://www.apple.com/trailers/newline/final_destination_2/
- 仕事はほんの少し。…と思ったら、通産64枚になっていた。
- 明日は「一休破軍行」のゲラが出る。これから手を加え、より一層推敲して、良い作品に磨いていくのである。発売は七月。いま少し待たれたし。
23:53 03/04/25
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前7時40分起床。なんだか疲労感を朝から感じる。
息子は普通。長女と二女は休み。中途半端な朝食。
- コーヒーを飲んで、のち、調べ物。真田幸村について。慶長19年10月の大坂入城まで、さしたるイベントなし。夏の陣・冬の陣が無ければ幸村はきっと歴史に残らなかっただろう。
- 午後5時よりホテル・ニューオータニにて、田中芳樹氏の「作家生活25周年記念の会」。妻と一緒にお呼ばれされたので、喜んで行く。パーティーは去年の「鮎川賞」以来ではないか。
- 会場の待合室で、まず、ひかわ玲子氏に会う。ひかわ氏は真紅のドレス。彼女のオーラと同じ色である。
- 一番奥まで進んだら、光文社の文庫とノベルスの編集さんたち。さらに田中文雄先生が座っていた。席を詰めて貰って座る。
- そんな訳で開場にあたっては、かなり先に入場。入り口に立たれた田中芳樹氏ご夫妻に、妻とご挨拶。「初めまして。やっとお会いできましたね」と、わたし。「ええっ、初めて会ったのですか」と奥様が驚かれた。電話では何度もお話ししているし、あまつさえ「妖臣蔵」の推薦文まで頂いているのだが、直にお会いするのは、これが初めてなのであった。
- パーティー会場は一番奥の、椅子のある場所へ。田中文雄先生・カミさん・わたしの順で座る。結局、パーティーが終わるまでこの位置を動かず。
- パーティーが始まり、スピーチ、乾杯、と流れていく間、ひかわ玲子氏に水野良氏を紹介してもらう。(それ以外、誰も同業者を紹介してくれないので、知り合えず)
- 田中芳樹氏がわざわざ挨拶に来てくれたので、感激する。感激のあまり、何を話したか、良く覚えておらず。
- 田中文雄先生「田中芳樹さんはすこぶる良い人だな」
わたし「そうですね」
田中文雄先生「やっぱりメジャーになるからには、それなりの人物でなければならないんだろうな」
わたし「でも、単に良い人というだけでも、メジャーになれませんよね」
田中文雄先生「(じっとわたしを見つめてキッパリと)まったくだな」
わたし「…………(そっと眼鏡を外し涙を拭う)」
- そうしているうちにもパーテイーは盛り上がり、田中芳樹氏の作品からイマジネーションを得たオリジナル・カクテルが披露されたり、キャラクター名が付いたオリジナルブレンドの紅茶が振舞われたり、1等ハワイ旅行のビンゴがあったり、客を飽きさせない数々の演出は流石、希代のエンターティナー。おおいに見習いたいと思ったことであった。
- ところで、わたしは、パーティー会場で懐かしい人物に会った。徳間書店の編集者W辺女史である。彼女は「函館拳銃無宿」の時の担当だったのだ。今、彼女は「アニメージュ」の副編集長になっていた。も一人、中某公某新社のW辺氏。彼は田外竜介シリーズや「大冒険」や「幻獣戦記」の担当だった。今は同社の副部長である。
- これに光文社のノベルス編集長(こないだまで、わたしの担当)を入れると、なんと、わたしの周りはW辺だらけになってしまう。
(さらにカッパノベルスにはW辺という名の人がもう一人いるというではないか)
- しみじみと徳間や某央某論新社と縁遠くなって、良かったと思った。なんたってややこしくて適わないではないか。
- ちなみに、作家の知り合いには「田中」姓の方が多い。文雄先生・芳樹氏・啓文氏他、田中雅美氏とも知り合いなのだ。個人的に、妻の友達は「田中」姓の人が多く、わたしの知り合いには「渡辺」姓が多い。何故なのかは、全く謎である。
- 午後7時すぎ、会場を後にして、帰路についた。
- 久しぶりに楽しい時間を過ごせた。田中芳樹氏に改めて感謝!!
0:24 03/04/24
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前7時30分起床。朝食。洗面。子供たちを送りだして、コーヒー。いつもとまったく変わりない。農耕的な一日の始まりである。
- 仕事をこなす前にリンク先へ。のち、モンドなサイト・ゾンビなサイト・ゲテなサイトを巡る。ドイツのスプラッタ映画はまるで友成名人の世界である。昔、「ネクロマンティック」という映画の監督が、友成名人の親友だといってたのを思い出す。
- 仕事はコツコツと推敲しながら地道に進んでいった。とりあえず、プロローグを9枚書いて29枚で完成。前巻を読んでいない読者が、この巻から初めて読んでもストーリーに入っていけるように。
- 気がつけばアタマから数えて早くも45枚。木曜の夕方に50枚以上渡す、という祥伝社のI野編集長との約束は完全に守れそうである。
- ことによったら、締め切りより、かなり早くアップできるかもしれない。
- などと取らぬタヌキして昼寝に入ったら、眼鏡が壊れてレンズがパソコンの画面になりamazon.comからのメールを映し出しているというヘンな夢を見た。この感覚はやっぱり、ビデオを見すぎてビデオを見る夢を見た18年前の感覚に似ている。
- 夕方、目覚めた。娘たちとコーヒー。練乳ドーナツ。
- 仕事。
- 今日は一時間くらい散歩に行こうと思ったが、天気が悪く断念。いよいよ運動不足は深刻である。
- 「おはスタ」の謎は深まるばかりである。
23:42 03/04/22
今日も農耕的に仕事をした。
- とても楽しい夢を見て午前7時45分に起きた。
- お陰で、それから上機嫌で朝食・洗顔・コーヒーと流れることが出来た。スムーズにコトが流れるのは楽しいものである。
- ところが、送リなおした「異形」の原稿が一太郎で送ったために読めない、と井上氏より連絡。慌ててテキストにして送りなおす。が、今度はサーバー不良で着かず。さらにニフティ経由で送りなおした。どうもこのところ、ウチのサーバーはおかしい。困ったものである。
- それでも、しばらくして、井上氏より電話。今度はちゃんと作品が読めて、とても面白かったとのこと。一安心。
- 「真田幻妖伝」は、プロローグと第一章、並行して執筆。12枚書き進む。おかげで通しで、もう32枚。「異形」の短編と合わせると、今月に入ってノートだけで94枚書いたことになる。
- いい調子である。ぼくはかなり推敲するので、いつも原稿が真っ黒、かつ貼り付けだらけになってしまうのだ。それがノートを使うと、とてもきれいに、スムーズに進めることが出来る。こんなことなら、もっと早くに導入しておくのだった。
- 一方で困ったのが、外出しなくなったことである。今日も、昨日と同じく、夕方にドーナツを買いに行く以外には、まったく外出しなかった。完全な運動不足だ。「仕事が忙しくてずっとパソコンに向かいっぱなしで、食事はファーストフード、ストレスは酒とタバコをデスクの前でのみ、慢性的な寝不足と運動不足で、天晴れ、脳梗塞になったシナリオライター」の話を思い出す。コワッ。明日から真面目に散歩しよう。
- 一日12〜20枚書けるようになったら目標達成だ。健康に気をつけながら頑張ろう。
23:41 03/04/21
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝は午前7時半に起床。「おはスタ」は異常なし。やはり怪事件は演出だったのであろうか。
- 子供が学校に行った後は妻と雑談。コーヒー。それから、わたしは「キャット・ピープル」を見た。こないだ点けようとしたらデツキに「んべっ」と拒否されたのだ。「だからアメリカ製はよー」とか言いながら、今日はテープを斜め上からゆっくり入れた。今回、「んべっ」はなし。最後まで見られた。何度見ても、この映画のナスターシャ・キンスキーは美しい。この頃が一番キレイだったのではないだろうか。…この後、息子(赤ん坊)と日本のCMに出てたんだよなあ。
- しかし、ナスターシャ・キンスキーといい、若い頃のバネッサ・レッドグレーヴといい、「愛の嵐」のシャーロット・ランプリングといい、「羊たちの沈黙」のジョディ・フォスターといい、ぼくの好きな女優はとても変わっているような気がする。だいたい、ちっとも奥さんに似ていないではないか。
- ひとつ言えるのは、みんなスリムで、キツそうな顔だということだろうか。
- ゾンビ映画専門サイト・モンド映画サイト・グロ映画(正確にはアルバトロスという「アメリ」を配給した会社を贔屓する)サイトなんかをうろつきまわったが、仕事は、しっかりした。
- 「真田幻妖伝」、本日は12枚。全部ノートでキーボード書き。だんだん手が慣れて来たようである。
- 一方、金曜にメールに添付して送った原稿が月曜になるも未着と光文社から連絡。慌てた。原因は、ここ何日かのサーバーの不調らしい。大急ぎでニフティ経由で送りなおす。こういう時は昔ながらの「郵送」「ファックス」「手渡し」が良い。
- 土曜日の「定例会」は10名もの参加者があって、とても楽しかった。しかし、女性の参加者は例によってなし。だんだん飯場みたいな「定例会」になってくる。これはいかん。マカロニ・ウェスタンに出てくる酒場みたいに、目が合ったら撃ち合うようになる前になんとかしなくては。
- と、いう訳で、オフ怪を企画中です。皆さんのご意見を、例の「オフ怪談義室」の掲示板にカキコしてみてください。
http://hpcgi2.nifty.com/mitamond/bbs/light.cgi
0:12 03/04/19
今日も農耕的に仕事をした。
- ノートパソコンを使っての原稿書きを始めて十五日目。ようやく短編62枚、完成。同じ枚数だと手書きなら、約十日で書ける。
- しかし、作品を慣れないツールで書いたのだから、五日のロスは大目に見るべきであろう。これまで他の人の本の解説や企画書、短いエッセイ、自作紹介などはパソコンで書いてきた。しかし起承転結のある仕事は初めてだった。
- ちなみに書いた分量は、以下の通り。(わたしは毎日、業務日記をつけているのだ)
- 4月3日(4枚) 4日(6枚) 5日(打ち合わせのため書けず) 6日(2枚) 7日(4枚) 8日(別な作品のためのノート作成・6枚)9日(外来診察日・疲れ果てて何も書けず)10日(イ・「真田幻妖伝」アイデアメモ作成 ロ・「一休」短編用アイデアメモ ハ・8枚)11日(なんか疲れて仕事できず)
12日(イ・来年の長編メモ ロ・「真田」調べ物 ハ・3枚) 13日(2枚) 14日(イ・「真田」ノート作成 ロ・打ち合わせ ハ・2枚) 15日(イ・4枚 ロ・打ち合わせ ハ・3枚)16日(イ・長編ノート作成 ロ・打ち合わせ ハ・6枚) 17日(11枚) 18日(イ・短編10枚 ロ・「真田」4枚)
- 日にちごとに書いた枚数と総枚数が合わないのは、前日書いた分を毎日直しているからである。
- とにかく、新しいことを一つ達成できた。これはわたしにとって大いなる自信となった。
- 弾みがついたか、短編完成後も、「真田幻妖伝」もノートで書き始めた。
- 長編に関してはノートと手書きと半々でやってみよう。
- だが、手書きよりも疲労を体感しないので、ややもすれば、休憩と同時に眼精疲労や頭痛や脳の疲労がドッときて、電池が切れたように眠ってしまう恐れがある。また、気を抜くと文章のセンテンスがいつまでもダラダラと長くなってしまいそうだ。さらに使える漢字、一発で変換できる漢字が限られているので、ついつい表現・形容が紋切りになってしまいそうである。
- キーボードで書いた短編は異形コレクションの「夏のグランドホテル」のためのもの。「神奈川あたりの海辺に建つホテルで、一夜に起こる怪異」がテーマ。わたしは「グランドホテル」で「室町時代」で「伝奇時代小説」で「一休」という『縛り』である。きわめてアクロバティックな『縛り』をどのように料理したか、また、それが成功したか、失敗したかは、「異形」を読んでのお楽しみである。
- まずは、今日は、疲れた。また明日、農耕的に頑張ろう。
23:56 03/04/17
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前七時二十分に起床。「おはスタ」は今日は何も無かった。と言う事は、あの事故の数々は本当のことだったのか。
- テレビの本番中に起こった怪事件について、何か分からないかとサイトを検索してみたが、ロクな情報がなかった。こうしてわたしの体験はゆっくりと「都市伝説」の淵に沈んでいくのだろう。
- 短編は本日、10枚進んだ。キーボードの手ごたえが手書きに近くなってきた。これは歓迎すべきことだろう。長編もノートで書こうかな。毎日10枚以上書く自信がついてきたら全面的にノートに切り替えよう。
- 「真田幻妖伝」については抜群の書き出しを思いついた。偶然テレビで見た川越の紹介番組。こんなところにヒントがあった。天啓の女神はまだまだ、わたしに味方してくれているようだ。
- 明日は短編を完成させて、いよいよ「真田」を書き起こそう。
22:12 2003/04/16
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前七時十五分頃、「なんなんだ、この番組はあっ」という妻の声で目が覚める。
- 「なんだ、なんだ、なんだ」と起きてみれば、いつもの「おはスタ」(テレビ東京系の子供向け朝番組)なのだが、山ちゃん以下いつものメンバーが暗いなかに並んでいた。妻によれば、生中継中にスタジオのライトが切れて真っ暗になってしまったのだそうだ。
- 「昨日はおはガールが、ゲストに出そうとしたフィギュアを取り落としてしまい、大騒ぎだったし。おとといは金魚鉢がひっくり返ってモニターが映らなくなってしまったのよ」と妻の説明。「おまけにたった今まで暗くなったスタジオの空中を白いヒカリモノが飛び回っていたし。……これ、新手の演出か、何か新製品のキャンペーンかしらね」
- ううむ。だとしたら、何日もかけるあたり、相当出来るな、オヌシ。お化けゲームのキャンペーンか、新しいアニメの宣伝か。はたまたホラー映画の宣伝か。いずれにせよ、かなり出来る宣伝マンがついたと見た。
- テレビの本番中に起こった怪事件といえば、まず思い出すのは、「生首の掛け軸」事件である。これは日本テレビのモーニングショー番組で、とある寺に秘蔵されていた侍の生首を描いた掛け軸(赤い部分は本物の血で描いているという)を紹介中、「これはですね…」と説明しているレポーターの後ろに映された掛け軸の生首の目が開いたというものだ。偶然、この番組、学校をサボッていたわたしも見ていた。最初に紹介された掛け軸では確かに生首は目を閉じていた。ところが、レポーターの後ろに映った生首は目を開けていた。そして、最後にまた映された生首は目を閉じていたのである。翌週、またも学校が休みになったので同じ番組を見たら、「先週、番組中に掛け軸の生首が目を開けまして……」とレポーターが興奮した報告をしていた。そして、前回のシーンを再び出すと、生首が目をつぶっている映像と開いている映像がある。「けっして掛け軸は二枚ある訳ではありません」とレポーターは締めていた。──もっとも、これ、のちに幾つかの「謎タネ明かし本」で「光線の具合でそう見えただけ」とかいうツマらない説明がなされていた。が、しかし、ナマでみていない人間が何を言っても空しいだけである。生首が光の加減で目を開けたように見えたのなら、どうして黒目がくっきり現れていたというのだろうか。わたしは絵に描いた生首の見開いた目の黒目を見てるのである。
- もう一つは、これも日本テレビの人気番組「イレブンPM」。一時期、土曜イレブンなる番組があった。佐藤充が司会をしていて、エッチなネタと、オカルトなネタが得意だった。
- で、この番組で、交霊会を催した。真っ暗な部屋に暗視カメラ(当時は赤外線カメラと呼んでいたものである)を仕掛け、霊媒が霊を降ろそうとしたのだ。そうしたら、いきなり、凄まじいラップ音がし始めた。これに驚きディレクターは右往左往するわ、ナカ◎カト×ヤ先生は蒼くなるわ、ゲストの女優はヒステリー状態になるわ。いやあ、それはすごかった。……ところが、あれから三十何年になるも、誰もこの番組に言及していないのである。あれは、わたしの夢だったのだろうか。それとも生首掛け軸同様、あんまりホンモノなオカルト・ネタは放映出来ないというのだろうか。
- オカルトな話から伝奇な話へ。昨日は夕方から光文社文庫のF野氏と打ち合わせ。F野氏のご理解のお陰で今年もなんとか三冊以上は本が出せそうです。有難たや。ありがたや。
- 今日も今日とて角川春樹事務所の齋T氏と打ち合わせ。来年、剣豪をテーマにした伝奇時代小説を書き下ろすことになった。これまで、ずいぶん待たせたけど今度のは自信作だからね。齋T君、売れる作品だから、楽しみにしていてね。
- 短編は42枚まで進んだ。読み返したら、メッチャ面白い。パソコンで書いてもいけるじゃないか、と自信を持った。内容は十年ほど前に見た悪夢をもとにしている。わたしは良くストーリーのある夢を見るのだ。まあ最近は抗けいれん剤の副作用か、ストーリー性は影を潜め、ひたすらリアルな夢になっているのだが。
- 古書店で「本当にあった愉快な話(赤面パラダイス編)」田島みるく著(竹書房)を買ったら、なんと今年の4月27日初版。出たばかりのホヤホヤだった。おまけに読んでいないネタばかり。とってもツイている気がした。これもまじめに仕事しているお陰であろうか。
20:56 2003/04/15
今日も農耕的に仕事をした。
- ノートで原稿を書くようになって13日目。午前中に4枚、午後に、あいだ、打ち合わせを挟んで、なんとか4枚。あと少し書けそうである。だが、キーボードを介した作品が面白いのかどうか、さっぱり分からない。かと言って今更、手書きに戻ることも出来ない。参ったネっと。(←あまり緊張感がないのは昨日・今日と、打ち合わせが上手くいっているからである)
- しかし、連歌のルシアン・ルーレットなんて馬鹿なことを考えなければ良かった。いくら他人がやらないことと言っても自ずから限界があろうというものである。現代において連歌なんて一体何人が理解できるというのか。なんだか「私闘学園」のカルタ取りの巻を思い出してしまった。あの時も手が動かなくなるほど頑張ったワリには報われなかったっけ。
- 土曜にamazon.comから届いたビデオ"the Devils"というビデオを見た。これは中学時代に『肉体の悪魔』という題名で公開された作品である。監督はケン・ラッセル。主演はオリバー・リード。バネッサ・レッドグレーヴ。フランスで実際にあった「ルーアンの魔女」事件をラッセル自身が脚本化したもので、マス・ヒステリーにすぎない尼僧院の騒ぎに乗じて、フランス王室が、独立自治区であるルーアンに魔女事件をでっち上げ、自治区の長たる青年司祭グランディエを魔女として火刑に処する、というストーリー。都市国家が中央集権に武力で吸収されていくのが、如何に歴史的必然とはいえ、苦いものを感じてしまう。グランディエの妻が廃墟と化したルーアンの城壁を越えて、地平線まで続く骨の道を進んでいくラストには涙さえ浮かんだ。それはともかく、この時代のバネッサの尼さん姿はとても色っぽい。ひょっとすると、「魔術戦士」に出てきた尼さん戦士のイメージは、この映画から来ているのかも知れない。
- ビデオの価格破壊は凄まじい。とうとう300円、500円が当たり前になってしまった。これは、もう、DVDに完全に入れ替わる寸前ということなのだろう。
- かつて8ミリ・フィルム版の映画がゆっくりとビデオにとって替わられていった頃、いち早くビデオに走った知り合いは「とにかく場所をとらない」ことをビデオの利点に挙げていた。こちらは「リアリティがない」ので、反発を感じていた。その時のことをなんとなく思い出す。
- 明日も打ち合わせである。頑張ろう。
23:25 2003/04/14
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前七時半、起床。子供たちは今日から普通の授業の日々。つまり二女は今日から本格的に高校生である。愛読雑誌は「ポップティーン」だし。だから髪は栗色、付け毛もつけている。お化粧もしている。ミニスカートの制服も着ているのだった。
- ちなみに長女と二女のかよう高校は永井豪氏・吉本ばなな氏・井上雅彦氏が卒業し、柴咲コウが中退した所である。うーむ。凄い先輩たちだ。豊島区と板橋区の境はどうなっているのだろう。
- どうでもいいけど、井上氏は、わたしの父の出た大学の後輩でもある。なんかウロボロス状な先輩・後輩関係であった。
- 土曜日(4月12日)には久しぶりに古い友人にあった。彼に「長男は中二なった」と教えたら、「なんや、えらくトシを取ったような気がしますな」としみじみ言っていた。まったく子供がいると早く老けるようだ。
- で、日曜(4月13日)には床屋に行って髪を短く刈ってもらったのだが、いやあ、白髪の目立つこと。しかし、長女が18なのだから、ごく普通に老けているのだろう。
- ノートによる原稿執筆はやっと29枚まで進んだ。少しずつだが、内容がこちらの右手に伝わってくるようになってきたようだ。だが、そうしたら、作品が大して面白くないことが分かってきた。憂鬱になってくる。
- 夕方、祥伝社のI野編集長と会うので、午前中は「真田幻妖伝」のための年表・キャラクター一覧・ストーリー等を纏める。さらに下書き。長編は手書きですることにした。伊豆から山梨にかけてダンジョンで結ばれている設定がムリのないようにインターネットで調べ物。成る程。そういうものがあったか。こいつはツイている。
- 夕方、I野編集長と会う。打ち合わせ。かなりタイトなスケジュールで頑張ることを約束。さあ、面白くなってきた。ぼくは忙しくなるとガゼン燃えてくるのだ。
- 帰宅後、コーヒーを長女と飲んで、別の仕事。疲れてきたので夕寝。一時間後、起きて、夕食。のち、また仕事。やっとカタがついた。メールで完成した仕事を送信して、本日の業務は終わり。
- 明日も明後日も、打ち合わせがある。頑張ろう。
0:27 03/04/09
今日も農耕的に仕事をした。
- ノートによる原稿書きは一日7枚。ちょっぴり能率はアップしたが、果たしてキーボードによる作品が面白く、かつ怖いものかどうかは心許ない。慣れるまでには二つ三つ、失敗作が出てしまうかもしれない。が、小説で二作三作と失敗すれば誰も読んでくれなくなる。できれば現在の作品から成功させなければならない。胃が痛くなりそうな問題である。
- 井上氏の話ではキーボードを使っても、あるキーだけ壊してしまう人がいるとのこと。つまり、文体がキーに反映している訳だ。
- 手書きで来年の書き下ろしのためのノートを作り始める。
- ついでに「真田幻妖伝」の下書きを、手書きで。
- 二女が一昨日から風邪をひいている。雨の中を遊び歩いているせいかと思ったが、K社のS氏からも「風邪でして」と打ち合わせキャンセルの電話。どうやら悪い風邪が流行っているようである。二女が行った病院ではペニシリンを処方してくれた。謎の肺炎に用心しているようだ。小学5年の時に「復活の日」を読んで、それ以来、風邪はコワいと思っていたが、自分が風邪のひどいので脳をやられるとは思わなかった。まったく風邪は万病のモトである。
- 明日はリハビリと外来の日。脳外科は新しい主治医になる。が、その前にリハビリの診断を受けなければならない。
- 作品のことが気になっているのに、それ以前に瑣末なことを気にかけなくてはいけない。それが人生とはいえ、面倒なものだ。
23:52 03/04/07
今日も農耕的に仕事をした。
- ノートで仕事をするようになって早くも4日目、短編はようやく13枚を数えるに至った。現在のペースは一日三枚強。手書きのほうがずっと早い。だが、これは手と勘が、未だにキーボードに慣れていないためと思われる。なにしろキーボード操作にはリアリティがない。そのため、作品執筆時の、あの手ごたえが感じられないのだ。しかし、よく考えてみれば、この『日記』もキーボード操作で書いている訳だから、リアリティ云々はおかしな論理である。早い話が新しいキカイに戸惑っているだけの話だろう。
- 思い出した。ビデオを買ったばかりの頃、よくビデオを見ている夢を見た。そして、それはわたし1人の話ではなくて、周りの人みんな──新聞のコラムにさえ書いている現象だった。
- 本日は高橋葉介先生より電話。井の頭公園は桜が満開だそうだが、酔っ払いだらけで、とてもマトモに花を愛でる余裕はないそうである。
- 井の頭の花見の話を聞くうちに、昨日偶然読んだ芥川竜之介の「ひょつとこ」を思い出す。嘘で固めた人生を送っていた男が酒に浮かれてヒョットコの面をかぶり、踊った挙句に脳卒中で無意味に死ぬ話。ヘンな短編だった。芥川はこの作品に何を託したのだろう。
- ヘンな短編といえば、三島由紀夫の「葡萄パン」というのもヘンな短編だった。ビート族(1950年代の不良)の風俗を描きながら、印象に残るのは食器箪笥にしまっていた葡萄パンに蟻がたかっている描写ばかりである。
- 駄作失敗作のアンソロジーをやったら面白い、と意地悪なことを仰ったのは山田風太郎先生だが、それより、わたしは「作者にとっては書かなければならない内的必然性があったらしいが、客観的に読むと『ヘン』としか言い様のない作品」のアンソロジーを作るべきだと思う。わたしの「三十一人座」も、このアンソロジーに加えてもらおう。
- 昨日は神野オキナ氏、今日は飯野文彦氏と長話。作家にとって生き難い世の中になってきたことを実感する。確実に世界は昨日より今日、今日よりは明日のほうが悪くなっている。こんな時代に希望の光を保ちつづけることは容易ではない。宗教か、頑固か、ヤケクソか、能天気か、無神経か。はたまた思考停止か。いずれかの手段しかあるまい。わたしはひたすら頑固で行こう。
- 四月十日の誕生日よりちょっと早いが、プレゼントを貰う。DVD。1932年の映画「猟奇島」である。あの「キングコング」と同じセットを使って作ったスリラー。ロシア貴族のハンターが絶海の孤島で、漂着した人間をハンティングする話。これは、のちにコッポラが映画化し損なって「地獄の黙示録」になった。また、白土三平も「カムイ外伝」のビッグコミック版で、かなりえげつなくマンガ化している。内容は……。かなり大人しやか、かつ格調高い秘境サスペンスであった。
- 明日は二女の高校入学式。早いものだ。再来年は長男の高校進学である。ついでに二年後にはウチのクルマは廃車が決定。ディーゼル車は二年後に規制されるのだそうだ。二年後、一体世の中はどうなっているのだろう。
0:19 03/04/04
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前8時半に起床。昨日の疲れが残っているせいか、ちょっと寝坊しすぎである。子どもたちは春休みをよいことに昼近くまで「寝くたれて」(←これ、千草忠夫の本にあった表現なのだが何処の方言であろう)いやがった。
- コーヒーを飲みながら妻とゆっくり雑談。
- 昼から仕事を始めた。まずは版元に電話をする。祥伝社のI野氏に「一休、出来ました」と連絡。I野氏は自社のことのように喜んでくれる。なんて良い人なんだろう。光文社のF野氏にもメール連絡。その他、メモを取ったり、本を片付けたり、資料を出したり。
- ノートパソコンで短編を書くことを決心する。自分で自分を追い詰めなければ、いつまでもノートが使いこなせないままで一生終わってしまうからだ。
- 少し書いて、短編のタイトルを決めて、休む。
- 「シックス・センス」「カル」を二本立て続けで見る。
- 実は「シックス・センス」は自分で見たと思っていたのだが、まだ見ていなかった。あんまり評判になった映画とか本にはままあることである。
- それで見た。……イマイチ。霊能を持った男の子の使い方が甘いのかな。オチは三分の一見て分かってしまったし。ホラーなのか感動作なのか、どっちつかずの感じ。おまけに継母に殺された少女のエピソードが唐突に感じられた。
- 「カル」は刑事サスペンスとして楽しめた。…けど、なんだか騙されたような後味だった。意味ありげな割に、大して意味のないシーンとかカットが多かったせいではないだろうか。ハリウッドでリメイクされたら絶対にシャロン・ストーンが主演だろうな。刑事は誰だ。ブラット・ピットじゃやりすぎかな。
- いずれにせよ、どちらの映画も編集が甘いのではないか。「シックス・センス」はあと12分長いほうが良かった。「カル」はあと8分短くても良かった。
- 明日は「L.A.コンフィデンシャル」か「呪怨」を見ようか。
- ビデオ鑑賞の後に、また仕事。結局、5枚書いた。明日はもうちょっとピッチをあげたい。確実に一日10枚書けるようになれば手書きに追いつくのだ。
- 来週は長女の誕生日・二女の入学式・リハビリと外来・ぼくの誕生日・打ち合わせ・旧友と歓談などなど。イベントが多い。健康に注意しよう。嬉しいことに昨日いっぱい歩いたお陰で、体重70.5キロと、ちょっぴり痩せた。この調子で間食を止め、歩くようにしたら絶対に70キロを割ることが出来るぞ。
0:18 03/04/03
今日も農耕的に仕事をした。
- 「一休破軍行」は4月1日に完成した。完成したのは午後八時三十分頃。すぐに担当にケータイをかけた。一瞬、向こうはボーッとしていた。酒でも飲んでいたのかな、と思ったが、どうやら四月バカだと思ったらしい。慌てて我に返り「ご苦労様でした」と言ってくれた。
- 喜んで、あちこちに電話した。日が悪いのか、何処もつながらない。(八時台にはウチにいろよな)とか思いつつ、「一番哀れな女は忘れられた女」というローランサンの言葉が頭を過ぎった。ぶるる。家族が「良かったねえ」「おめでとう、おとうさん」と口々に祝ってくれた。ううう…。家族が居てくれて良かったなあ。
- 今回は2002年の11月17日に書き起こして、2003年の4月1日までかかった。四ヶ月半の製作期間である。本当は1月末に完成の予定だった。敗因は作品のスケールが大きくなってしまったことだろう。でもまあ、面白く完成出来たから良いや。740枚か。最後の二日間で61枚も書いちゃったし。
- 4月2日は少し休息。次回作のメモをとったり、本を読んだり、見たかった「ロード・オブ・ザ・リング」の特典映像DVDを見たり。あと、タップリ昼寝をした。ぼくは寝ないと脳がパンクして痙攣発作が起こるのだ。夕方に池袋で担当に渡した。担当・W辺氏は4月1日付けでノベルスの編集長に就任。W辺氏、おめでとうございます。
- でもって文庫の担当だった(今はデザイナーの)M川氏も交えて打ち合わせ・打ち上げ。馬刺しと鯨刺しが美味かった。雰囲気の良い店だった。値段も手頃そうだった。今度のオフ会はここでやろうかな。
- 4月3日からは、「真田」シリーズ第二弾「真田幻妖伝」(仮題)。そして「異形コレクション」の「グランドホテル」用短編に向かう。いよいよノートパソコンを使っての執筆である。「真田」は手書きかもしれない。担当の祥伝社I野氏が手書き好みなのだ。
- 池袋を歩いていて、思ったこと。
(最近、美人が減ったな。それとも今は美人の歩かない時間帯なのか)
(東京新聞の夕刊で小野耕生が『千と千尋』に出てくるカオナシは、”やたらに情報を吸収し、細かな知識だけは豊富だが、自分の意見というものがなく、他者とのコミュニケーション不得手な昨今の日本に見られるある種の若者たちの象徴とも考えられる”なんて書いていたけど、あんなことを言うようでは小野耕生も老けたなあ。こんなカビの生えた”今時の若者”像じゃ、現実の中学生・高校生とは接することが出来ないよな)
- (光文社の担当に内緒で日曜に「二つの塔」を見てきたけど、大傑作だったなあ。英語も聞き取り易かったし。ただ、イアン・マッケランとクリストファー・リーがちょっと区別出来なかったなあ。マッケランはわざとリーの真似していたのかな。だとしたら結構、芸の引き出しの多い人なんだな)
- 明日からこの『日記』を「一休通信」から別のタイトルにします。何にするかは未定。では、わたしは寝ます。お休みなさい。
0:18 03/03/30
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前八時半に起きて、終日仕事。
- 疲れたら友人に電話してみるが誰も留守。なんとなく中島みゆきの『悪女』という歌を思い出した。
- 夜、有馬啓太郎氏につながる。しばらく雑談。楽しかった。
- 仕事は680枚まで進んだ。加古四郎と一休の対決。対決場所は地上150メートルの空中神宮。落ちれば命はない。四郎の武器は八支刀。一休は三尺五寸の杖のみ。──どうやって敵を倒し、虚丸の肉体から彦仁王の魂魄を出すのか。
- こういう状況になると俄然燃えてくる。いや。こういう状況を先に設定して書き進んできたのだが。
- 伊勢をテーマにすると祟りがあると脅かされた。南朝を扱っても祟りはあるという。だったら、伊勢に内宮以前に存在した幻の裡宮が出てきて、これに後南朝復興の企みが拘わるという「一休破軍行」はダブルの祟りがありそうだ。
雰囲気からすると、夜の盛り場を歩いていたら向こうからヘベレケに酔ったI野F彦先生がやって来て、あわてて来た道を戻りかけたら、後ろから完全に酔って目の座った友×純×名人が現れたようなものだろう。前門のトラ。後門にもトラ。
- 早く仕事を片付けて、「呪怨」「カル」「L.A.コンフィデンシャル」が見たい。貰った本が読みたい。三田主水氏に勧められた「龍の棲む日本」が読みたい。「真田幻妖伝」(シリーズ第ニ弾)を書き始めたい。一休の次の冒険を書きたい。
- とりあえずは、寝よう。
0:06 03/03/29
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前八時半頃、起床。朝食。コーヒー。
- 何人かの知り合いに「最近サイトの『日記』が更新されていないが、体調でも悪いのか」と質問された。単に仕事に真面目に打ち込んでいただけである。
- 仕事といえば、「一休破軍行」はいよいよ書きたかったシーンである。何が嬉しいといって「書きたいシーン」が書けた時ほど嬉しいことはない。完成した時の嬉しさを10としたなら、書きたいシーンが書けた時は9くらいか。
- 仕事以外で嬉しいのは、会いたかった人に会えたこと。昨27日は、新宿で、えとう乱星氏とお会い出来た。えとう氏は伝奇時代作家である。三田主水氏のサイトで知己を得たのだ。そして、ようやく高島屋の喫茶店でミニミニ・オフ会が実現したのである。奥さん・ご子息と共に現れたえとう氏は車椅子をテーブルに就けると大きな声で笑った。明るいオーラだった。とても表情豊かな方であった。お話ししているだけで、えとう氏の「器」の大きさを感じてしまった。自然に笑っている自分に気がついた。氏の周りに静かに人の輪が出来ている──そんなイメージが心に浮かんできた。
- あっという間に時間が過ぎ、「また、お会いしたい」という気持ちだけが強く残った。奥様の優しさや、ご子息の真面目さとも相俟って、帰りの電車の中でいよいよ「必ず、またお会いしなければ」という気持ちになっていた。ウチに着いてからも、ぼくはずっと幸せな気分だった。
- 仕事はこつこつと進んだ。書きたいシーンはなんとか書けた。主人公と仇役との対立点が明確になる。それぞれの立場をかけて対決に向かう二人。
- 午後3時、光文社のW辺氏に会う。原稿を渡す。666枚まで。悪魔の数字だが、別に面白くもない。(あと30枚くらいか)とシビアに計算していた。
- ウチに帰って少し仕事をした。コーヒー。脱稿が目前に迫って、意識が高揚しているらしい。かなりハイになっているのを自覚する。鎮静するため、黙々と占いを続ける。タロット。易。おみくじ。トランプ。…
- 夢占いでは「人を殴る夢」「人を罵倒する夢」はいずれも「思いのままにことが運ぶ」予兆だそうだ。しかし、いくら吉夢でも、昔の同僚を殴ったり、部下に罵倒されたりする夢は嫌なものである。28日、目覚める前の夢だが。
- 29日は終日、仕事の予定。完成は目前だ。向こう岸が見えている。
23:08 03/03/22
今日も農耕的に仕事をした。
- 宍戸錠の出てくる夢を見ているところで目が覚めた。どんな内容だったのかな。全然覚えていない。
- 朝食。コーヒー。土曜なので子どもたちは休み。しかし、二女はダンスの練習で出かけてしまう。長男は勉強。公文を始めてから勉強が習慣になってきた。良い事である。
- 牧野修氏より新刊を頂いた。「ファントム・ケーブル」。ホラーの短編集である。残念ながら現在、読む余裕はない。あとで読ませて貰おう。作品に集中している時には他人の小説が読めない。無意識に影響を受けたり、書きたかったことを忘れたり、何より傑作だったら書く気が失せるからである。
- それで仕事に向かう。中々スムーズに集中できない。やはり薬の増量が祟っているのか。必死で集中力を喚起する。
- 近所に散歩。十六年くらい前に出たMという人の時代短編集を見つけた。室町時代を舞台にしたものだ。珍しいので買おうか迷ったが、やめた。買ってもいつ読めるのか分からないからである。その前に読まなければならない本が山積みにされている。果たして死ぬまでに読めるのだろうか。
- 昨日だったか、ヤマザキストアで諸星大二郎先生の「私家版鳥類図譜」を買った。コミックは読めるのだ。しかし、諸星先生の本をコンビニで買える時代になるとは…。講談社の営業は強いのか、弱いのか、良く分からない。
- 今から二十年近く昔、あるマニア系のコミック誌で諸星先生がインタビューに答え、「ライバルとして意識する漫画」に「アラレちゃん」を挙げていた。マンガ家になったからには、あれくらいの人気を得たい、というのがその理由であったように記憶している。
- 最近、「どうせ今の時代、本なんてオタクしか読まないんだから、オタク向けの作品を書いていればいいんだ」という論調を良く見たり聴いたりする。しかし、マニアやオタクの支持率が圧倒的に高い諸星先生の意識の、なんという高さであろう。ポピュラリティーを志向しなければ、次第に作品が強張ってくることを先生は良く知っていらっしゃるようだ。
- つまり、目新しさだけがウリのテーマ・独り善がりな手法・作家と読者の馴れ合い・自家中毒な内容へと傾斜していき、気がつけば千人単位の読者にのみ書きつづけた同人誌へと成り果てているのである。「それでもいい。俺は自分の書きたいものを書く」という反論がある。しかし、自分の書きたいことだけを書くのならば、それは「純文学」である。エンターティンメントは「読者のために書く」のである。「読者が喜んでくれ、買ってくれててナンボ」の世界である。それを忘れたジャンルに未来などあろう筈はない。わたしはそう考える。探偵小説のための探偵小説、SFのためのSF、ホラーのためのホラー。このような手段が目的化した作品のなんと多いことか。おおいに自戒したい。
- イラクへはトルコが侵攻。アメリカが予想だにしなかった事態のようだ。今後、クウェートやイランといったイラクに対し腹に一物ある国々が一斉に侵攻を開始したならば、まるで室町時代の末期である。アメリカが幕府で、イギリスが管領、スペインやオーストラリアが各国守護である。そしてイラクが鎌倉公方だ。鎌倉公方を倒しても、関東管領をはじめ土豪どもが幕府の目論見をひっくり返す。そして、戦火は全土に広がり、一気に戦国へとなだれこんでいくのだ。昔はここまでに七十五年から百年かかったが、現代はもっとスピードが速い。多分、十二年(干支一回り)とかかるまい。ああ、いやだ。いやだ。
- などとブツブツ言いながら仕事を進める。どうせ、こっちは下を向いてブツブツ言うことくらいしか出来ることがないのだ。結局、631枚まで進んだ。書きたいシーンが三分の一書けた。満足。明日、もう三分の一書こう。
- 飯野文彦氏と電話で長話。新しいタイプのホラーを目指して、がんばれ、飯野氏!!
23:07 03/03/21
今日も農耕的に仕事をした。
- 暖かくて晴れた「お彼岸」である。絶好の墓参り日和。という訳で吉祥寺の光専寺へ家族五人で、おじいちゃん(わたしには義父)のお墓参りに行ってきた。二女は高校合格を祈願して見事合格したので「お礼参り」である。
- 千早町から吉祥寺まで車道が込んでいた。やはりみんな墓参りに行くのだろうか。(←誰もが自分と同じという考えはそろそろ捨てるべきなのだが)
- 途中、妙に外人が眼についた。まさかイラクに送られる前にせいぜい楽しんでおこうというのではあるまいな。それとも墓参りか、あの人たちも。アメリカ人にも墓参りの習慣がある、と初めて知ったのは「ナイト・オブ・ザ・リビニグ・デッド」を見た時だった。兄と妹が亡き母の墓参りに行って、花をささげ、兄が妹を怖がらせる。「後ろにオバケがいるぞ、バーバラ」…次の瞬間、それは現れるのである。蘇ったばかりの死体が。
- 「ナイト〜」はジョージ・ロメロ監督のベトナム戦争批判であった。ラストで楽しげにゾンビ狩りをする州兵の姿と、ゾンビと間違われて射殺される黒人青年の姿に、それは強烈に表れていた。
- すでに言論の自由が封殺されつつあるアメリカで、一体、ジョン・カーペンターは、ウェス・クレイヴンは、その他のホラー映画監督たちはどんな作品を見せてくれるのだろう。
- 昨日、原稿の受け渡しで、光文社のW辺氏の言った言葉を思い出した。「今度の『一休』の世界はまるで現在の状況みたいですね」──戦争・神々の対立・混沌の始まり・狂信者が将軍になる日──言われてみれば似ている。しかし、室町には民衆の蜂起と暴動があった。今の日本にはまずあり得ない現象だ。
- 救急車が寺の山門を塞いでいた。最悪の構図である。苦心して妻はクルマを境内に入れる。境内には自動車がずらりとならんでいた。みんな墓参りと法事である。彼岸はあの世がこの世に近くなる日であったか。
- 墓に花と線香を捧げ、手を合わせた。のち、不動堂もお参りする。この寺のお不動様はジワジワとご利益を回してくれるのだ。
- 昼食は吉祥寺アーケード街の「猿蔵」へ。そばと天麩羅とミニ鉄火丼のセットが安くて美味かった。その後、ひばりが丘のおばあちゃんのウチへ。
- ゆっくりと渋滞を進んで、帰宅したのは午後三時半であった。
- 休んでから、仕事。やはり疲れていたせいか、大して進まなかった。
23:41 03/03/19
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前7時半に起床。朝刊を見て、ガッカリする。やはり米イ戦争は不可避であるらしい。湾岸戦争の時のどうにもやりきれない気持ちが蘇ってくる。
- 子供たちを送りだした後、妻とコーヒー。飲んでる最中に長女がもう帰ってきた。なんという早さ。都立高校は何をしているのだろう。仕方ないので一緒にコーヒーを飲んだ。
- なんだか無性に落ち着かず、ノートで色んなサイトを覗いたり、ゲームをやったりする。仕事が手につかない。
- 昨日、喉の奥から鳩尾にかけて急にきりきり痛くなった。すぐにやんだので放っておいたのだが、ノートを使ってる最中、急に喉の奥が痛くなってきた。タバコを止めて8年も経つのに、どうしてだ。まさか喉頭ガンでは。と、妻に言ったら鼻で笑われた。
- 昼寝。午後4時過ぎに目覚めた。長女とコーヒー。
- アタマを切り替えて仕事に向かう。呻吟しながら執筆。クライマックスシーン。時空を越える小さな神。恐るべき儀式。──やっと13枚進んで、603枚。あと30〜50枚だろう。頑張れ、と自分に声をかける。
- 夕刊の情報を見て、「プロフェシー」のDVDを amazon.com に注文した。わたしが昔、編集した「モスマンの黙示」の映画化。楽しみだ。
0:00 03/03/19
今日も農耕的に仕事をした。
- ノートパソコンに「ブロック崩し」があるのを発見。仕事に煮詰まると、ついやってしまう。ゲームは麻薬だ。
- それというのもクライマックスシーンが気に入らないからである。
- 今日も五枚潰して、書き直し、593枚まで進んだ。なんてこった。予定では、1月末に完成していた筈なのに。これでは発売は6月である。
- 神も仏もないものか、と嘆いてたら推理作家協会から封書。(会費は滞納していないけどな)などと思いつつ開いてみたら、「2003年度推理小説代表作選集」に「恐怖症」に発表した『荒墟』を収録するという連絡。お金は貰えないけど名誉な話である。
- とりあえず、「恐怖症」の監修者、井上雅彦氏と、光文社文庫のF野氏に電話した。お二人とも我がことのように喜んでくれる。昨日の「星雲賞」ノミネートの話といい、近頃、ゲンが良いようだ。いっそ宝くじとか、レコード大賞とか、ノーベル賞とか、アカデミー賞とかに当たらないものか。(賞は当たるものではなかった)
- とにかく、これらのことを励みに頑張ろう。
23:50 03/03/17
今日も農耕的に仕事をした。
- 16日は祥伝社の読者プレゼントのための「色紙」を10枚も作成。緊張に手が震えて一枚失敗する。今回、応募者の最高年齢は79歳。「はじめて伝奇小説を読んだのが白井喬二の『帰去来峠』でした。この作で『猿飛佐助』にひかれました。以来70年ぶりに面白い作品に出会いました」という御感想にはただただ涙。
- ちなみに最年少は15歳。中学3年生の女の子。「次から次へと想像以上の出来事が出てくるので、すごくドキドキしながら読めました」こちらも作者を感涙に浸らせる御感想でありました。感謝。もっと面白い伝奇を目指します。
- 月曜はあちこちから御電話。急にぐっと忙しくなってきた。それでも朝は子供を送り出した後、妻とコーヒーを飲みながら雑談。楽しいね。
- 午前中はノートに手を馴らすため、色々とやってみる。
- と、その最中、東京創元社のM原氏より電話。なんと「秘神界」が「星雲賞」の「自由部門」にノミネートされた、とのこと。兎に角めでたい、と二人で話し合う。
- 光文社のF野氏に電話。来週の打ち合わせのアポイント。そう言えばF野氏にあげたディスクはやっぱり外部録画ミスで何も入ってなかったとのこと。DVDは「初期化」とか「ファイナライズ」とか、どうにも面倒でいけない。やはり家電はアナログに限ると思う。
- 祥伝社のI野編集長に電話。「色紙はお送りしましたよー」「どもっ」ちなみに、一枚、お気に入りの出来栄えあり。
- 仕事は夕方からエンジンが掛かり始めて、5枚書き直し、585枚まで進んだ。いよいよクライマックス。段々精神もハイになって来る。
- 発作が起きると嫌なので筆を止め、夕食。
- 金沢在住の友人で精神科医のワタナベK一郎氏より電話。ホラービデオの話とか「ウィアード・テールズ」系のホラーとかゲテモノなホラーの話とかサイコなホラーの話とか、色々とする。どっちにせよホラーの話だ。
- 土曜は久しぶりにチャットに参加して楽しかった。もっと多くの人たちに参加を呼びかけよう。そうだ。「朝松メーリング・リスト」のパワーアップ計画を練らなければ。まずは寝よう。正しい睡眠は閃きを生むものなのだ。
- 寝よう。寝よう。
23:59 03/03/14
今日も農耕的に仕事をした。
- 午後二時頃、祥伝社のI野編集長より電話。「そろそろウチの番になりそうですか」「済みません。今、560枚なんですよ」「ふうむ。では残り60枚くらいですね。頑張ってください」
- 光文社のW辺氏に565枚まで渡す。氏曰く「あと60枚くらいですね」「あれっ、何処かで聞いたようなセリフ…」実際、あと50〜100枚の間で完成しそうなのだ。ううむ。プロの編集者って凄い。
- 帰宅後、娘たちとコーヒーを飲む。くつろぎ。やすらぎ。「家庭」を思い切り満喫している感じ。こういう感覚を「マイホーム主義」とか「ぬるま湯」とか言って笑うようになったのは、どうやら日露戦争以後のようである。わたしがサラリーマンの頃など最もケイベツされていた。で、当時いた出版社は、と言うと、作る本の「良心的」で「稀有」で「芸術性」の高いイメージにも拘わらず、仕事中に社長は「4
letter words」を叫び、夕方からは賭けポーカーやオイチョカブが始まり、毎晩酒盛りで、セクハラ・イジメは当たり前。部長連にはクラブ・ママとか芸者とか愛人とかから電話が入り、新人研修は買×ツアーすれすれという……「ここは山賊の巣か、飯場か」と叫んだ部長がいたほどな会社であった。版元の出版物で幻想を抱くのは、外見だけ見て恋をするようなもの。やはり、良っくお付き合いしてみて、しかるのちに惚れたほうが良いと思うよ。
- 当時のわたしが今のわたしを見たら、「なんでえ。家庭平和に逃避しやがって」とか言って唾を吐くだろうな。でも、二十代のわたしは、はっきり言って壊れていたぞ。今がマトモだと思うぞ。たとえビンボー作家でも。
- 二女とビデオで「チャーリーズ・エンジェル」を見た。軽くてお洒落でノリの良い作品。推薦してくれた神野オキナに感謝。
- のち、疲れて眠る。
- 二時間後に起きたら、一瞬、自分が何処にいるのか分からなかった。枕の向きを変えたせいか。はたまた薬の増量でボケたのか。あるいは脳がまたやられて来たのか。
- いずれにせよ、「一休」と「真田」を思い切り書いて、白凰坊を伝奇時代劇の世界で暴れさせないうちは倒れる訳にはいかないぞっと。
23:49 03/03/13
今日も農耕的に仕事をした。
- 「二班だよ」と言う妻の声で目覚めた。
- 実は「七時半だよ」と言っていたのであった。そうか。なにしろ娘の修学旅行の夢を見ていたからな。
- 子供たちを送り出してから、妻とコーヒー。雑談。
- 郵便物は「推理作家協会」の月報。同人誌時代の先輩の読書新聞「ソラリス」。光文社文庫よりのお知らせ。
- 「推協」の月報にはぼくの「わたしの縁起物」という駄文が載っていた。確か去年の暮れ近くに葉書に書いて送ったものである。だから書いてたことと似た事態が起こっても偶然の一致にすぎない。念のため。
- 楳図かずお先生の「イアラ」「愛の奇蹟」「ドアの向こう」「内なる仮面」(全て小学館文庫)を買った。いよいよ資料とコミックしか読めない状態である。4冊一気読み。楳図かずお先生の人間心理を見つめる眼に感服する。やはり優れたホラーには、リアルな人間ドラマが不可欠と確信する。
- 中学一年の息子がパソコンで「2ちゃんねる」を覗いていたので、「よしなよ」と注意したら、「良いんだよ。カキコしてるのは、みんな小学生か中学生か、ギョーカイ人だけなんだから」と反論された。言い返すコトバを失う。今の中坊は世間のことを良く知ってやがる。(でも、それ以外に、アタマだけ大学生の中年男とか、全共闘くずれジジイとかが混じっているのをしらない君は未だ中坊なのだ)
- 二女は友達の家でパーティー。怖いビデオで盛り上がるために「呪怨(じゅおん)」を持っていった。わたしは友達に貰って、忙しさにかまけて観ていない。悔しいなあ。帰ったので「どうだった」と尋ねたら、「謎が多すぎるよ。解決していないんだ。映画も見なくちゃ分からないよ」との答え。成る程。最近流行の商売ですかい。
- 仕事は、ようやく、書きたかったシーンにたどり着く。天空を舞い狂う星々や夜空一杯に広がった三人の幻影や、霞とも光ともつかないものや、地鳴りや地震や、硫黄の臭気。伊勢裡宮(りくう)の神々の降臨が迫る。加古四郎に北畠顕家の霊を移植する儀式も始まる。その中で一休は、虚丸の肉体から彦仁王の魂を抜き取らなければならない。そして、思いもよらないかたちで裡宮が出現する。
- 考えてみれば、この三ヶ月というもの、家族と医者以外の人に会っていないような気がする。まあ、年末年始は忙しかったし、二月はダブル発作で外出どころでは無かったし。仕方あるまい。何より、パーティーの類に行っても、左手が使えないから料理の皿は持てないし、疲れるので結局テーブルに就いたままだし、テーブルに皿を置いてイヌ食いしかできないし、会場を歩き回るうちに疲れてくるし……。昔は結構、楽しく参加したりしていたのだが。これも酒を飲まなくなったせいだろうか。それともギョーカイとか同業者とかが嫌いになってきたのだろうか。
- 早く「一休」を仕上げて、「真田」の二巻に向かいたい。今の作品はぼくのエネルギーを食いつくそうとしている。
23:04 03/03/12
今日も農耕的に仕事をした。
- 寝起きが良くなかった。「なんか苦しそうな鼾をかいてたよ」と妻。鼻は詰まっていない。どうやら疲れか、ストレスのせいらしい。しかし、何に疲れて何にストレスを感じているというのか。
- 子供を送り出してから妻とコーヒー。
- そういえば昨日はこの時間にamazon.comから荷物が届いたのだった。中身はミュージカル「CATS」のロンドン版ビデオ(全二巻)。花輪和一の「天水」下巻。ビデオは長女へのプレゼント。「天水」下巻は上巻が抜群に面白かったのでつい買った。一読、感動。これは、かの幻の傑作「浮草鏡」のパワーアップバージョンではないだろうか。最後に、ゆっくりとペン画から筆絵に変わってラスト。余韻が残った。
- 昨日は小林泰三氏よりホラー文庫新刊「家に棲むもの」も頂いた。
- 妻はとうとう確定申告を完成。税務署に提出に行く。
- こちらは妻と自分の仕事の運勢を占う。
- 長女が早く帰宅。税務署から妻も戻って、三人で昼食。カレーとトースト。レモングラス・ティー。
- 午後すぐ妻の仕事が上手くいくことを祈り、長崎神社にお参りしようと椎名町へ行く。先に古本屋に行くが収穫はなし。潰れたケイブン社の文庫が相当量並んでいた。おそらく債権者がゾッキ業者に流したものだろう。
- ゾッキ本というのは悲しい。悲しいが、一面、版元の営業部の「甲斐性」という面もある。なにしろ現在の法律では版元の在庫にはしっかり税金が掛かるし、倉庫の維持費も半端な額ではない。大きな声では言えないが、在庫の量で潰れかかっている版元がある。倉庫の維持費が非常に経営を圧迫している版元がある。そうした時、普通は営業部が一念発起して在庫をゾッキに流すのだ。たとえ4トン・トラック一台分でたったの2万円でも、断裁して金をかけるよりはマシという訳である。ゾッキが営業の甲斐性とはこのような状態を指す。勿論、これは出版経営のごく一側面にすぎない。売れている新刊を古本屋市場に流す場合もあるし、新品同様の在庫を放出して絶版にする場合もある。しかし、断裁されるよりは読者の手に渡ることにおいて遥かにマシであろう。また、同じ意味で、倉庫にデッドストックされるよりも、ずっとマシである。かつて版元にいた人間として証言する。ゾッキに出ているからと言って「売れていない」と笑うのは愚かであるし、ゾッキに本を出さないからと言って「良心的な」版元とも限らないのである。如何なる現象も一面的に捕らえてはいけないのである。どんな高邁な理念を掲げた版元と言えど、資本主義社会においては企業は企業であり、営利が目的なのには変わりないのである。理念を切り売りして文化人から小金をせびる版元も数のうちにはあるが、それは「理念乞食」であってマトモな出版社ではない。
- 長崎神社にお参りしたが、何となく「手ごたえ」を感じない。何度もお参りしていると感じるのだが、「手ごたえ」のある時と、ない時がある。今回は空振り。「ちぇっ」とか言いながら本屋に行く。と、一円拾った。「はて」と小銭入れを覗いたら1円加えると111円になる。「ひょっとしたら」などと神社に戻り、お参りし直しようとした。と、向こうで、急に拝殿の扉が開かれた。神主が入っていくではないか。若夫婦が新生児のお宮参りを頼んだのだ。「それっ」とばかりに早足で寄って拝みなおす。すると今度はばっちり「手ごたえ」がした。きっと今度は天に祈りが通じただろう。
- 帰りにアルスに寄ってアイスクリームを買った。
- 二女の誕生日。とうとう十五歳である。来月は長女の十八の誕生日。ぼくが彼女たちの年齢の時、何を読み、何を感じ、親に対してどんな感情を持っていただろうか。
- 仕事はあまり進まず。やはり疲れか、ストレスが溜まっているらしい。
- 約4ヶ月かけた「一休破軍行」が完成しようとしている。これはぼくにとって重要な作品になりそうである。
23:43 03/03/08
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前10時に起床。直前まで何だか腹立たしい夢を見ていたような気がするが忘れてしまった。
- 子供たちがずっと寝ているので、ほっといて、妻と一緒にコーヒーを飲む。
- みんなが起きて朝食などをしている間に、こちらは荷をほどきはじめる。
- 富士通FMVBIBLO WINDOWS-XP 2002冬のモデル。意を決して買った「ぼくの」ノートPCである。やったあ。遂に俺もノートで仕事できる身分になったのだ。これから徐々に手書きから離れていくのだ。
- どうして手書きを止めることにしたのか。
- それはひとえに印刷環境の悪化のせいである。
- ついこのあいだまで、原稿といえば手書きが当たり前だった。印刷会社は手書き原稿を見ながらそれを電算写植機に打ち込んでいったのである。
- ところが最近は手書き原稿を見ながら打ち込めるオペレーターがいなくなってしまった。それどころか、日本語の分かるオペレーターが現場からどんどん減っているのだ。コスト削減のために海外に発注しているせいである。
- これだけならば、まだ良い。「官庁機をテに舌ヒロサワです」という文章をこっちは機械的に直していけばいいからだ。
- ところが、ワープロの普及で原稿をデータで受け取るという傾向が蔓延してくるにつれて、フロッピーなりディスクなりをうけとり、こいつを右から左に本にするだけというクソ編集者が増え始めた。原稿を読まない、内容を検討しない、自分の意見を言わない、どんな本を作りたいというポリシーがない、編集者としての「テーマ」を持たない。こんなモノ、編集者ではない。単なる「出版会社社員」だ。出版社に入るという一事、ただそれだけを人生のゴールにしたデガラシ社員である。
- さらに出版社の中に経費削減と称して校閲を省く会社が増えだした。前にも日記で書いたが、小説に校閲は不可欠である。海外には校閲がない。だから、作者の間違い・勘違い等がしっかり活字になってしまう。ロバート・ブロックのホラー小説でラテン語が間違っているなんてのは、まだご愛嬌だ。アレイスター・クロウリーの魔術的短編小説には漢文が天地逆さで掲載されているものがある。ある魔術書(権威あるとされる研究家のものである)にいたっては、魔法陣で神の名前がヘブライ語で左から右に記されている。…ヘブライ文字は右から左に表記するものである。こういう過ちは全て校閲が存在しないために発生する現象である。日本の(マトモな)出版社は基本的に校閲を出版システムの中に組み込んでいた。それが最近失われつつあるのだ。わたしは校閲チェック無しで時代小説を発表出来るほど「自信家」ではない。
- チェック機能の無い編集者が増えている。校閲の無い版元が増えている。
- こんな状態では日本語の出来ないオペレーターが手書き原稿の2、3行を飛ばしてゲラにしてもこちらは容易にチェックできないではないか。
- そんな訳で、とりあえず原稿が短時間に、かつ正確にゲラにされるよう、作者はデータで渡すしかないのである。
- しかし、これにも勿論、陥穽はある。ゲラには印字の段階で変換ミスが発生することがある。これを訂正するために再校をとり、校正をしっかり行い、さらに三校を、場合によっては念校さえ取ることがある。かくして誤字・脱字のない文章になった。…と安心するのは早い。本にするための清刷りを印刷する段階で、ゲラが初期化するという事故が最近頻発しているのである。この事故が何を意味するのか。何度も校正した時間も努力も水の泡、本は初校の状態──「官庁機をテに舌ヒロサワです」にしっかり戻っているという訳だ。最近、誤字・脱字が目に余る本が流通しているのは実にこんな理由によるものなのだ。知ったかぶりをして、「朝松は新刊で文章を変換ミスしているw」なんて掲示板に書き込みしても恥をかくのは書いた当人なのである。
- このような事故が多発している状況で、作家は自己防衛を図らなければならない。わたしは基本的に、仕事を依頼に来た編集者とは必ず直に会い、どんな人物か確かめることにしている。校閲部のある会社、もしくは、しっかりした校閲マンを雇っている会社としか仕事しないことにしている。校閲に書いてある内容を良く読んで、納得がいけば「良い作品に磨いてくれて有難う」と編集者にも校閲にもお礼を言う。だが、物を作る人間に対する敬意が欠如した相手にはとことん絡むことにしている。これが「朝松は気難しい」と言われる所以である。でも、ぼくは自分の言ってることや、態度が間違っているとは思わない。
- そうは言っても「言うは易く、行うは難し」。
- ノートを自在に操って原稿を書いていけるようになるには一年はかかる。
- それまでは、手書きとノートとを並行して使うことになるだろう。
- 時として「官庁機をテに舌ヒロサワです」という一行に頭を抱え、三行も四行も脱落したゲラのために手書き原稿の山をひっくり返しながら。
23:28 03/03/07
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝のコーヒーが美味い。
- 午前10時30分から仕事に精を出す。
- 書きながら、胸にジンとするシーンを思いつく。後で書こうと思う。
- 雨なので寒い。体が今ひとつ動かない。左手に緊張を感じた。……左半身不随が酷かった頃には雨の日の外出は大変だった。足は滑る。傘は持てない。同時に二つのことをするのがとても大変なことだと知った。スリッパというのは足の悪い人には履けないものだと知った。エスカレーターの左寄りが左半身不随では不可能だと知った。左半身が悪い人間がエスカレーターに立ってると、隣を駆け上る人に(引っ掛けられて倒されないか)と恐怖を感じるものだと知った。いずれも五体満足な頃には想像も出来なかったことである。
- ものをクリエイトする人間にも、それを批評する人間にも、消費する人間にも大事なものは「想像力」である。他人の痛みを想像することさえ出来ない人間に、小説の出来がどうのこうのと、小ざかしいことを語ってほしくない。
- 筆がかなり楽に進む。コピーを妻にやって貰っているうちにも、もう一枚。
- 午後3時にサンデーサンで光文社のW辺氏と会う。原稿を渡す。530枚まであるので、おおいに喜ぶ。
- 帰宅後も筆は進み続けた。止めた時には、妻・長女・二女は出かけていた。
- 526枚。今日だけで18枚か。まずまずの進み方。長男と夕食を食べにサンデーサンに行く。とんかつと坦々麺の御膳。息子は200グラムのステーキ。中学生は良く食う。羨ましい限りである。
- 帰宅。藤原ヨウコウ先生に電話。一休の進行状況から世間話。
- ぼくが痙攣発作の二週連続発生に見舞われていた頃、藤原氏も体調を崩されていたとのこと。血圧が80くらいまで低下していたとは只事ではない。
- 二月の中旬に魔が走ったのだろうか。調べたら、きっと同じ頃に具合の悪くなった人がもっといたに違いない。
23:37 03/03/06
今日も農耕的に仕事をした。
- 午前7時30分に起こされた。久しぶりに妻に起こされてホッとした。なにしろ発作が近かったり体調が良くなかったりすると、まだ暗いうちに目覚めたり、6時頃にハッと目覚めたりしてしまうのだ。最近、それが多かったのて゛不安だったが。こうして起きられたところを見ると、どうやら薬の増量に体が慣れてくれたらしい。
- 子供たちを送り出してから、コーヒーを飲んで、妻と雑談。一日のうちで、この時間と、夕方の娘とコーヒーを飲む時間が一番くつろげる。
- 仕事を午前10時30分より始めた。
- 午前の郵便で、有馬啓太郎氏より「月詠(つくよみ)」の第六巻が届く。サイン本。偶然、昨日長男が「『月詠』の次のはまだ発売にならないのかな」と言ってたので、とても感謝。有馬さんの絵は可愛いので、ぼくも息子も大好きなのだ。
- 昼食はわけあってタンメン。妻はラーメン。試験で早く帰った長女は親子丼である。昼食後、わけあってブックオフへ。花輪和一の「天水」上巻を買って帰る。花輪先生の中世モノは面白い。「天水」も傑作であった。下巻も是非買おう。しかし、よくこの作品、「アフタヌーン」で連載されたものだなあ。
- 仕事はかどり、とうとう525枚に達す。この長大なる物語は大きく佳境に向かってうねりつつある。様々な次元の神々の、戦禍における出会い。大変なテーマだが、頑張ろう。
- 昨日届いた活きホタテのお礼を又従兄弟に電話。生憎と留守だった。奥さんにホタテの裁き方を尋ねた。ステーキナイフを貝殻にこじ入れるのがコツ。
- 有馬さんにも本のお礼の電話をした。長話。楽しかった。マンガ家さんは話題が豊かなので話が止まらない。
- 約十個もの活きホタテは、全て妻がムニエル風のバター焼きにした。美味しかった。食べ終わったら腹が膨れてきた。貝は凄い。ラムレイのホラーを思い出す。
- せっかく届いたノートパソコンは未だ荷を解かずにいる。色んなことが一段落したら解くつもり。今年は「一休」と「真田」とを交互に出して、その谷間に「異形」とか雑誌をする積もり。仕事のスピードアップのため、こいつを買ったのだ。
- 「真田」二巻用の資料も着々と集まりつつある。短編のアイデアも大分溜まってきた。夜の音を全て聞くことが出来た帝の話とか、生きている牡丹の屏風の話。あるいは化け物たちの連歌会の話など。全て一休モノにしたい。その他、来年は伝奇物の長編を二社から頼まれている。いずれもかつてない面白い作品にしなくては。(それでも怪奇や幻想や戦慄や神秘は忘れず入れることになるだろう。なんたって、ぼくはホラーを書くために生まれてきたんだから)
23:11 03/03/05
今日も農耕的に仕事をした。
- またしても病院。と言っても今回は定期検診である。妻がクルマの鼻先を壊したので、一人でバスで行く。妻は後から来る約束。
- リハビリ科は例によって混んでいた。左腕を中心に機能訓練。診察があったのだが、脳外科の主治医が早めに他の病院へ行ってしまうので、来月まわしにしてもらう。
- 妻と一緒に脳外の外来へ。こちらも混んでいた。わたしに漢方療法を勧めてくれた主治医は、とても人気がある。みんな彼を指名するので中々番が回ってこない。なんか売れっ子のクラブホステスを指名したような感じである。
- やっと番が回ってきた。ところが主治医は来月より駿河台の病院に移るとのこと。ガッカリする。長い付き合いだったのに。
- 血液検査と尿検査。血液採取は検査技師が不慣れなため、動脈に針が達せずただ痛い思いをして中断してしまった。これが見習いの若い女性検査技師だったら「いや。大丈夫です。あっはっは」で済むのだが、オッサンなもので(大丈夫かよ。おいおい)という感じになる。同じ「大丈夫」でも前者はホントに大丈夫。後者はちっとも大丈夫じゃないのである。
- 血液の後で、尿を採取のため、トイレへ。しかし、全然出てこない。殆ど膀胱を絞るようにして少し出した。一瞬、(水をコップに入れて窓から逃げようか)と馬鹿なことを考えるほど出なかった。
- とても疲れて帰路についた。病院なんて通うものではない。
- 帰宅。と、函館の親戚から活きホタテが届く。さらに富士通からFMVBIBLOの2002年冬モデル再装備品が届く。ぼくのノートである。いよいよ手書き原稿と分かれる日がやって来た。現在書いている「一休破軍行」が最後の手書きになるだろう。
- 昼食。妻はクルマの修理に目白へ。休みの長女は池袋。のち、帰宅した妻と合流して、ロサで「二つの塔」を観に行った。
- 二女は友達と買い物へ。長男は友達の家へ。
- 一人になったので仕事をする。ポツポツと進む。大体6枚進んだので、ちょっと休む。甘いものが欲しくなる。お茶の葉を買うついでに甘いものを買う。これをやるから太るんだよなあ。だけど体が欲しているのだから仕方ない。
- 休んでビデオの点検。長男が帰ってくる。彼がパソコンをし始めたので買い物へ。スーパーの帰りにブックオフに立ち寄った。なんと「続夕陽のガンマン」が破格の値段で。(いや、100円という訳ではない)即買う。
- ウチに帰り、暫くして妻と長女が映画から帰ってきた。「二つの塔」、大傑作とのこと。よし。仕事が一段落したらぼくも見に行こう。
- 夕飯の後、急に眠くなってきた。眠る。目覚めたら午後九時過ぎていた。大いに焦って風呂に入った。
- ノートは仕事の区切りがつく週末に荷を解くことにしよう。これからは生産力倍増である。
23:06 03/03/02
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝、目覚めたら午前11時、薬を飲む時間をとっくに過ぎている。これは大変と起きる事にした。
- 晴れていて気持ちのいい日なので家族で掃除。わたしは息子と玄関を掃除した。これで少しは風水学的に「金回り」が良くなったのでは…。あ、無理か。
- 遅い朝食・掃除とイベントが続いたが、もう一つ、遅い昼食で盛り上げた。なんか食ってばかりいる家族である。昔のホームドラマのようだ。
- まだ暖かいので散歩に行く。本日は池袋方面。
- 馴染みのレンタル・ビデオ屋が店じまいしていた。店の前に並んだビデオは一本400円の叩き売り。ここはマニアックな品揃えと、主任だった太った店員の感じがとても良かったので残念である。
- 交差点を渡り、武蔵書店を通って、歩いていけば「ビデオプラザ・シティ」の窓に『貸し店舗』の張り紙。なんとここも、何時の間にか潰れていたのだった。(それにしてもAV専門のレンタル屋が潰れるなんてなあ。これは本格的に不況なんだなあ)としみじみ思う。それともDVDが完全に普及する前の谷間なのだろうか。
- そういえば、15年くらい前にはビデオ競争に敗れたベータのソフトが世間に溢れ、レンタル屋はどこもバッタ売りをしていたっけ。競走に勝ったVHSが今ではDVDに追われていく。栄枯盛衰はこの世の習いとは言え、やはり物悲しいものを感じてしまうのは、こっちも追われる立場、人生のラストスパートに入っているからなのであろう。
- 西池の古本屋に行ってみるも、収穫はなし。仕方なく、丸井の斜め向かいの100円ショップへ。…と、インド産の香料「白檀」を一個だけ発見。良かったア。まだ輸入していたんだ。これが高田馬場に売っていたと教えてくれたのはアルケミスト氏だったが、馬場まで行かずにすんだ。ラッキー。
- 要町方面に戻りつつ、もう一軒の100円ショップへ。こちらでは線香タイプのジャスミン香を買う。と…良い物、発見。
- 十二支の鋳物人形と七福神の鋳物。これは買うしかないっ、と羊(今年の干支)と文芸の神様として弁才天を買う。鋳物でずっしりしているのに一個100円とは、ラッキー。
- ウチに帰る途中で思い出した。確か、ジョナサンの近くにあるビルで、地下駐車場の入り口の左右に、不思議なお札を貼ってたとこがあったんだ。まだお札は貼ってるのかな。貼ってたら、今日こそ道教系か密教系か、はたまたオリジナルなのか確かめてやろう、と思いつつ当該ビルまで行けば、すでにお札は剥がされており、代わりにヒランヤシールをショボくしたようなのが、わちゃわちゃっと貼られていた。なんとなく、悪魔払いを終えて、戦いの場を清めたという感じ。ううむ。わたしの知らないところでも神と魔の戦いが繰り広げられているのであろう。(単に変人のオーナーがインチキ霊能者の口先に乗せられ怪しい真似をしたような気もするが。まあ気のせいであろう)
- 武蔵書店前を通り過ぎ、交差点を渡って、ウチに帰った。
- さっそく白檀を焚いて弁財天の真言を唱え、「おショウネ」を入れて、神棚(というより道教の神壇に近い)に祀る。また神様が増えた。羊の鋳物は玄関に持って行き馬の人形と置き換える。これでぬさってくれると嬉しいのだが。
- (ぬさるとは、ツくとかラッキーになるとかいう意味の方言だそうです。ただし九州の何処の方言かは忘れました)
- しかし、自分の行動を読み返すと、どっかのビルのオーナーのことを笑えないネ。まあ人間とは矛盾の生んだ産物だと言うから、これでいいのだろう。
- ヒランヤシールで、突然、思い出した。ずっと昔にとあるスナックで知り合ったおばちゃんが「わたしは娘がグレてから××教に入信して、ついでにヒランヤにかぶれたの」と言いながら、デカいヒランヤのペンダントを出して見せてくれた。こっちは酔ってたから相手にしなかったのだが、翌朝、ウチで腕時計を見て驚いた。なんと秒針の付け根が中心部にグルグル巻きついていたではないか。(ま、まさか××教のパワーか)と一瞬思ったが、霊能をウリにしている宗教でなし、教祖は確か出口ナオより昔の人だったし、とても腕時計にあだなす宗教とは思えない。あれはきっとおばちゃんがグレた娘を無理やりオカルトパワーで更正させたもんだから、そのムリがぼくに跳ね返って時計をこんなふうにしたのに違いない。お陰で腕時計はパーになってしまった。…ってあの時計は何処に行ってしまったのだろう。証拠が無くなってしまっては、まるであの出来事自体、昔見た夢のような気がしてしまう。
- 仕事は7枚進んだ。とうとう500枚突破。大変焦っている。しかし、ここで書き急ぐと腰砕けな作品になってしまうのだ。焦らない、焦らない。←こんなセリフ、確か『仮面の忍者赤影』で青影が言ってなかったかな。本当か。それも昔見た夢じゃないのか。やばいぞ。記憶が空中分解しかけている。
- 今日はもう寝よう。
23:27 03/02/27
今日も農耕的に仕事をした。
- そろそろ抗けいれん剤を0.5錠増やした副作用が出てきたのだろうか。意気があがらない。集中力も喚起できない。粘着性も皆無である。当然パラノイア性もない。だから、現実が、自分より少し遠く感じられる。そう、2メートルくらい遠くなった感じかな。
- 単に二女の合格で張っていた気が緩んだだけのような気もするが。
- 明日から二女と長男の中学生コンビは期末試験である。勉強しているようだが、大丈夫かな。三人も子供がいるとずっと子育てしているような気がする。
- 昨日・一昨日と別の人から「実年齢よりずっと若く見える」と言われて、ちょっと喜んだが、それって、「苦労が全然身についていない」という意味ではありませんか。ぼくは学習能力が無いのだろうか。と、少し悩んだ。
- 二十代の頃は「若造が」と呼ばれないように老け作りをしていた。お陰で、女子社員に「お好きな音楽は」と聞かれて、「マンハッタントランスファー」と答えたら、「全然らしくないですね。むしろ、似合わないというか」「失礼な。だったら誰の音楽が似合うんだ」と聞き返したら、相手の答えは「北島三郎」だってやがんの。小林旭くらい言えねーのか、このムスメは。(←当時23歳だったこのお姉さんも今では確か40歳くらいか。やだねえ、時間の経つのは本当に)
- 昼食の後、二時間ほど昼寝。のちに散歩。外は寒い。最近、暖かい日と寒い日の落差が厳しい。本屋とビデオ屋とブックオフを一回り。買いたい物・借りたい物いずれもなし。こういうのは不幸だと思う。
- 夕方から仕事を再開。唸りながら、なんとか13枚進める。しかし、緊張感において不満。後で書き直そう。ようやく四百九十枚を突破した。六百枚で絶対に完成させたい。
- テーマの一つは、神の諸相。一休も天皇の子だから「神の血族」なのだ。まあ彼はそれを拒否させられ、自分でも拒否したのだが。南朝復興を企む小倉宮は逆に「神の血族」に生まれながら神になれぬと運命づけられた者である。また伏見宮彦仁王は権力者の思惑で神にさせられた者だ。これだけで三人もの「神」もどきが登場している。そのうえ、古の忘れられた神を蘇らせようとする者たち・神を祭る事を忘れて「まつりごと」に奔走する者たちが出てくる。こちらは「神」の周囲にある人間どもだ。困ったことに、それ以外に、本当の神が何柱か登場する。……まったく何というテーマを選んでしまったのだろう。
- おまけに、もう一つのテーマたる戦さは、現実に迫っているというのに。
- 完成は、あと十〜十四日というところだろうか。気が高ぶる。と同時に、すうっと引いていくのは薬のせいか。それとも、作品が自分の設定した「高み」に達していないせいか。
- 文藝家協会から月報届く。「未来の作家と読者の関係」はクリエイターと沢山の小パトロンになるという意味のことが書いてあった。本当かな。もしそうなら、こちらは出版社と交渉する以外に、読者とも交渉しなくてはならなくなる。ただでさえ交渉事が得意じゃないのに嫌だなあ。それに小パトロンが作家に投資する際、何を参考にするのだろう。まさかチョーチン屋の作ったカタログじゃないだろうな。
- 考えているうちにユーウツな気分になってきた。もう寝よう。
22:31 03/02/26
今日も農耕的に仕事をした。
- 昨日(2月25日)は一日、意気が上がらず。二女の不安が伝染してしまったか、ちっとも落ち着けなかった。それというのも……
- 今日は都立高校の合格発表。二女は「いやだ。きっと落ちてるよう」とか言いながら、なかなか発表を見に行こうとしなかった。
- それでも、追い出すように行かせた。
- 発表は午前10時頃からか。妻と二人でコーヒーを飲みつつ二女よりの連絡を待つ。待つ。ずっと待つ。……ってちっとも連絡を寄越さないじゃないか、あのヤロー。
- 待ちくたびれてケータイで連絡入れたら、「受かったよー」と明るい声。
- バカヤロー。そんな大事なことを、どうして、もっと早く教えないんだあ。
- でもまあ良かった。と、怒る前に力が抜けた。良かった良かった。
- それで、神社にお礼参りに行った。実は昨日など二回も行って「頼みます、どうか合格しますように」と祈っていたのである。
- そしたら緊張の糸がほぐれて、なぜかビデオを見始めた。「4thフロアー」というジュリエット・ルイス主演のサスベンスである。ニューヨークの古いマンションで叔母が階段から転落死した。主人公の女性デザイナーは、「こんなところに住むのはやめろよ」と人気天気予報士の彼氏が止めるのも聞かずに、一人暮らしを始めた。ところが、階下の住人(80歳の老婆という)がしつこく「日常音がうるさい」とドアを叩き、抗議文を差し込み、床(階下は天井)をガンガン叩いてくる。次第に階下の嫌がらせはエスカレートしていき、それは狂気の色を濃くしていくのだった。
- オチで「ほおーっ」と唸った。ちゃんとしたミステリーだったのだ。ゆっくりと、何度も再生・停止を繰り返して見直した。成程。ちゃんと、みんな、辻褄の合う演技をしているわ。だけど、ただ一箇所、納得のいかないシーン(謎)があった。これ、誰か解説してくれないかなあ。
- 仕事は、昨日は10枚進んだのに、今日は2枚しか進まなかった。緊張があるほうが作品は進むのだろえか。
- 「4thフロアー」を見てて思い出したのは、昔、住んでいたアパートあれこれ。たとえば、隣人が酒乱で毎晩深夜の2時に帰ってきて「バカヤロー」などと叫んで自室で大暴れ。挙句にこっちのベランダの窓ガラスを割りやがった。そんなアパート。たとえば、大家が、こっちの日常に異様に干渉する。こちらの生活音に聞き耳を立てている。そんなアパート。たとえば、隣室に高校生が溜まってアヤシゲなことをし続けている。そんなアパート。……地方から出てきて東京で一人暮らしするには、神経を鈍磨させなければならない。さもなければ、たちまちノイローゼになってしまうだろう。
- 「一休破軍行」はいよいよ伊勢に入った。北畠の居館。大神本陣の地下牢に捕虜と共に収容された一休。彼はどう脱出するか。如何にして虚丸と合流するのか。さらにどうやって彦仁王の魂を虚丸の肉体から分離するのか。また伊勢裡宮(りくう)の秘密とは。
- 残り120枚で全て解決させなければならない。さあ、楽しくなってきた。頑張るぞっと。
23:38 03/02/24
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝、突然、ハッと目覚めた。周りはまだ暗い。なんだか発作が起こるような気がしてヒヤヒヤしていたら時計のベル。単に良く寝ただけであったか。
- 夢をぼんやりと思いだす。銃を壁や床に飾った店にいる。店の端に古めかしいラジオみたいな物が展示されていた。(なんだろう)と思っていたら、ナチの軍服を着た男がやって来て、それをいじりはじめた。「これはテレビジョンと通信機を合体させたものだ」と男は言う。良く見れば男はアドルフ・ヒトラーではないか。驚いたぼくの傍らで中学生が片手をあげて「ジークハイル」と叫んだ。
- 嫌な夢だ。嫌な夢は他人に話すと、わが身に降りかからないというので、しっかりここに書き留めておこう。
- 朝から雨。全く意気が上がらないので、ビデオの整理をする。資料映像(『太平記』『花の乱』『鬼の棲む館』『宮本武蔵』全五巻など)をかなり押し入れに仕舞った。
- 雨は霙に、さらに雪に。
- 寒い。コーヒーがやたらに美味い。
- 昼食の後に昼寝。午後四時まで寝つづける。まるでクマである。
- 皮膚科に行き、ローションと飲み薬をもらう。普通なら、その足で書店なりブックオフなりに行くのだが、寒いし雪が降っているのでウチに帰る。
- 自分の非力さをしみじみと感じつつ、仕事を少しする。何もかも嫌になりかける。気を取り直して「お神楽」のCDをかける。癒される。結局、二枚しか進まず。一日、おみくじと易とタロットとトランプ占いをしていた。
23:19 03/02/23
今日も農耕的に仕事をした。
- 朝、宅急便で目覚める。妻に出て貰えば、角雨和八(つのあめ・かずや)氏が送ってくれたビデオ10本。
- なかに、神無月マキナ氏はじめ各界諸氏お勧めの「呪怨(じゅおん)」が入っていたので、目が覚めた。「やったあー」と小さく叫ぶ。
- 今日は義理の父の命日。妻・長女・二女は吉祥寺にお墓参りに行く。元編集者の義父は、「少年少女 譚海」を振り出しに文芸書に移り、田中英光氏の担当として、頑張った人であった。いわば、ぼくなどの大先輩である。昭和20年代の文芸編集者の常として、ちょっと大衆小説を見下したところがあったそうだが、娘(つまり、わたしの妻)にコテンパンに論破されてからはそういうこともなくなり、物分りの良い温和な皮肉屋さんであった。
- 義父のことを思い出すと、同時に浮かんでくるのはKさんである。Kさんはわたしたちの仲人で、阿佐ヶ谷の印刷屋の社長だったが、実は、元鉱山系の業界紙の編集長だった。昭和三十年代には「講談倶楽部」の新人賞に「風穴」という官能小説を送り佳作をとったこともあったという。
- 義父とKさんは「確か、若い頃、井伏鱒二先生のところで会ったことがある」と言い合っていた。
- Kさんは三男が交通事故で亡くなってから酒浸りになってしまい、肝臓を壊して亡くなられた。義父は「俺は特攻隊で生き残った神の子だから簡単には死なない」と言い張って、タバコをやめず、とうとう肺癌で亡くなってしまった。二人ともハードボイルドな生き方を信条にしていた。二人とも「男の沽券」に生きていた。二人とも、そんなものに拘泥しなければ、あと12年は長生き出来たはずだった。ぼくには出来ない生き方をした二人であった。合掌。
- 角雨氏にお礼の電話。長話。楽しかった。近頃、友達に電話するとついつい長話になってしまうのは、人恋しいからなのかもしれない。
- 風邪をひいた長男に寝るように言い、こちらは本を読んだり、ビデオの整理をしたり。
- 昨日、ビデオ屋で一本三百円でビデオが売られていたので、5本も買ってしまったのだ。「カル」「L.A.コンフィデンシャル」「チャーリーズ・エンジェル」「シックス・センス」「4thフロアー」。今日、角雨氏に送って貰ったなかには、昨日買おうか買うまいか迷った「マルコビィッチの穴」があった。ラッキー。角雨さん、有難う。
- 仕事を休む、と宣言しながら、結局、七枚も書いてしまった。一休はいよいよ伊勢へ。かがり・虚丸・ソーケイ坊も伊勢へ。一休の危機。それを救う人物こそ、誰あろう……。(忘れた頃生きる伏線の術)
- 本日、ブックオフに行ったら、(今度チャンスがあったら買おうと思っていたH・K氏の本を見つけた。当然、即買う。なんだか天から真面目に働いているので褒美をもらった気分。本は明日から読み始めよう。楽しみ。楽しみ。
- 昔、500円で買った「神社と霊廟」(小学館)というデカくて重い研究書がここに至ってえらく役に立っている。あの時、腰の痛みを我慢して買って、持って帰って本当に良かった。
- 伏線が忘れた頃に生きてくるのは小説だけではない。現実でも良くあることなのだ。
23:39 03/02/19
今日も農耕的に仕事をした。
- 長男は本日よりスキー教室なので、午前6時に起床。妻に怒鳴られながら集合場所へ向かっていった。
- お陰でこちらも早起きさせられた。(二度寝は辛い)
- 二女も都立高校の試験前日。彼女は本日、ストレス性胃炎で休む。二月はイベントの多い月である。
- コーヒーを飲んでから午前10時30分頃より仕事。なかなか進まない。
- それでも3枚書いたところで昼食。久しぶりに「笑っていいとも」を見たら美輪明宏が出ていた。彼の本の話を先月だったか「本当にあった愉快な話」の
- 『ぬさり道』で読んだのを思い出した。ちなみに、如何にして楽して幸運を掴むか、をテーマにしたこのマンガ『ぬさり道』の作者、森真理(もり・しんり)さんは、噂のコミック『仮面ライダーspirits』の作者、岡枝さんの奥さんである。(←だからどうした、と言われれば返す言葉がない)
- で、『ぬさり道』によると美輪明宏の本の論旨は「金持ちで家庭的に幸せな奴はいない。家庭が幸せな奴は貧乏人である」ということ。いや、そんなことはないのだが、つまり、人間、金も、地位も、名声も、家庭の幸せも、健康も
- アレもコレも同時には手にすることは出来ない、ということらしい。
- ダイアナ妃は美貌と金に恵まれたが愛とか家庭とかには恵まれなかった。高嶋忠夫は稼ぐ息子たちに恵まれたが本人がウツ病になってしまった。小泉は息子が売れ出したら支持率がジリ貧になってきた。こうした現象は何を意味するのか。…人間、そう上手くはいかない、ということらしい。どこかで帳尻合わせがなされるというのである。
- そうか。ウチが貧乏なのは、実に、この、愛のある小市民的家庭が良くなかったのだな。よし。わたしは我が家の繁栄のため心を鬼にして、妻を捨て、子を捨て、……捨てるんじゃなくて、こっちが捨てられるのか、ウチの場合は。
- 午後2時から4時まで昼寝。
- 考えてみると、この何日か光文社の編集者以外から朝松宛に電話が来ないような気がする。
- とか言いつつトーマさんのサイトを覗いたら「ヒトリゴト」の「キュウケイシツ」で鉢合わせしてしまった。ネット上とは言え突然知り合いと会うと、ちと焦ってしまう。これって結構すごい偶然かもしれない。
- 偶然と言えば、昨日、二女が偶然、洗面台の排水口で、わたしが半年前に流した筈の部分入れ歯を発見、妻とピンセットで回収してくれた。お陰でそろそろ買おうと思っていた、その部分の入れ歯を買わずに済んだ。かなりツいていると思う。今度の「一休破軍行」はきっと売れるだろう。
- そう思いつつがんばったら、今日はトータルで11枚進んでいた。やったあ。
23:19 03/02/18
今日も農耕的に仕事をした。
- 発作からまだ三日しか経っていないので、少しずつ進める。午前10時30分より五枚ほどで、昼食となる。
- 光文社のW辺氏より電話入る。金曜までにある程度の枚数を渡すと約束。
- 午後2時過ぎに昼寝。
- …と、長女が帰宅。「椎名町の駅前にあった文房具屋と薬屋が火事になって丸焼けだよ」教えてくれた。「なにっ」と驚いて起きる。そこはぼくがいつも原稿用紙を買っている店ではないか。
- 別に店主が電気コードで絞殺されたのでも、包丁で刺されたのでも、ヤクザに撃ち殺された訳でもないのだが、贔屓の店が火事に遭ったというのは、なんだか嫌な感じである。
- まして昨日の今日だ。嫌なことが連続・関連しているような、ヘンな錯覚に捕われてしまう。
- そうこうしているうちに光文社からゲラが届く。「異形」の短編である。大急ぎで校正・加筆のうえ、ファックスで送信する。
- どんなに苦心した作品でも、自信のある作品でも、ゲラをチェックして自分の手を離れた途端に、自己嫌悪の対象になってしまう。本当に困ったことである。自作を批評で貶されて作家が怒り狂うのは、自己嫌悪に追い討ちをかけられるからなのだ。
- 午後もちょっぴり仕事。のち、井上章一「キリスト教と日本人」(講談社新書)を再読。
- 今回は「真田三妖伝」の今後の展開のメモを取るためなので精読する。これは久留賢治氏に推薦された本である。
- 高野山の奥にネストリウス派の石碑があるのは何故か。ユダヤ人金融業者が日露戦争で神国ニッポンに如何なる貢献をしたのか。拿捕されたポルトガル船で発見された幕府転覆を目論むキャプテン・モロの密書とは。大野治長・森宗意軒・天草四郎・由比正雪・大塩平八郎…謎のリングを繋ぐキリシタンの妖術とは。空前絶後の奇想とスケールで送る伝奇巨編。「林羅山・国枝伸・山田風太郎・半村良・神野オキナの衣鉢を継ぐ新人の登場にわたしは戦慄するしかない。──朝松剣『書評と広告』誌四月号にて熱賛!!!」
- なんて書くと信じる人がきっといるんだろうな。実は、久留さんが前に掲示板で教えてくれたように真面目な教養書です。ケレンもハッタリもありません。だから、↑のような内容は書いてありますが、あくまでも、史実の流れのうえで「このような考えをする者も現れたが、それは歴史読み物的すぎるだろう」なんて書き方になってます。
- でも、ここでこんなふうに紹介したら、三ヶ月か四ヶ月後にはオカ×ト雑誌とかムックとかでしっかり井上章一氏の書かれたことが「実話」として紹介されているんだろうな。
- ああ、やだ。やだ。
- いっそ原田実さんや久留賢治さんと組んで、「炎上寺中三郎」なんて合体ペンネーム作って、明らかにインチキと分かるオカルト本(というかオカルト歴史読み物のパロディ)でも作ってやろうかな。
- ネタは「後醍醐帝・南朝キリシタン仮説」。…自分でタイトルを書いてて何の本やらわからん。でもまあ、そこが歴史読み物っぽくって良いのだろう。
23:02 03/02/17
今日から農耕的な仕事を復活させることにした。
- 生活サイクルを一新させて午前十時三十分から仕事開始。午前中に四枚ほど進んだ。まずは良い調子である。
- ヘルシーな昼食。ちょっと休んで、午後一時二十分に仮眠を取る。
- …と、午後二時三十分頃、帰宅した二女の叫びで目覚める。「大変!! ××さんのウチのそばで包丁を持った奴が人を刺したって」「えっ…。それはこないだのOL殺人じゃ…」と起きた。聴いてみたら、今日の午前中の出来事だという。「なんだよ。また起きたのか」なんて言いつつ、散歩に行くことにした。
- 散歩の途中、銀色の外車がレッドランプを点滅させ、サイレンを鳴らしながら要町交差点を突っ切り、板橋方面にすっ飛んでいくのを目撃した。
- 西池袋の近藤書店で中世史の掘り出し物を探し、「今日はないねえ」なんて独りごちつつ、要町に戻れば、行く手はパトカーが何台も連なり、制服・私服の警官が群れていた。「おや」とか言って立ち止まれば、ゲオの前から武蔵書店前の横断歩道を警官に囲まれて進む男が見えた。男は頭からコートを被り、手錠を付けられていた。男は要町交番に連行されて行った。
- はっきり言って連行される男をはっきりと見たのは、これが初めてである。
- 半ば感動して周囲の状況も観察してしまった。まずは沢山の警官。私服は全員ケータイを当てて誰かと話していた。多分、チームの仲間に連絡しているのだろう。制服は固まっている。笑ってる人もいた。緊張感がない。なんだか撮影が終了したような雰囲気だ。
- ガッカリしてブック・オフに向かう。小一時間ほど店内をウロウロ。で、外に出たら、止まるはずのない所にバスが急停止。「なんだ、なんだ、なんだ」と言ったら救急車がバスの前に止まった。なんと、バスの客が具合が悪くなって、運転手に救急車を呼んでもらったというのだ。客は三十代のがっしりした男性。…滅多に見られる光景ではない…と思う。
- スーパーに行って子供のためにアイスなどを買って、外に出たら、前を凄いスピードで救急車が走っていった。先ほどの救急車とは別のものだった。こっちはかなり切羽詰まった感じ。命に関わる急患か。
- 家に帰ったら、長男がバタバタとやって来た。「大変だよ。要町でヤクザが抗争して、撃ち合いになったんだって。通りにスワットみたいな機動隊が並んでいたよ」
- …とすると、さっきのコートで連行されていた男は抗争の当事者なのか。それとも包丁男なのか。
- 頭の上に「????」といっぱい浮かべてテレビを点けたら、OL殺しの犯人がコンビニで金を下ろしたと言っていた。
- ふと、思った。
- 僅か半径1.2キロ足らずの所で、OL殺人の犯人が歩き回り、包丁を持った男が傷害事件を起こし、ヤクザが撃ち合いをして、バスの乗客の具合が悪くなって、命に関わる病人が出る。←これ、今日の朝から晩までの、たった12時間足らずの間の出来事なのである。(しかもウチの近所だ)
- こんなことって在り得るのだろうか。
- 早速、高橋葉介氏に電話してみた。「あまりにもビンゴすぎて、マンガのネタにはなりませんねえ。むしろ、虹子さんが解決すべき事件なのでは」
- 次に平山夢明氏に電話してみた。「それは、要町を、今日いちにち、魔が走ったんでしょうねえ」…さすがは「超怖い話」の作家。「魔が走る」とは上手いことを仰る。
- ぼくは、一連の事件は、絶対に我が家の前──山手通りの地下に掘られているスーパートンネルのせいだと睨んでいる。地下深くに無理やり掘った大穴が城西地区、池袋付近の「龍脈」ないしは「気脈」を破壊したのだ。おそらく事件は今日・明日がピークだろう。なぜなら、トンネルは明後日には、より目白寄りの地下を掘り始めるからである。
- だから、もし、あなたが山手通りに面した町に住んでいたら、そしてまだスーパートンネルが地下を掘ってなかったら……。悪い事は言わない。掘削工事の前後三日は、遠くに外出なさい。殺人鬼とレイプ魔とオヤジ狩りと暴走族とヤクザが、あなたの町の半径1.2キロ圏内で、たった12時間のうちに連続事件を起こすかも知れませんよ。そして、その被害者にあなたが混じっているかもしれませんからね。(←ここ、大塚周夫の声で)
- 「事件記者コルチャック」のテーマの口笛を聞きながら。
23:55 03/02/16
今日もゆっくりと休むことにした。
- 「平安朝の男と女」服藤早苗(中公文庫)を読む。家父長制の誕生について、とても勉強になった。中世のおっかさんの逞しさは素晴らしい。
- 「日本通史 中世2」(岩波書店)の面白そうな論文を拾い読みした。「鬼と天狗」は新しい論考がなくて寂しかった。むしろ「13〜14世紀」の通史解説がとてもスリリングであった。
- 光文社のW辺氏より電話を貰う。心配してくれていた。感謝。
- えとう乱星氏よりメールを貰う。心配してくれていた。感謝。
- 桑原聡子氏よりチョコを貰う。感謝。
- 掲示板にも、ファンの方々より心配してくれたカキコ。感謝。
- 夜は「あるある大事典」で首のコリの直し方を見た。
- それから、まったくの前知識ナシで「ロング・キス・グッドナイト」を見て喜ぶ。こういうバイオレンス映画は体調不良の時の薬である。どうして病院の待合室に「ゴルゴ13」がいっぱいあるか、ようやく理解できた。
- 主人公のみならず、ワキも、悪玉も、ガキも、まったく死なない。アンドロイドか、こいつはっ、と何度も叫ぶ。特にCIAが予算獲得のために化学兵器をクリスマスに沸くシティで爆発させようとするとか、その犯人役のアラブ人の死体が冷凍されているなんてくだりは陰謀ファンのわたしにピッタリであった。96年のアメリカ映画ね。ふーん。アメリカはそのころからすでにアレの爆破を計画していた訳か。なんてつぶやいていた。
- 観終わった後、感動のあまり、この映画についての情報を仕入れようとネット検索してみる。
- で、痛切に知った。
- ネット情報ってどうしてこうも「客観的」じゃないのか。こっちは製作年代とか製作会社とか監督とかプロデューサーとか主演女優のこと「を」知りたいのだよ。やれ『この作品の脚本は史上最高の値で競られたというが、そうは思えない』だの、『火薬を使いすぎだし、構成に破綻がある』だの、『主演女優が登場時と記憶が蘇った後とでギャップがありすぎる』だの。←こんなこたあ、知ったこっちゃねえんだよ。客観的な記述は出来ね―のか、てめーら!!!!
- でもって、一番、クソなのが、馬鹿の癖に付けてる採点ね。☆いくつ、とか言う奴。お前は淀川長治か。エッ。シライヨシオか。エッ。おめ―は映画評論家なのか。エッ。映画鑑賞と批評に人生懸けてるのか。エッ。
- いや。冷静に考えれば、インターネットなんて個人のぶつぶつがワールド・ワイドに広がった物であった。ちゃんとしたサイト(つまり客観的にして精度の高い情報源)とアクセスしなかったわたしが悪かったのだ。なんのことはない。キネマ旬報のバックナンバーを求めて、ついうっかり「映画ピンキー・デラックス/金髪しめしめ号」を買ってしまっただけの話なのだ。
- 活字で印刷されてることは決して字面通りに鵜呑みにしない。権威なんて誰かの演出した物にすぎない。「今、これが流行ってる」とは、「今、これをはやらしたい」という広告用語である。
- そんなことを肝に刻んだ筈なのにいかんなあ。気をつけよう。
20:29 03/02/15
今日は農耕的に休んだ。
- 2月15日午前2時45分頃、突然、目覚める。左手と左足に緊張。震えが始まっていた。慌てて起きて、妻に「発作がまた出た」と訴える。
- 妻が着替えて、救急車を呼ぶ一方、こちらは薬を出した。抗けいれん剤を1錠、舌の下に入れて自然に溶けるのを待つ。
- 救急車の音が聞こえてくるころには、自然に痙攣が治まってくる。意識はクリアである。そのまま立ち上がり玄関へ。自分でストレッチャーに乗る。
- 救急隊は拍子抜けした様子。受け答えも普通に出来る。
- それでもN大I病院へ。所要時間約10分。病院にて痙攣止めの注射。CTスキャン。様子を見るが、発作は再発する気配がない。
- とりあえず、補助薬を貰い、清算。
- 帰ろうと外に出たら、タクシーは一台きり。おまけに運転手は仮眠中。窓を叩いても起きない。仕方ないので病院に戻り電話でタクシーを呼ぶ。妻が見ていたら仮眠中のタクシーを叩き起こして乗っていった女性がいたそうだ。おきぬけの運転手のクルマに乗るほどの勇気は妻もわたしも持ち合わせていない。
- やって来たタクシーに乗って帰宅。夜明け前の午前4時50分。わたしも妻もくたくたである。帰宅するや否や眠った。
- 翌朝、午前9時30分起床。大急ぎでクルマにて病院へ。主治医のいてくれる日は土曜を逃すと、次は来週の水曜である。
- 脳外科は比較的すいていた。
- 「一年間使ってきた薬に対して体が解毒作用を持つようになったのだろう。そのため、排出されてしまい、抗けいれん剤の血中濃度が減っているものと思われる」との診断。当面、現在の投薬を続けようということになる。再び発作が起きる可能性は少し高いが、体が薬の増量を受け入れるまでは仕方ない。
- 今回、発作が起きて、一週間目にまた発作が出たので、慌ててしまった。こんなのは頭蓋骨の一部が入ってない時以来である。
- ともあれ、帰宅後、たっぷり睡眠をとった。明日(日曜日)から、また、少しずつ仕事を始めよう。
- それはともかく早朝に帰宅するタクシーの中でひとつアイデアが湧いた。発作は脳味噌をこねてくれるらしい。…しょっちゅうあるのはお断りだが。
0:04 03/02/15
今日も農耕的に仕事をした。
- 二月十二日に病院に行ったのだ。発作の時の血液検査の結果などを教えてもらい、今後の治療の方向を検討するためだった。
- そしたら、土曜において薬の血中濃度が5パーセント代と、かつてない低さだったと教えられた。どうしてだ!?
- 仕方ないので今後は寝る前に、抗けいれん剤を1錠の半分だけ多く飲むことになった。量的には「癲癇症を持った小児」の一日三回のうちの一回分にすぎない。大人にとっては微々たる量である。…の筈なのだが。
- 十二・十三・十四日と飲みつづけていたら、だんだんボケてきているのを自覚した。苦労して長編の続きが書けるような頭のモードに切り替える。
- 本当は今日の午後四時に光文社のW辺氏に会って原稿を渡す約束だったのだが、無理を言って、月曜に日延べしてもらう。アタマが少し元に戻ったので、必死で書き進む。とは言っても書き直して、まだ四枚。集中力は格段に低下。何か聞こえると「ん、何だ。何だ。ん?
ん?」と飛び出して行き、落ち着きのないこと、クマのごとし。薬は本当に恐ろしい。こんな意識レベルになってさえ執筆モードに(時間こそかかったが)切り替えられるのも、「慣れ」であろうか。薬より自分が怖い。そのうち「薬・持病・発作との戦い」というノンフィクションを書こうか。まあ買ってくれる版元なんか無いだろうが。
- 昨日の殺人事件は次第に全体像が明らかになりつつある。
- 被害者は二十四歳の独身女性。オートロック式の1DKに住んでいた。殺されたのは12日か?
発見したのは会社の同僚で、無断欠勤を不審に思い、会社から十分ほどのマンションを訪ねたという。殺害方法は電気コードで首をぐるぐる巻きにしての絞殺。
- 犯行現場は我が家から徒歩十五分ほど。子どもたちは「××君のウチの裏」とか「◎◎さんのお店の向かい」とか話している。すさまじく近い。完全に生活圏内である。
- ところで、事件の二日ほど前、二女の友達二人が自転車に乗っていたら、通りすがりの長髪男(推定20代)に突然蹴飛ばされ、自転車を倒されて、さらに友達の一人が殴られるだか、蹴られるだかした。これはウチから一分と離れていない場所の話。まさか、OL殺しとは関係がなかろうが、最近、ウチの近所ではピッキング強盗・放火魔・痴漢・粗暴犯・ひったくり・レイプ未遂が連続している。さらに暴力団の事務所もある。不良外人も歩いている(←当然、白人である)。と、こう書くと、まるでブロンクスに住んでいるようだ。
- こんな環境でも平気なのは、地域の人たちと密接に付き合っているからであって、けっして抗けいれん剤の増加のせいではないのである。
0:01 03/02/14
今日も農耕的に仕事をした。
- 本日は松尾未来の誕生日。わたしからのプレゼントは岩波の「日本通史 中世2」。中世における女性と家の論文が収録されている。他にも鬼と天狗に関する論文もあり。
- 家族でささやかな誕生パーティ―。プチケーキとコーヒー。夜になって近くの花園酒家で上海料理。安くて美味かった。近所にこういう店があると助かるわい。
- ……などと、のんびりと家族で時間を過ごしていたら突然、午後十一時四十五分頃に電話のベルが鳴った。「こんな夜中に誰だ」とか言って取ってみたら二女の友達からだった。
- ウチから歩いて15分くらいの距離のところ(千川という街)で、二十四歳の女性が死体で発見されて、犯人は現在も逃走中とのこと。
- なんだか子どもたちがソワソワしている。殺人犯がこの辺を歩いているのだから当たり前か。
- 考えてみたら夕方、まさに殺人のあった近くを、わたしはケーキを買いに行っていたのだった。警察のヘリが低空を何度も旋回していたが、ひょっとすると逃走者を見張っていたのか。
- しかし、あれから七時間も経つのに未だに捕まっていないことになる。何をしているのか。
- 日本テレビの深夜ニュースで報道されていたらしい。子どもたちはメールで情報をヤリトリしている。
- 考えてみるとえらい場所に住んでいるのかもしれない。
23:01 03/02/11
今日も農耕的に仕事をした。
- 二月八日午前三時、左手の痺れで目覚める。あまりに痛いので不安に思い、薬を飲んで寝た。
- ところが午前七時半、左半身の痙攣で目が覚めた。一年二ヶ月と二日振りの発作。やっぱり痛い。苦しい。隣で寝ている長男を起こし、妻を起こしてもらう。救急車を呼んでもらった。意外に早く来てくれた。急いでN大I病院へ。土曜なので主治医は休み。若い医者や学生は右往左往するばかり。妻はウンザリしつつも、わたしの痙攣への対処を説明する。危うく入院させられるところであった。点滴を二種。四時間ほど眠る。
- 左半身に力が入らないまま、妻が家に戻って乗ってきた車で帰宅。休む。しかし、月曜が短編の締め切りだと思い出す。仕事をしようとして妻と口喧嘩。
- 土曜は兎に角休んで、日曜に、少しずつ仕事。なんとなくイライラ。妻にも電話した母にも、「なにを怒っているの」と指摘される。一人でカリカリしている自分に嫌悪感。
- サイトの掲示板にみんなからの励ましの書き込み。おもわず涙が浮かぶ。
- 月曜は朝からこつこつ仕事。午後二時半頃、完成する。六十九枚。ちょっぴり自信作。原稿を妻に読んでもらって、少し眠る。
- 午後五時、光文社のF氏に原稿を渡す。喜んでもらえた。人に仕事のことで喜んでもらうのは嬉しいものである。
- 帰宅後、「一休破軍行」を一枚書く。早めに寝た。
- 午前十時起床。仕事をちょっぴりする。資料調べと古本漁り。
- 午後二時過ぎに夜生奇久(やせい・よしひさ)こと角雨和八(つのあめ・かずや)氏から電話。角雨氏は官能劇画家で、朝松の古い友人である。妻のサイトを見て、わたしが発作を起こしたと知り、急いで連絡してくれたとのこと。持つべき者は友、と鼻にツンと来る。今回、有馬啓太郎氏からもメールを頂いた。心配かけてごめんなさい。
- 「武蔵」を録画したテープをDVDに落としながら、ハードをいろいろいじってみた。なんとなく使い方が分かってくる。そしたらF氏にあげたディスクに何にも入ってなかったのでは、という疑問が沸き起こる。あわわ。慣れないと機械ひとついじれないね。
- 「一休」の続きを書く。三枚ほどで、休む。必要があってブックオフで「大鏡・増鏡」の学参を買う。サービス券を使ったので百七十円なり。安い。
- 発作があるとニ三日ほど軽い偏頭痛がして、物忘れが出てくる。
- 高橋葉介先生に頂いた「恐怖症博士」を読み直す。何度読んでも面白い。ショック味やブラック・ユーモア味やホラー味だけでなく、人間ドラマがしっかりと描かれているので再読して面白い。
- さあ、風呂に入って、寝よう。明日も農耕的に頑張らなくては。
1:33 03/02/01
今日も農耕的に仕事をした。
- 「一休破軍行」はいよいよ400枚を越えて伊勢国へ。ミディアムクライマックスに向かおうとしている。伊勢に入るや否や、一気に怪奇幻想の世界が開く予定である。ジザイ・ジユウ・クシラの語の謎が解けるのだ。
- とか何とか言いつつ、午後4時に、サンデーサンへ行った。光文社のW辺氏と会う。原稿を出来上がったところまで渡して、打ち合わせに入る。来年は光文社は創立60周年とのこと。35周年とか40周年とか思っていたが、そんなになるのか。どうも数字に関する記憶がどんどん衰えているようだ。まあ、数字に限らないが。
- 「プロフェシー」はまだレンタル・ビデオに降りてこない。気になって妻に調べてもらったら、三月下旬にレンタル開始。現在はDVDのみ発売中とのこと。別に買うほどこだわってる映画じゃないからいいっすよ。
- でも、気になるのはソニーマガジンズ社から出された南山宏氏訳の文庫を読んでしまったから。この本、ぼくは国書時代に、「モスマンの黙示」の題で編集している。作者のジョン・A・キールのファンなのだ。彼の旅行記「ジャドウ 東洋の黒い魔術」(光文社)は中学時代に友人に借りて興奮したものだ。なにしろこの本で「ジャドウ」なる語がペルシア語圏において「黒魔術」を指す言葉だと初めて知った。日本語の「邪道」も多分、同語源であろう。
- ただし、「プロフェシー」は東洋旅行記ではない。超自然現象のルポルタージュである。タッチはホラー小説。それもメタフィクション・タイプのホラー小説のようだ。1968年、オハイオ州の片田舎ポイントプレザンスに怪現象が頻発し始める。UFOの跳梁・ポルターガイスト・幽霊・モンスター・MIB・電話や手紙の混乱・怪音・霊能者の予言・発火現象・ペットミューティレーション(ペット虐殺)…。まるで『ムー』の目次か、トンデモ本のカタログのようだ。こうしたことが全部まとめて短期間に田舎町に発生したのである。しかも、それらには、何処か──あるか無きかの関連性が感じられたのだ。やがて、人々が、3メートルもの空飛ぶ怪物モスマン(蛾男)を目撃した頃、ついに恐るべきカタストロフィが街を襲う。すなわち、街に架かっていたウェストヴァージニアとオハイオを繋ぐ橋、シルバーブリッジが崩落。多数の車が河底に落下して、多くの人々が溺死していったのだ。
- この本はぼくに多大なる影響を与えている。
- キールの主張する「超地球人説」は比良坂の「逆宇宙理論」に。作者自身が登場するメタフィクション性は「黒衣伝説」に。言及される怪現象は、たとえば淡島春夫が体験する恐怖に。もちろん、そのままではなく、様々なアレンジを加えているのだか。
- 今回、どうして「プロフェシー」(『モスマンの黙示』)がどうしてぼくの心を魅了するのか、改めて考えた。
- どうやら、ヒューマノイドが空を飛んでいる、というイメージらしい。
- この本には様々なタイプの空飛ぶヒューマノイドが紹介されている。蝙蝠の羽を持った紳士。ベトナムの空飛ぶ女。天使のような姿のヒューマノイド。
- 昨年の暮れ、テレビ朝日の「こうして世界は騙された」で、メキシコのフライング・ヒューマノイドの映像が紹介された。高度300メートルほどの高さをキラキラ光る服を着た人間型の「なにか」が飛んでいるというものだ。
- 久しぶりに感激した。たとえ、あれが観測気球でも、人間型のアドバルーンであっても、ぼくは感激した。何に? この無味乾燥な現実も、まだ捨てたものではない、という実感に、である。そうだ。百万人の常識家と一千万人の冷笑家が何と言おうとも、ぼくは待ち続ける。
- ある日、空を見上げたら、そこにモスマンが飛んでいる日を。
- ロマンが現実化する一瞬を。
23:54 03/01/30
今日も農耕的に仕事をした。
- 東京創元社のM原氏と会う。打ち合わせなど。
- そういえば、昨日、久しぶりにブックオフへ行ったら岩波の新古典大系がたったの百円で売っていた。「俺のだ。全部俺のだ」と言いたかったが、なにしろ重い。仕方なく「舞の本」「保元物語・平治物語・承久記」他2冊、合計四冊だけを持って、あとは後日買おうと思った。ところが後日(つまり今日)行ってみたら、良いものは何も無かった。しくしく。人生はこんなものか。仕方なく「B型平次捕り物帖」(東京創元社)と今谷明の本と、キールの「プロフェシー」(『モスマンの黙示』)を買った。帰りにコンビニに寄り「本当にあった愉快な話」の今月号を買った。相変わらずこの雑誌は面白い。家で読んで声をあげて笑った。
- 「一休破軍行」はようやく四百八枚まで来た。意外な展開が始まる。
- M原氏に、ホラー長編のアイデアを聞いてもらい、有益な助言を貰った。ううむ。あと一年か二年ほど暖めて、発酵させると良い作品になりそうだ。
- DVD「イジー・トルンカの世界」全三巻と「チェコアニメ傑作集」Tを手に入れた。家宝なり。今後、ちびちび見ることにしよう。トルンカの人形はまさにファンタジー世界で生きている。表情が変わらない人形なのに角度や光線で豊かな表情が出ていた。「これは日本の能面の影響か」などと松尾未来と話した。
- 長男の友人が、わたしのHPを見た、と話していたとのこと。いよいよマズイことは書けないな。(まあ、書いてないけど)
- もうすぐ二女の都立入試。落ち着かない。そう言えば、ジュヴィナイル小説で進路指導のシーンは滅多に出てこない。「私闘学園」では学習指導要領まで目を通して、生活面や授業面も描いた。ただのバカ小説だと思ったら、大間違いなのである。今なら、一条直子の母親がPTAの役員になって連絡報を作り近所に配る、というだけでギャグ小説が書ける。ただし、この作品が読者の共感を得るには、あと二十年必要であろう。(なんたって何処がリアルで何処が面白いのか、高校生の子どもを持っていて、しかもPTAの役員をしたことがなければ金輪際分からないからである)ああ。親も大人もいない時代。PTAなんて四十年前のマンガの「なんですかっ、キイッ」的なイメージしか持たない連中がジュヴィナイル学園小説を書いてるのだからな。どんどん現役中学生・高校生が離れていく筈である。やがてジュヴィナイル学園小説なんて、つい二十年くらい昔にあった、トシヨリがバンカラな一中生の生活を描いたような物──つまりトシヨリの為にトシヨリが書く青春小説になってしまうのだろうな。
- そういえば、娘たちが「最近の三十代の教師はすぐにスネルので付き合いづらい」とヌカしておった。まあ、こちらに言わせてもらえれば、「最近の中学・高校生はまるで保育園児なので付き合いづらい」のだが。
0:29 03/01/27
今日も農耕的に仕事をした。
- 午後七時近くになってようやくエンジンがかかってきた。
- とりあえず午前零時ちょっと前に終わる。内容は、大和国と伊勢国の国境付近。北畠の軍勢が攻め寄せてきたために大変な恐慌状態。逃げ惑う群衆。一休・虚丸・かがり・ソーケイ坊・鴨分明すべてはぐれてしまう。モブシーンを書くのが楽しくなってきた。
- 結局、本日は、13枚進んだ。昨日休んだから、差し引きゼロというところか。今月末〜二月アタマには完成させたい。二月には「一休」の短編を書く約束である。こちらは完全なホラーにする予定。まだ若い一休が美濃国で恐ろしい世界に踏み込む話。
- 「真田三妖伝」の続編は、二月下旬頃より書き始める予定。
- 仮題は「真田幻妖伝」。今回は、伊豆の奥地がクライマックスになり、佐助と佐久夜姫とのロマンスを縦糸に、立川流の秘儀が横糸になるだろう。
- もっと女性の支持を得られるかと思ったのだが、蓋を開けたら、男性が支持してくれた。昔なつかしいチャンバラの味があるからだろうか。
- 妖術モノと忍者ハンター物との融合を書こうと考える。白凰坊v.s.魔術戦士の時代劇版。白凰坊は時空を越えた存在なので、時代劇もアリなのだ。大体、彼は矛盾と混沌の権化である。「凰」とは牝の鵬なのに、白凰坊などと名乗っていること。悪い奴なのに白ずくめなこと。嘘つきなこと。←こういう点が彼の属性・エレメント・正体を暗示しているのである。
- 今年は昨年よりも「ほんの少し」飛躍したい。そのためにも、病気で出来なかった企画を進めよう。
- 応援してほしいな。
0:28 03/01/26
今日は農耕的な仕事を休むことにした。
- 「ダークシティ」を久しぶりに地上波で見た。
- 何度見ても「マジカル・シティ・ナイト」「夜の果ての街」とイメージがそっくりなのに驚いてしまう。
- 初めて見たのはビデオだった。見終わった時、心底、「夜の果ての街」が完成していて良かったと感じた。
- 日常のキャスティングの絶えざる変更。非在の町並み。いつも感じる何者かの干渉と悪意。夢と記憶と時間の不確かさ。偶然さえコントロールされているような感覚。──現代に生きていて一度でもこうした感覚に襲われたことがないとしたなら、その者は余程に鈍感か、想像力や感性が幼い頃より殺されていたのに相違ない。グルジエフの言うオートマトン。「生きながらにして死んでいる者」である。
- 「マジカル・シティ・ナイト」には、実はかなり綿密な裏設定が存在する。
〈向こう側〉が我々の住んでいる世界であることは「第五巻 ベンを探せ」で明らかにしたが、これで問題が解決した訳ではない。読者諸君は以下の疑問を感じた筈である。
- それでは〈こちら側〉は何処に存在するのか。
- どうして人間と妖精・怪物・悪魔等が共存するのか。
- どうして〈こちら側〉と〈向こう側〉とは行き来できるのか。
- 誰が、何時、何のために、どうやって、シティを作ったのか。
- ベンは誰なのか。メア市長は何なのか。どうしてシティにいるのか。
- 今回、「ダークシティ」を見終わって、「よ、良かった。シティの謎には抵触していなかった」と胸を撫で下ろした。
- どこかの版元が「是非とも」と言ってきたら、完結(解決)編まで書いても良いが、それには、義仲さんが絵を担当することと全三巻の大長編でやること。そしてスーパークエスト版を復刻することが条件である。
- 以上の条件を満たしてくれるなら、すぐにでも書き始めよう。……って言ったってこの不況じゃ、到底、何処の版元も「フン」って鼻で笑うよなあ。
0:33 03/01/23
今日も農耕的に仕事をした。
- 長男は一晩でインフルエンザが治ってしまった。体育系おそるべし。
- DVDの録画方法をマスターしようとマニュアルを読む。どうも良く理解できない。構成と編集が良くないのだろう。もっとツカミを考えてほしい。校閲的にも突っ込める部分がある。家電メーカーは失職した百科事典や学術書の編集者をマニュアル担当に雇うべきであろう。
- 作品は午前中より何度も書き直した。なんとか、351枚まで書き上げたら午後11時になっていた。疲れた。
- 二女は23日、私立高校の受験。14年間の人生で初めて彼女が体験する試練である。三月生まれでチビだったのに、負けん気とプライドだけは人一倍の彼女が、今後、一体何回、試練をくぐるのだろう。と書いていて、そういえば、随分前に「モーニング娘。」のオーディションに落ちていたことを思い出した。倍率や困難さからいって高校受験など、あれに比べたら大したものではない。
- おそらく現在、モー娘。のメンバーになることは直木賞をとることよりも難しい(ここは、ムズい、と言うべきであろう)のではなかろうか。
- そういえば、いま話題の女優シバ●キ・●ウは、長女の中学と高校の先輩である。現在も要町付近に住んでいるそうだ。ダ・●ン●のイッ●と同棲していて、近くのマクドに出没するという噂がある。要町はロケに使われる廃校があるせいか、はたまたギョーカイ関係者が多く住むせいか、ゲーノー人とかギョーカイっぽいヒトを良く見かける。まあ、どうでも良い事なのだが。←最近の芸能人は分からないのだ。
- 本日より本格的に長男と並んで眠ることになった。こいつ、寝言がうるさいんだよなあ。寝相は良いんだが。まあ、こっちも寝言とか寝歌とかで五月蝿いというからオアイコかな。
22:49 03/01/21
今日も農耕的に仕事をした。
- 友達から聞こえてくるのはインフルエンザの脅威ばかりである。今年のインフルエンザは三種類あって一番タチの悪いのが腹にくるものということだ。
- つまり、年末、わたしが七転八倒した種類である。こいつは胃に激痛が走りあまりの痛みで眠られないほど。初期症状は喉が少しイガイガする。
- 対処療法は風邪薬(抗生物質)と胃薬を併用すること。三日ほど安静にして休むこと。とにかく体を温めること。突然治っているのである。
- 飯野氏は熱が出て四日も休んでいたとのこと。彼は胃ではなくて熱にきたらしい。現在は治ったというが、他の種類に気をつけなければならない。
- そんなことを言ってたら、とうとう長男がクラスメートに伝染されたようである。夕食中に胃の痛みを訴える。慌てて薬局に胃痛の薬を買いに行った。午後10時を過ぎてもやっててくれる薬局は有難い。ここは子どもたちの紙オムツを買った薬局だ。「救急車を呼んだほうが良いですよ」と、おばさんに勧められる。兎に角、薬を飲ませて長男を休ませた。救急車は子どもが苦しみだしてから考えよう。なに、わたしは救急車についてはプロである。慌てる必要はない。(とか言ってるうちに彼は眠ってしまった。お休み)
- 思えば、1995年も、悪性のインフルエンザが大流行した。わたしは脳にウイルスが浸入されて生死をさまよった。近所のお肉屋の女将さんは脊髄に入って下半身不随になった。今日聞いた話では知り合いの評論家は昨年、心臓にウイルスが入り、心筋がやられて、危うかったそうである。これからウイルスが体内の中枢に侵入して生死の境をさまよい、なんらかの後遺症が残るケースがますます増えるだろう。
- 思えば、明治末から大正時代に大流行して、何万人もの生命を奪った「スペイン風邪」も、こうした悪性のインフルエンザだったのに違いない。ことによると、インフルエンザ・ウイルスは何十年に一度か突然変異を起こし、今回のごとく人類を篩(ふる)いにかけてきたのかもしれない。
- そういえば室町時代の記録を見ると、やはり十何年かに一度、謎の病が大流行して京の大通りに死骸が積み上げられている。学者はコレラだとか、風疹ではないか、とか勝手な当て推量を言ってるが、わたしは断言しよう。悪性のインフルエンザである。室町時代、人々は時計代わりに鶏を飼っていた。この鶏のインフルエンザ・ウイルスが突然変異して人間に伝染したのである。これは現在の香港型インフルエンザ・ウイルスが、鳩、もしくは渡り鳥の罹る風邪のウイルスが突然変異して発生したもの、という説を聞いた時にピンときた。しかし、わたしがこんな説を唱えても誰も耳を傾けようとすらしないだろう。しょうがないから、いずれ「一休」モノでアイデアとして使うとしよう。
- ちなみに民家で鶏を飼うことを厳禁したのは、かの暴君足利義教である。かれを乗せた輿が大路を通ろうとした時、民衆が闘鶏に興じていたため、通れなかった。怒った義教は鶏の飼育を禁じ、破った者を死罪にしたのだった。
- しかし、そのお陰で、彼の治世下では、流行り病が殆ど発生していない。暴政をとるか、インフルエンザの大流行をとるか。
- なんだか小泉改革をとるか、不況地獄をとるか、という現代の政府の主張みたいである。いずれ大衆に「どっちも御免だ」という選択が許されていないあたり、室町=現代という感をいっそう強くしてしまうのだが。
- 疲れているせいか、本日は、書き直して、338枚まで。進まないと、つらい。
0:30 03/01/21
今日も農耕的に仕事をした。
- 日曜の午後から突然に鼻水が止まらなくなった。
- 藤原ヨウコウ氏から電話をもらい、話している最中、鼻水が垂れてきてティッシュでかもうとしたら電話を切ってしまった。なんてこった。
- そこでホカロンミニを胸に抱いて寝たら今朝は治った感じがした。それでも用心のためにドクター安田の許へ行った。喉は異常なし。どうやら風邪ではなくてアレルギー性鼻炎か、花粉症だったようである。
- 喜んで妻とコーヒーを飲み、仕事に向かう。
- 調べ物。十一面観音と本地垂迹説と伊勢のこと。
- …と、なんとこの三つを結ぶ太いパイプが現れた。信じられない。彦仁王が足利幕府に幽閉された若王子(にゃくおうじ)社の熊野大権現は本地すると十一面観音。伊勢の祭神たる天照大神が本地すると十一面観音になる。しかも、北畠満雅の居館があった伊勢国の多気(たけ)には、これまた十一面観音を秘仏として祭った寺院が存在していた。
- 中世における十一面観音の役割とは。また、それと「中世日本紀」との関わりとは。
- 今回の「一休」のテーマは、神と人と戦さ。それゆえ様々なタイプの神が現れる。神にさせられた少年。自分が神であることを忘れたモノ。神になろうとした武将。神に近づこうとした男。偶然にも神になってしまった男。神になる可能性を拒否した男。最後の男は言うまでもなく一休である。
- 伝奇性を前面に出した作品だが、そのために一休が沈んでは困る。工夫しなければ。
- 伝奇に力を入れると、俄然、ホラーが書きたくなる。
- という訳で、333枚まで進んだ。目標は一月末〜二月初旬完成。頑張るゾッ。
0:28 03/01/17
今日も農耕的に仕事をした。
「吸血蛾クレア」を見てたら、東京創元社のM原氏より電話。ウチのサイトの「日記」を読んで電話をくれたと言う。「狩人の夜」のこと。なんとこの映画の原作の日本語版は創元から出ているそうで、編集したのはM原氏だというのだ。そう言えば、ずっと前に教えてもらってた、と思い出した。で、原作の話をあれこれと。スティーヴン・キングが映画版が大好きだということ。原作者が監督のために絵コンテ(というよりイメージ画)を描いていること。やはりこの作品のエッセンスはキングに重要な影響を及ぼしていたこと。主人公が唯一心を許す船着場の爺さんこそ、キング作品に欠かせぬ「じいさん」キャラの原型(たとえば『シャイニング』のテレパシーじいさん)であろうこと。などなどを楽しく語り合う。電話を切ってから、すぐに、妻が帰宅。偶然、書店に行ったら「狩人の夜」の原作を見かけ、石上三登志氏が解説しているので買おうと思ったが、なんとなく、この次にしよう、と思って帰ってきたとのこと。そういう訳で「狩人の夜」が朝松家のミニ・ブームです。
あらすじは簡単。
銀行強盗をして一万ドル盗んできたパパは、ぼくに「妹を守れ。絶対に金の在り処は言うな。男の約束だ」と言って警察に捕まった。パパは死刑を宣告され、刑務所に送られた。刑務所で偶然、同室になった車ドロボウは、実は牧師気取りの変質者で、もう20人以上、未亡人を殺している奴だった。パパは夢で魘されて一万ドルのことを口走ってしまった。それを聞いたニセ牧師は自分の教会を作るため、釈放されるや、ぼくの町にやって来たんだ。そして、あろうことか、ぼくのママに言い寄って結婚してしまった。ニセ牧師は、ママがルスの時を狙ってぼくや妹に「金は何処だ」と迫ってきた。牧師の正体に気が付いてママは喉を掻き切られ、クルマと一緒に川に沈められた。今度はぼくと妹の番だ。ああ…。でも町の人たちは誰もあいつの正体に気がつかない。そして、ぼくは妹をつれてあいつの魔手から逃げ回る。…
うめずかずおが「ママが怖い」とか「へびおばさん」なんかで得意にしていたパターンだ。
チャールズ・ロートン監督の映像が素晴らしく美しい。
特に川底で金髪を揺らせているママの死体は、感動するほどの美しさだ。かつて「ツイン・ピークス」のローラ・パーマーの死体が映画史上最も美しい死体だと言われたが、これに比べたら、ただのゲテモノである。
全体がシャルル・ペローの、残酷な御伽噺みたいに演出しているのも、見事な計算である。
そして、ロバート・ミッチャムの牧師!!
左手の拳に「憎悪(HATE)」、右手の拳に「愛(LOVE)」という刺青をして、黒い帽子を被り、黒いタイを締めて、ダークスーツで、賛美歌を口ずさみながらやって来る。
こいつは明らかに「ニードフル・シングズ」のガラクタ屋の縁者であり、「呪われた町」の、深夜に引っ越してきた奴の仲間である。
ミッチャムのふやけたような顔と長身、がっしりした体つき、そして、取りつかれたような目つき。両手を前にして子どもを追いかける姿は、完全にモンスターである。
いやはや、正月早々、大変な映画と出会ってしまった。
レンタル・ビデオ屋の隅っこで見つけたら、悪いことは言いません。すぐにお借りなさい。
近々に原作を読んでみよう。
そして感銘を受けたら、また、ここに何か書いてみたいと思う。
おっと。
本日は7枚進んだ。
明日、出来たところまで、光文社のW辺氏に渡す予定。
0:50 03/01/16
今日も農耕的に仕事をした。
- 本日はリハビリの日。久しぶりなので、とても疲れた。
- 病院で小耳に挟んだ話──
- 最近、幼児虐待で、脳外科に運ばれたり、外科・小児科などに、子どもを連れてくる親が増えているとのこと。五体満足に生まれながら、親に頭を殴られたり、床に叩き付けられたり、揺さぶられたりして、甚大な後遺症を残す体になってしまった子どもが多いのだそうだ。
- 「だから、最近の親は」と言いそうになった。が、帰宅して「狩人の夜」という映画を見てみたら幼児虐待が1920年代のアメリカでも深刻な問題になっていた、と知った。当時のおばさん(ピューリタニズムの権化)が「だから最近の親は」と言いかけていた。当時の親に虐待された子どもは、みんな第二次大戦を体験することになるのだなあ。……「損な世代」と呼ぶには、なんか腹立たしいことである。
- 仕事は15枚。書き直しと、書き足し。すでに315枚を越える。いよいよ伊賀を越えて、伊勢に入る。果たして「伊勢裡宮(りぐう)」は伊勢のいずこにあるのか。楽しみ。
0:20 03/01/15
今日も農耕的に仕事をした。
とにかく立ち上がりが悪くなってきた。
「狩人の夜」を半分見る。
ロバート・ミッチャムの変態牧師が怖い。サイコ物。良く出来たサスペンスである。影の使い方が良い。人物設定はスティーヴン・キングを思い出す。
机に向かったが、なかなか仕事にかかれず、トランプ占いだの、タロット占いだの、易だの、おみくじだの、ずっとやっていた。今年は去年より良い年になりそうである。しめしめ。
と書いていて、はっとした。
(どうしてウチにはこんなに色んな占い道具があるのだ)
確か、昔は本格的な筮竹占いのセットまであった筈である。まったく作家をしているのが不思議なくらいだ。
まるでプロの占い師ではないか。いや。魔術師かな。
そんなこんなで、ようやく、夕方に書き始めた。書き直し。かなりサスペンスが効いてきた。良い調子である。きっと「狩人の夜」を見たお陰だろう。一休とロバート・ミッチャムとがこんな所で出会うとはロートレアモンもご存知あるまい。10枚書いて、休む。300枚楽に越えた。いよいよ後半部である。
東京創元社に電話。今年も宜しくお願いします。と媚を売る。
朝日ソノラマに電話。逆宇宙ハンターズとレイザースが諸般の事情で必要になりました。余ってる本を下さい。と無理をねだる。
祥伝社に電話。
「真田三妖伝」に付けたクロスワード・クイズの応募が集まってきたという。
なんと最少年齢は15歳(中学3年生)//最年長は70歳。
20代の大学生あり、40代の教員あり、30代の主婦あり、50代の公務員ありと年齢分布が広くて、とても良いとのこと。つまりポピュラリティーを持った作品なのだ。よ、良かった。それでこそ頑張った甲斐があった。自分の方法論が間違っていなかったと、自信を強めた。
「妖臣蔵」で得た手ごたえが少しずつ実作に花開いているようで嬉しい限りである。
0:13 03/01/14
今日も農耕的に仕事をした。
なかなか立ち上がれないのは、午前11時まで、遅寝していたせいだろう。
昼食と兼用の朝食を食べ、長女・二女・妻とコーヒーを飲んだ。のちに机に向かうが、仕事にならず。仕方ないので資料を読む。日本の小歴史シリーズの「荘園」。いくつか発見があったが、どんな発見だったのかは、現時点でもう忘れている。酷い記憶力だ。このままでは、やがて、いつ食事したのかさえ忘れてしまうのではなかろうか。今年貰った年賀状のうちにご当人ではなく、奥様が代筆されているものがあった。ご当人は体調不良につき、今後、手紙を読むことも返事をすることも出来ない、とのこと。ふと「アルツハイマー」という言葉が頭を過ぎる。
「アルツハイマー」で思い出すのは、オカルト界の大先達にして、怪奇実話というジャンルの第一人者であったα先生である。会社員時代に原稿をお願いしようとお電話した。当時、先生はオカルト雑誌に健筆を振るわれていたので是非短文を、と思ったのである。そうしたら、電話口でいきなり、「何の用ですか」と、ピリピリした調子できた。「あの…先生の原稿を…お願いいたしたく…」ぼくは恐る恐る切り出した。すかさず、「雑誌に連載を持っているので原稿は書きません」と答えて、電話を切られた。(やれやれ)と思いながら受話器を置いたものであった。のちにその連載している雑誌の編集長に、このことを話したら、驚くべき話が帰ってきた。「先月頂いたα先生の原稿ね。頂いて読んでみて腰が抜けたね。なぜかって?
その前々月に貰った原稿と全く同じものだったんだ」「使いまわしってことですか」「違う。手書きで、とても綺麗な原稿なんだ。ただし、書いてある文章が、前々月の原稿と一字一句変わらなかったんだ。しかも先生は、そのことに全く気づいてらっしゃらない」「………」「仲間うちで、近頃、α先生の言動が時々おかしくなる、と噂されていたけどね。…どうやらボケが始まっているらしいねえ」
α先生が亡くなったのは、これから半年後であった。
自分でも時々、文章を読み直し、「大丈夫か、俺は」と思うことがある。ただし、これは最近はずっと少ない。以前、酒びたりだった時に、酷い状態だった。脳は昔よりも活発に動いているらしい。
そんな訳で、午後4時ころから、少し筆が動き出した。
一休の活劇シーン。馬が来る。鞍置きだ。(鞍が載ったままで駆けている馬を裸馬に対してこう呼んだそうだ)みんなは馬に飛び乗ろうとする。…だが、このタイミングの良さは、単に「幸運」と呼んでいいものなのか。ソーケイ坊の意味ありげな表情。こいつは本当に出来そこないの式神なのだろうか。
以上九枚。どうも「切れ」が悪い。明日書き直そう。
とにかく三百枚は突破した。やっとターニング・ポイントである。目標は550〜600枚。「一休虚月行」と同じくらいの分量で。
「真田三妖伝」二巻のアイデアが少しずつ湧いてくる。
それとは別に「魔術戦士」の伝奇時代劇版を思いついた。
あるいは逆宇宙の伝奇時代劇版か。
志門聖司v.s.白凰坊。
「三妖伝」の霧隠才蔵を主人公に別の話が書きたい。
しかし、読者は支持してくれるだろうか。
伝奇でホラーでオカルトな時代小説のアイデアが次から次へと湧いてくる。
しかし、朝松ファンは、やはり現代物でなければ駄目だろうか。
明日は今日書いた分を書き直す予定。農耕を通り越して苦行に近くなってきたようだ。まあ、頑張ろう。
0:12 03/01/12
今日も農耕的に仕事をした。
午前9時少し過ぎに起床。妻はPTAの集まりがあるということで早くから中学に行ってしまった。子どもたちが起きるまで、朝食、コーヒー、PC。のち、みんな、モソモソと起きてきた。土曜はだらけていけない。
昼食は妻と長女と二女と四人でパン。長男は友達の家へ。少しずつ家にいる時間が短くなっているようである。男の子は、そうしたものだ。
2時40分頃、散歩に出かけることにした。今日は1月11日、退院してから丸7年目(発病は8年前)なので、なんとなくめでたい。長崎神社に向かう。ところで、神社に詣でる時に、二つ、プロのコツがあるのを知っているだろうか。プロとは神官のことである。神官の世界では、神社に詣でるのは3時までとされているのだ。3時を過ぎると、神様は、その日の願い事の受け付けを締め切ってしまうのだそうである。「そんな銀行じゃあるまいし」と、ぼくも初めてこれを聞いた時は笑ってしまった。これを教えてくれたのが、心霊学者だったから余計マユツバであった。ところが、その後、何種類かの神サマ業界の専門書を読んだら、本当に「仕事等でやむを得ない場合を除き3時前にお参りすべし」と書いてあるではないか。なるほど。そういうこともあるのかもしれないと信じるようになった次第。もう一つのコツは、お参りが済んだら、丁寧に手を洗い、ウガイをすることである。これは自分の前にお参りした人にケガレを無意識に引き取っていることがあるからだそうな。なんとなく「カルマ」とか「伝染」とかいう言葉がちらつくのだが、これもきっと深い意味があるのだろうと、従うことにしている。
そんな訳で3時前にお参りできた。
のち、古本屋へ。中世史関係書がたくさんあった。とりあえず、一番欲しかった「障害者の中世」河野勝行(文理閣)を買う。「正長一揆と一休」の章があったからである。だが、この中に、大和の国で盲人の一揆があったという記述を見つけ、深く感銘する。
新刊本屋では「伊勢神宮」を買った。が、これは朝日新聞社のムックではないか。欲しいのは学研のムックだったのに。悔しい。
そんなこんなで、帰宅後、仕事をはじめた。297枚まで進む。300枚まで本当にあと少しである。一揆の描写。古社に隠れる一休たち。牛の暴走。暴徒の大暴れ。松明を持った馬借が迫る。ソーケイ坊の秘密。本当に古社はここにあるのか。伊勢まではあと一息である。300枚でターニングポイントか。
明日は日曜だが、年末・年始に風邪で仕事が出来なかったので、仕事を続行させる予定。早く、予定枚数350まで行って、ビバークしたい。とにかく農耕的に頑張ろう。
0:09 03/01/11
今日も農耕的に仕事をした。
午前中はコーヒーと雑談。午前11時に床屋へ行く。行き着けの床屋はおかみさん一人で切り盛りしている。子どもは二人。ようやく手が離れてホッとしたのだろうか。ちょっと体調が悪くなってきたと言う。子どもに関しては我が家と約三年〜五年のタイムラグがある。ただし、大病はこっちのほうが先輩である。いずれにせよ、ウチもあと五年もしたら子どもから手が離れる。そうなったら、思い切り、やりたいことをしよう。大長編小説とか、大実験作を書いたり、旅行したり、映画や演劇や音楽会に行こう。
そういえば、発作が起こらなくなってから、早くも一年一ヶ月になった。漢方の勝利であろうか。来週の外来で主治医に報告するのが楽しみである。
原稿は八枚進んだ。
午後四時、光文社のW辺氏に会う。283枚まで渡す。いよいよ伊賀を抜けて伊勢へ。一揆の暴動・国境での伊勢と伊賀との衝突・幕府の内紛・隠口(かくりく)や初瀬(はせ)の地名に隠された「眠れる神々」の秘密…と書きたいことは山とある。伝奇色の濃厚な作品になりそうである。書いてて楽しい。自分が半病人であることを忘れてしまうほどだ。
そういえば、去年の暮れに、友成名人に電話をかけ、「わたしのことをガイキチ呼ばわりする奴がいる」とこぼしたら、「それは褒め言葉じゃないか。本物の証拠だろう。最近のモノカキなんて偽者だから、まあ、学歴を自慢することしかできねえでやんの。薄くて、お上品で、そのくせ陰湿で。ガイキチの振りもできない〔いい子ちゃん〕ばかりだぜ」と慰められた。ううむ。さすがは夢野久作を生んだ博多の作家。天下に恥じぬガイキチである。なんだか気持ちがずっと軽くなった…ような気がする。が、これは気のせいかもしれない。
本物の芸術家でも、本物のガイキチでもなくていいから、本物の農耕的作家になろう。と、今年も誓うのだった。
0:24 03/01/08
今日も農耕的に仕事をした。長女と長男は寝坊してやがる。まったく正月気分が消えるのは何時の事か。考えてみると北海道の冬休みは二十五日もあった。親はさぞかし子どもがうざかっただろう。
午前中は興福寺のこと・荘園・宿駅などの調べ物など。午後は昼食後、少し休んで昼寝。全く夢を見なかった。疲れたのかもしれない。目が覚めれば五時少し前であった。ちょっと喉がおかしい。風邪がぶり返したか。
長女に頼んでコーヒーを淹れてもらう。栗羊羹を食べた。
仕事は12枚進んだ。約260枚まで。
300枚まであと少しである。頑張ろう。
ソーケイ坊の様子が少しずつ変化してくる。彼は式神ではないのかもしれない、と鴨分明は、漠然と不安を覚える。一休の眼前で、雷を受ける僧兵。木賊色の閃光。爆発する僧兵。「ジユウ」「ジユウ」の唸り声。大和の山々の地鳴り。虚丸の訴えを聞き一休は、カガリを救出に向かう。
今回の作品はアクション性よりも伝奇性が強い。それゆえ、「世界」の描写のほうに力が入っているのだ。三輪山あたりの描写をやりかけて、「魔術戦士1・蛇神召喚」を思い出す。あれから、もう、14年も経っているのか。感慨がほんのちょっとだけ頭をよぎったが、すぐに消える。
今年はどんな年になるだろうか。
0:13 03/01/07
今日も農耕的に仕事をした。
午前9時近くに起床。今朝はやけに眠い。耳が聞こえなくなる夢を見た。
朝食。コーヒー。妻と世間話。
子どもたちは未だ冬休みなので、良く眠っている。好い気なものである。
こちらは今日から本格的に仕事だというのに。
そういえば、昨日、長男がパソコンを覗いていて、突然怒り始めた。
「何事だ」と聞けば、「俺の悪口が掲示板に書かれている」と言う。勿論、長男の友人のサイトの話である。「あいつがこんなことを書くなんて」と本気で傷ついていた。すると、パソコンおたくの長女が、「そんなの、誰かが成りすましているかもしれないじゃん」と言い始めた。二女も「ウラも取らないで友達を疑ったりしたら駄目だよ」と言う。しばらく考えた長男、「よしっ」とサイトを運営している友人に電話をかけた。暫し、話し合う。やがて、にっこり笑って「やっぱり誰かがあいつに成りすましていた。ウラも取らずに、あいつを疑った俺が悪かった」と素直に反省していた。
サイトの掲示板に匿名の悪口、誰かに成りすまして友人たちの仲を裂く、ウラも取らずに噂を信じて喧嘩する。…どれもオトナのPC世界でも良く聞く話である。こういうのも、そろそろ、オトナの世界から追放すべきではないだろうか。こんなの、中坊たちの世界で十分である。
仕事は、思い切って書き直したら、サクサク進んだ。二十一枚進んで、現在は250枚。予定では去年の12月31日の段階で300枚、現在は350枚は行ってる筈であった。約100枚の遅れ。やはり年末に風邪をひき、七日間、何も出来なかったのが痛かった。約束の日までに、少しでも350枚に近づけよう。
大和国で僧兵に捕まった一休は虚丸と共に引き立てられる。一方、二人と別れたカガリは、鴨分明の式神(?)ソーケイ坊に襲われる。大和国では一揆と、国境に攻め寄せる伊勢の軍勢。地鳴り。怪しい気配。「ジユウ」「ジユウ」の声は何を表すのか。
明日、続きを書くのが、楽しみである。
0:12 03/01/04
今日も農耕的に仕事をした。
朝、ベランダから外を見たら、雪が降っていた。そうか。雪というのは関東では西からやってくるのか。などと感心したが、えらく寒い。背中と腰にホカロンを貼り付け、本日は過ごすことにした。
それにしても今年の正月はテレビを見ない。本も読まない。ただ、ひたすら寝ては食べ、食べては眠っている。まるでケモノか、中国のダウナー系貴族になったようである。
これではいけない。と、思い立って、午後、散歩に出かけた。が、レンタルビデオ屋にはめぼしいモノはなし。ブック・オフも獲物は皆無である。仕方ないのでセブンイレブンでシュークリームとアンマンを買って、帰宅後、みんなでコーヒーを飲みながら食べた。やっぱり、食い気のほうに行く。
ホラーが書きたい。
最近、ぼくは伝奇時代モノばかりで、ちっともホラーを書かないじゃないか、という批判がある。しかし、これは間違いだ。ぼくは伝奇や時代劇に溶かし込んで、実はホラーを書いているのである。ホラーは現代を舞台にした物とは限らないのである。
しかし、今、書きたいのは、過去ではなく現代を舞台にしたホラーである。一読、読者の髪が真っ白になるほど怖いホラー。暴力的で、背徳的で、超自然や魔術の恐怖が描かれていて、その癖、人間の犯す行為の恐怖にも及んだホラー。そんな作品が書きたい。「アメリカン・サイコ」の生ぬるさに腹が立ったせいだろうか。それともお下劣な「鬼畜」系の雑誌に怒りを覚えたからだろうか。友成さんとは全く違ったアプローチで、ホラーでテラーでスーパーナチュラルでアンキャニーでウィアードな世界を描きたい。
伝奇が書きたい。
もっともっと荒唐無稽で奇想天外な物語が書きたい。ホフマンが国枝史郎の世界に迷い込んだような。マイケル・ムアコックが滝沢馬琴を狙ったような。シェイクスピアが山田風太郎に化けたような。そんな伝奇が書きたい。影のしろしめす鉄の城。金閣寺に囚われの美姫。河原を埋め尽くした黒死病患者の死体。裏切りと陰謀と淫楽の大巨館。神代の昔から地底を蠢く小鬼の群れ。空中高くで戦われる剣戟。離されると泣き声を発する双子の髑髏。大仏さえ真っ二つに斬ってしまう大太刀。百鬼夜行の室町。ゴシックな安土桃山。バロックな江戸初期。……
イメージは頭の中で渦巻いているのだが。中々そこに到達出来ず、そのため苛苛と仕事部屋を歩き回る。
少しずつ、理想の世界に近づいていくしかないのだろうな。
農耕的に精進しよう。
0:24 03/01/03
新年あけましておめでとうございます。今年も宜しくお付き合いください。
今日は農耕的に休みをとった。
年末からの風邪による胃痛はなんとか治まった。だが、御節料理は、つい食べ過ぎてしまう。まして、ひばりが丘の義母の許に行ったりした日には、ついついついつい食べ過ぎてしまうのだった。
昼前に出発。道は上りが渋滞していて下りが空いていた。西東京市(チンケな市名だ)に近づくにつれて、雪が家や車の屋根に積もっているのが見えてきた。ひばりが丘団地に着いたら地面が白く凍結していた。やはり昨夜は寒かったのだ。と、少し驚いた。
夕方まで子どもたちとお婆ちゃんの家でくつろいで、出発。今度は、上りが空いていて、下りが渋滞していた。いずれにせよ、どっちも空いていて助かった。
帰宅後、少し休んで、午後6時前に初詣のリターンマッチに出かけた。お供は長男。神社に向かう人は疎ら。すでに露店は店じまいしていた。参道とその脇の暗さが良い。神社本来の闇を感じる。お参りした後、長男とゲーセンに。まったく久しぶりである。新型も旧型も20円。こんなので商売になるのだろうか。とりあえず、八分の入り。昔のような雰囲気の悪さはなかった。
長男がゲームをするのをぼんやりと見学。ロボット対戦モノと、爆撃戦モノが、ハタで見ていて面白かった。しばらく遊んでから帰宅。
(今年は新年番組をほとんど見ないな)と思いつつ、部屋で休んだ。
明日あたりから、そろそろ農耕的に仕事を始めよう。
今年は基本的に、光文社の「一休」シリーズと、祥伝社の「三妖伝」シリーズ、これらを交互に出していく予定である。その一方で、室町伝奇ホラーの短編をゆっくり出していきたい。朝松健流伝奇ホラーの確立。これが目標だが、自分で設定した「高み」にはほど遠い。
日暮れて道遠し。
とにかく、今年も、農耕的に頑張ろう。
どうぞ、宜しく。